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ルークとの再会1

 あれから二週間が経っていた。

 その間もミナに関する記憶をたくさん集めることができ、そのすべての記憶を見ることができていた。アレクはたくさんのミナに関する記憶を知ることができたことを多少の罪悪感はあったが、それでも喜んでいた。

 何故なら、記憶を集めるたびに自分の知らないミナの一面を知ることができ、それがとても嬉しかったのだ。


「さあ、次の記憶は何だろうな」


 累石に導かれるように進んでいくと、前の方に街が見えて来て、そこでどんな記憶を知ることができるのか楽しみにしていた。

 すると、上の方から何が落ちて来た。

 砂埃が舞う。急なことにアレクは驚き、何が落ちて来たのか警戒していると、砂埃の中から聞き覚えがある声がした。アレクはその声を聞くと何故か嫌になってしまった。


「やあ、心の友よ。また会うことができたね」

「どっか行け」


 まさかこんなところでルークと再開するとは思っていなかった。いつまで逃げているんだよ、さっさと仕事に戻れ。

 そんなことを思っていると、やはりルークはうざ絡みをしてくる。どうしてこいつは宮廷魔術師という凄い職業になれたのだろうか?さっさとクビになれ。


「あれ?どうしてだい?何で心の友と再開したのに嫌な顔をしているんだ?」

「理由は簡単だよ。お前とは心の友と思っていないからだ」

「疲れているのかな、それなら心の友として元気づけてあげないと」

「人の話を全く聞かねぇ」


(いつまで経ってもコイツは変わらないな……少しくらいは成長したって良いのに)


 そんなことを思っていると、ルークがあることに気づいて質問してくる。やっぱしコイツは気づいて来るよな。


「あれ?ミナはどうしたんだい?僕の予想だとずっと一緒にいると思っていたんだが……」

「…………」


 正直に話そうか?それとも、どうにかしてはぐらかそうか。でも、リファの時にコイツの石のおかげで助かったから、ここは正直に話すべきだよな。


「それは……」


 ルークにミナに起こったこと、そして今自分がしていることを正直に話す。自分とミナが一緒にいた時のことを知っている相手に言うのは少し辛くはあったが、それでも伝えなければならないと思い、頑張って耐えながら言葉を紡いでいく。

 そして、ルークは最後まで聞くと似合わない神妙な顔をしてアレクのことを気遣って来る。何それ、気持ち悪い。ルークはもっと身勝手であるべきだ。


「それにしてもアラディアか、本当にいたんだね」

「アラディアのことを知っているのか?」


 ルークの口からアラディアという言葉が出たことに驚いて、どのように伝わっているのか気になって尋ねてみる。アイツは過去にどんなことをしたのだろうか?


「まあ、知ってはいるけど、一般的な魔術師に伝わっている程度しか知らないよ。それでもいい?」

「ああ」


 ルークらしく無い。いつもなら笑みを絶やさず話し続けているにも関わらず、アラディアのことに関しては真剣な顔をして話していた。


「アラディアはね、三百年前から生きていて、その伝説の中には国を落としたって話もあるんだよ」

「え?まあ、アイツならあり得るか……」

「やっぱしそんな人なんだね……」


 本当にアラディアがやばい人だったんだな。まさかあのルークが嫌な顔をするなんて、少しも想像できなかったよ。

 それを指摘したらルークは「これは例外だから」と言っていて、更にアラディアのヤバさが理解できる。まあ、「僕のことを何だと思っているの⁉︎」とも言ってはいたが、それはしっかり無視しておこう。わざわざ面倒なことに首を突っ込むのは良くない。


「まあ、アラディアのことは置いて、僕も君に協力するよ、前に助けてもらったお返しがまだできていないしね」

「いいのか?その間に同僚に見つかる可能性があるんだぞ」

「その時はその時に考えれば良いよ。それに半年以上逃げているんだからそう簡単に見つからないよ」

「クビになってしまえ」

「え?」

「ありがとうと言っただけだよ」

「僕と君の仲だから感謝なんていらないよ」


 このバカは仕事から半年間も逃げていたのか……もうクビになっているんだろうな。コイツのような人には絶対になりたくない。

 アレクはルークに対して呆れていた。コイツには魔法の技術以外にいいところなんて一つたりとも無いんじゃないか。多分、ここにミナがいても同意してくれると思う。ミナも大概このバカのことを嫌っていたし。


「それじゃあ、街に向かって出発しようか!」

「何でそんなに元気なんだよ。まあ、元気が無いより有った方がいいけどさ」


 そして、二人は街に向かって歩き始めた。この後にルークは飛ぶことができるのにわざわざ歩いていることに気がつくと、何で飛ばないんだと怒ったという一幕があったりした。


 *


「これから何処に向かうんだい?」


 街の中に入った後、ルークが尋ねてきた。ルークには累石のことを伝えてあり、その機能などは理解している。

 宮廷魔術師にとっても、この累石は理解できない品物のようで、ルークがこの累石を見た時は目を輝かして何度も何度も観察していた。コイツも一応は魔術師なんだな……。


「えっと、こっちの大きな建物がある方向かな」

「へぇ、案外その建物の中だったりね」


 そんなことを話ながら歩いていると、二人は先ほど見た大きな建物の前にたどり着いた。累石はこの建物の中に二人を導いており、今度会う人は偉い立場にいる人な気がした。

 しかし、ここでもまた累石が起動しなかった。つまり,リファたちの時と同じようにミナに関する記憶を忘れてしまっている可能性が高いということだ。

 もし、そうだとすると少しまずい。そのような人たちに自分のような素性が分からない人が会うことは難しく、もし会えたとしても話を聞いてもらえるか怪しかったからだ。


「すみません、中に入ることはできますか?」


 もしかしたら中に入ることができるかもしれないと思い、門番の人に話しかけた。だけど、返ってきた返事は予想通りいい返事では無かった。


「身分証明書は?」

「……ありませけど」

「それなら入れるわけにはいかないよ」

「ですよね……」


 やはり建物の中に入ることができず、門前払いをされてしまう。それも仕方がない、もし自分たちが門番だったら同じことをするだろう。

 アレクは諦めてどうにかして忍び込むために建物を観察していた。あいにく、このようなことはアレクの得意分野であり、簡単にできそうに思えたが、ルークが「そんなことをしなくていいよ」と言って門番の方に近づいて行った。


「ねぇ、僕はこんな職業についているんだけど、それでも駄目?」

「は?そんなもん駄目に決まって……って、宮廷魔術師⁉︎」

「それでも駄目なのかい?」

「す、すみません。どうぞ通ってください」

「ありがとう」


(コイツが役に立つことなんてあるんだ……)


 仕事がいやで逃げ出すような奴のおかげで正面から建物に入ることができて、アレクは少し驚いていた。ルークは無駄に権力を持っているため、こういう時には役に立つ。まあ、普段は迷惑を掛けられ続けることになるため、こんな時くらいは役に立ってこらわないと割に合わないわけなのだが。

 そんなことを考えながら建物の中を累石に導かれながら歩いていると、とうとう一番高い階にあるどう見ても偉い人が使っていそうな部屋の前に辿り着いた。本当にミナはこの中にいる人と知り合いだったのだろうか? 


「これって入っていいのか?」

「僕がいるから入っていいと思うよ、文句を言われたとしても何とかなるし」


 このルークは本物なのか?そう思っても仕方がないほど今のルークは頼りになる。

 そして、アレクは扉を開けて部屋の中に入って行く。ミナを救うために。

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