第九話
シャワー室を一個取ると、今、すっごく恥ずかし
い格好をしている。
流石に風呂場ではやる勇気はなくて、シャワー室
の個室に二人で入っている。
そもそも二人で入っている時点でおかしいのだが、
致し方ない。
自分ではできないのだから。
泡を立てると剃るところにつけていく。
剃刀の刃が当たるとヒヤッとして自然と震える。
「大丈夫だから、揺らさないで」
「うん……分かってる」
分かってると言いながらも、少し緊張する。
普通誰にも見せない場所を曝け出す様で、いくら
幼馴染みと言えど、恥ずかしいものは恥ずかしい。
ショリショリと剃り終わると、ホッとしてシャワ
ーを手に取ろうとして止められた。
「まだだよ、ほら、後ろ向いて」
「後ろ?」
「そう、こっちもでしょ?」
すぅーっと尻の谷間に人の手が触れて行くとぶる
るっと身震いした。
「そこは…ちょっと…」
「こんな場所から毛が出てるとカッコ悪いだろ?」
カッコ悪いとはっきり言われると、そうなのかと
思ってしまう。
「わかった……頼む」
「うん。いいよ。」
なぜだろう。
陸は全く嫌がらない。
普通なら、友人とはいえ、こんな場所の毛を剃る
手伝いなんて嫌なはずなのに……。
「はい、終わり」
「……ありがとう」
「どういたしまして。でも……これからは入浴の
時に気をつけろよ?」
「ん?なんで?」
「だって……そんなにつるつるだと……」
「つるつるだと?」
「まだ毛が生えて来てないみたいだろ?」
一瞬考えてから、カァっとなった。
「もう、しっかり大人だ!陸のばか!」
個室で暴れると陸をポンポンと叩く。
がっしりした体は叩いても全くびくともしない。
すると、人の声が聞こえて来た。
誰か入って来たらしい。
「あっ……」
一瞬迷う。
出て行くタイミングを逃してしまったからだ。
シャワー室で二人でいるなど怪しすぎる。
見られたくない!
と思うと、つい陸にしがみつい付いてしまった。
「壱夜……?」
ただ黙って陸は壱夜を抱き抱えた。
「えっ…」
「黙ってて」
「う……うん」
シャワー室なだけあってか、出て行くのも早い。
壱夜達はシャワーを流し続けながら出て行くのを
待った。
外からは足元しか見えないので、抱き抱えられた
壱夜は気づかれていない。
出て行ったのを確認すると、自分達もそそくさと
出ていく。
ヒヤヒヤした瞬間だった。
部屋に戻るといつもの様に体を鍛えながら、休憩
に机に向かったのだった。
プール開きの当日。
待ちに待った水着披露する日だったが、あいにく
の雨で、楽しみにしていたプールは中止になった。
その日は水着チェックだけ行われた。
クラスの女子の大半が却下をくらい、半数の男子が
ブーメランを選んでいた。
これには壱夜も驚いた。
ハッと陸を見ると、ニヤニヤしている。
男子高校生にもなれば、選ぶものはにかよって来る
のだった。