第八話
夏といえば水泳!
水泳といえば水着!
夏がやって来た。
これはプール開きの時期がきたのだ。
壱夜とて、男子高校生なのだ。
水着女子に興味がないわけではない。
存分にある。
毎日、学校と寮の往復。
寮中では勉強と体を鍛えて数ヶ月。
腹筋が割れるまではいかないまでもそれなりには
筋肉もついたと思う。
もちろん、自己評価でだが。
一緒に鍛えている陸はと言うと、お腹はバッキバ
キに割れており、ザ腹筋と思えるほどだった。
別に羨ましくなどない。
本当に……羨ましくなんか………ない。
「もうすぐ水泳の授業だな〜、楽しみ〜」
「そういえば壱夜は水着持って来た?」
「ん?水着って……水着って中学の海パンしか持
ってないや!」
陸に言われて、重大な事実に気づけた。
高校では水着が決まっていない。
なので、何を選んでもいいのだ。
まぁ、それでも際どいものは先生から却下される
が、男子の水着は結構緩い。
「週末買いに行こうぜ」
「そうだな、俺が選んでやるよ」
「ありがとな!言われなかったら、恥かくところ
だったぜ」
週末にはショッピングモールへと出かけた。
水着コーナーはやっぱり女性の水着が多い。
男性用は肩身が狭い気がする。
「これなんかどうだ!」
壱夜が選んだのは、真っ赤なハイレグのもの。
結構際どいぐらいまで見えてしまう。
「却下。」
「なんでだよー。もう俺だって大人っぽくて
似合うだろ?」
「壱夜、学校で着るんだぞ?それに……これ
だとムダ毛の処理をしないと見えるぞ?」
「ムダ毛の処理って?」
ハテナ顔を浮かべる壱夜に陸は溜息と共に
ズボンの下を指して言った。
「ここに生えてる毛を剃るって事。もちろん
前だけじゃなく後ろもな。自分で剃れるか?
それとも俺に毎日剃って欲しいとでも?」
「………//////」
一瞬何を言われたかと思ったが、すぐに理解し
たのか、手に持った水着を棚に戻した。
「わかったならいい。壱夜ならこっちだな」
「それで……いい」
色が濃くて透けないもの。
大きくダブダブで体のラインが見えないもの、
そして、太ももまでをカバーする長さ。
陸が選んだものは、一番汎用性のあるものだ
った。
少し残念そうにしている壱夜に陸は帰りにパ
フェでも食べようと誘った。
「俺だって似合うと思うんだけどな〜」
「仕方ないよ。ああいうタイプのものをはく
ならしっかり毛の処理は必死だからね」
「そうだよな〜……」
「そんなに、気になるなら下着にしたら?」
「下着?」
「そう、まぁ似通ったものはあるし、それで慣
ればそのうちはいてても違和感ないんじゃな
いかな?」
「……」
そう言うと、迷っていたが、そうすると言って
来た。
結局際どい下着だけ買って、寮に帰って来たの
だった。
すると、ベッドの上で買って来た下着を壱夜は
まじまじと眺めていた。
「どうした?」
「う〜ん……すごく面積少なくね?」
「さっき、壱夜が選んだ水着と同じくらいだろ?
そんなのをみんなの前で晒すつもりだったんだ
ぞ?」
「うん……買わなくてよかったかも……?」
「だろ?」
すると、スッと立ち上がって剃刀を片手に出て行
こうとする。
「待った!壱夜何を考えてる?」
「いや……ちょっと……」
「俺がやろうか?どうせ自分じゃ見えないだろ」
「それはそうだけど………なんかさ……」
「そんなの選ぶ時点で分かってただろ?」
言われればその通りなのだが、陸に言われて余計
に恥ずかしく感じたのだった。