第六話
授業が始まると、サクサクと進んでいく。
分からない人は置いてきぼりで、先生は先へと進
める。
それもそうだろう。
基礎は中学で習うところだからだ。
高校ではその応用や、新たな公式などが出てくる。
予習、復習をしていなければ確実にちんぷんかん
ぷんだった。
毎日の基礎トレーニングに加えて勉強の成果がし
っかり出て来ていたのが分かる。
そんな折、高校に入って二ヶ月が経とうとしてい
た。
一年生とあってか、上級生から部活の勧誘が頻発
していた。
勿論、部活紹介として色々な部活の紹介が体育館
で発表されていた。
少し興味があった『漫画研究会』は寮で暮らす、
生徒には門限時間に厳しいので無理だった。
運動部だと、毎日部活の度に申請は必要なかった。
それは顧問の先生が出してくれるからだという。
それに比べて、文化部は自分で申請を毎回出さなけ
ればならず、面倒な上に実績報告もいるのだという。
「陸は部活どうするの?」
「壱夜は?」
「俺は無理かな。だって、そんな時間ないもん」
「そうだったな。なら俺も入らない」
「別に陸はいいのに?」
どうしてか、陸はいつも壱夜に聞いてから行動を決
める節があった。
よっぽど心配なのだろうか?
「俺は一人でも平気だぞ?」
「いや、一人だと……サボるだろ?」
サァッと顔を赤くすると、壱夜はムキになった。
「俺だってやれば出来るんだぞ!」
「わかった、わかった。なら、今日は見てるから
一人でやってみて」
「おぉーっし!みてろよぉ〜」
そう言って張り切っていた時期もありました。
食事と風呂が終わると、やる気だった気持ちがふ
にゃふにゃに溶かされ、今では無気力になってい
たのだった。
「布団に入りたい……」
「勉強は?それと体鍛えるんでしょ?」
「うん、明日から?」
「勉強はダメ!今日やるって言っただろ?」
「うん……そうなんだけど……」
今では身長も抜かれ、体付きもがっしりしてしま
った陸を見上げると、なんだか負けた気分になる。
「勉強は?やらないと悪戯するよ?」
「いいよ、悪戯くらい……俺、もう寝る〜」
そう言って我儘を言う壱夜のベッドにいきなり入
ってくると陸は服の中に手を入れて来た。
ヒヤッとした冷たい手がいきなり腰に触れてくる
と、ビクッと震える。
こしょこしょと触れるだけなのに、こそばゆくて
身を捩った。
「あはっはっ……やめっ………冷たっ……やめっ…」
「勉強する気になった?」
「やるっ…やるから………やめてっ……」
荒い息を吐くと、渋々起き上がった。
陸は自分でやっておいて真っ赤になりながらも壱夜
に勉強させれた事に充実感を覚えていた。