第二話
入学式を終えて、運び込まれる荷物を受け取ると
部屋に運び入れていく。
服と下着、日常生活に使うドライヤーや、歯ブラ
シなどの必需品を使いやすい場所へと置くと、背
伸びをした。
風呂は共同風呂とシャワーだけを浴びれる個室が
あった。
共同浴場は、広々としていてまるで銭湯の様だ。
変わって、シャワーは時間制限なく使えるので、
部活などで遅くなる生徒向けだった。
「浴場は時間が決まってるんだな…」
「あっ…ほんとだ」
「食堂の時間も忘れない様にしないとな。壱夜は
朝苦手だろ?」
「まぁ、それはさぁ〜……陸がいるし?頼む、毎
朝起こしてくれ!」
壱夜は陸を振り向くと下から見上げるようにして
小首を捻る。
「ぅっ………し、仕方ないな……」
陸の顔が一瞬真っ赤になったが、すぐに気を取り
直すと壱夜の頭をわしゃわしゃと撫でたのだった。
最近ではよくやる仕草だった。
「まずは飯行こうぜ」
「早くないか?荷物もまだ閉まってないだろ?」
「いいのいいの。まずは腹ごしらえからだろう?」
壱夜が言うと陸の手を取る歩き出した。
部屋は6畳くらいの部屋に両脇にベッドがあり、
少し小ぶりのクローゼットがついている。
ベッドの下にはプラスチックの衣装箱を入れれば
そこも収納場所になるのだった。
場所によっては2段ベッドもあったのだが、壱夜
も陸も選ばなかった。
部屋はシェアするには少し狭いが、寝起きするく
らいなら問題はない。
「勉強は自習室があるって聞いたけど、どうする
?図書館でするか?」
「今から?」
「当たり前だろう。壱夜はギリギリだっただろ?
油断してるとすぐについていけなくなるぞ?」
「うっ……」
陸の言う事は、あながち間違ってはいない。
確かに、陸には低いレベルの高校だが、壱夜に
取ってはちょっと頑張って届くかと言うレベル
だった。
毎日の様に陸が部屋で勉強を見てくれたおかげ
で、塾にも通わず合格したわけなのだ。
食堂へ行くと、もうすでに食べている生徒がい
た。
確か、今日同じクラスの……。
「こんにちわ、えーっと……」
「仙堂だ、仙堂伊織。さっきクラスでも挨拶し
たと思うけど?」
どこか冷めた様な言い方だったが、多分悪気は
ないと思う。
「ごめん、ごめん。俺は天海壱夜、こっちは…」
「瀬尾だ。覚えているんだろ?」
「もう、陸!」
「あぁ、知っている。」
壱夜はあえて仙堂のそばに座った。
「ねぇ。何食べってるの?美味しい?」
「……まぁまぁだな」
一人が好きなのか、それとも話しかけられるの
が嫌なのか、少し不機嫌そうだ。
「壱夜、向こうで食えばいいだろ?」
「いーや!ここで食べる!それに一人より皆で
食べた方が食事は美味しいんだよ?」
ニッと笑って見せる壱夜は誰にでも態度を変え
たりしない。
そんな奴なのだ。
それを一番身近で感じてるのが陸自身だった。