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揺れる想いと過去の記憶

王宮の広間で、魔王討伐の作戦会議が進む中、ユウキの心はどこか落ち着かなかった。目の前で語られる壮大な使命にも関わらず、彼の頭には一つの記憶が何度もよぎっていた。アカリ――彼女との過去が、心の中で鮮明に蘇っていた。


---


子供の頃からずっと、ユウキとアカリは家が近所で、毎日のように一緒に過ごしていた。幼少期はいつも競い合いながら、剣術や魔法の訓練に励んでいた。二人は自然と仲良くなり、いつも一緒だった。


「ユウキ、また遅れてるよ!」


いつものようにアカリが先に走り、ユウキはその後を追いかける。彼女は快活で、誰よりも早く動き、いつも前へ進んでいた。ユウキはそんな彼女に密かな憧れを抱きつつ、彼女と並んでいたいとずっと思っていた。


そして、14歳の時。彼らはある遠征訓練に参加した。王都近郊の森での実践訓練――そこは普段から中型のモンスターが出没する地域で、命がけの戦闘が要求されることもあった。


訓練も終盤に差し掛かったころ、突如として一行を襲ったのは、予想外の大型モンスターだった。巨大な獣のような姿をしたそれは、鋭い爪と牙で次々と参加者たちを圧倒していった。


「アカリ、後ろだ!」


ユウキは咄嗟にアカリをかばい、剣を構えた。しかし、その巨大なモンスターを前に、二人はどうにもならない状況に追い込まれていた。


「くそ……ここで終わりか……」


ユウキは剣を振り上げながらも、内心では焦っていた。だがその時、モンスターが突進してきた瞬間、ユウキの剣が偶然にもモンスターの急所に命中した。


「ガァアッ!」


モンスターは一瞬のうちに倒れ、静寂が訪れた。


「……や、やったのか……?」


息を切らしながら、ユウキは剣を握ったまま呆然と立ち尽くしていた。横を見ると、アカリが地面に座り込んで、安堵の笑みを浮かべている。


「もうダメかと思った……ここで死んだら、お嫁さんになる前にあの世行きだよ……」


アカリが冗談混じりにそう言うと、ユウキは自然と口を開いていた。


「なら……俺が、ずっと守ってやるよ。お前が嫁になるその日まで、絶対に。」


ユウキの言葉は、自分でも驚くほど真剣だった。アカリはその言葉に目を丸くし、しばらくユウキの顔を見つめていたが、次の瞬間、柔らかな微笑みを浮かべた。


「……それって、告白?」


ユウキは一瞬、息を飲んだが、ここで引くわけにはいかなかった。


「……ああ。お前が良ければ、俺はずっと……お前を守りたい。」


その場の空気が一気に静かになり、二人の間には緊張が走った。しかし、アカリは優しく笑って、言葉を返した。


「……うん。私も、ユウキのことが好きだよ。」


---


それから二人は、恋人同士となった。幼馴染から少し距離が縮まり、手を繋ぐことも増えた。しかし、それが続いたのはわずか半年のことだった。


ある日の夕方、ユウキは彼女と話し合うことを決意した。


「なあ、アカリ……俺たち、なんか無理してないか?」


アカリは一瞬驚いた顔を見せたが、やがて小さなため息をついて、素直に答えた。


「……うん、そうかもしれない。やっぱり私たち、幼馴染の方が自然かもね。」


その日を境に、二人は元の幼馴染の関係に戻った。しかし、ユウキの心には微かな傷が残っていた。それでも彼は、彼女が幸せならそれで良いと自分に言い聞かせた。


---


だが、それからというもの、アカリは他の男たちと次々に付き合い、そしてすぐに別れるようになった。彼女はどこか落ち着かない様子で、恋愛に対して軽い態度を取るようになっていた。


「カイルと付き合ってたけど、すぐ別れちゃったんだよね。」


「リックも、まあ……合わなかったかな。」


ユウキはその度に心を痛めたが、彼女には何も言えなかった。ただ、彼女が幸せになるのなら、それで良いと自分に言い聞かせるしかなかった。


---


今、広間に立つユウキは、再び彼女と同じ戦いの場に立っている。そして、彼女との関係をどうしたいのか、自分でも答えが出せないでいた。しかし、心の奥底には、もう一度彼女を守りたいという強い願いが燃えていた。


「……俺が、今度こそお前を守る。」


ユウキは剣を握りしめ、決意を新たにした。

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