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閑話休題 名付けのネームプレート

姉弟



///



 子供たちの名前が決まった後、アリスに頼み込んで二つのプレートを用意してもらい、シャトーバニラに滞在していたロイクにはターゲスの家にある魔術道具を作るための工具を取ってきてもらった。

 小さな紙にいくつか図案を書いて自分で試したりしたせいで紙にはフィーの血判や血痕が付着している。


「えっと……何してるか聞いてもいい?」


 病室に広げられている惨状に顔をしかめているアリスに、同席していたロイクが口を開いた。


「戸籍登録の魔術を参考にして、子供に名前を縛るための魔術道具を作成している」

「物心つく前にプレートが壊れなければ、絶対に自分の名前を忘れないお守りかな」


 名前というのは親が与える一番最初のギフトだとロイクが言っていた。しかしこれから子供たちは自分と顔を会わせることができないまま孤児として扱われる。

 プレートを与えることができなくともせめて子供たちの血液を付けてもらい自分が常に身に着ければいい。

 ここまで話せばアリスから一瞬表情が消えた気がしたが、「誰が子供から血を取るのさ」と呆れた顔を浮かべられた。


「少なくとも戸籍登録の際に血は必要だろう?」

「あー、うん。そうね……」


 ロイクの一言に負けたのか「余計な仕事を……」とぼやかれたが無視だ。

 ロイクとアリスは種族は違えど、大元は親戚同士なのではないだろうかと憶測するくらい雰囲気が似ている。白髪だし。色も白い。そういえば二人とも名前に「フォン」が付いているからプルメリア帝国出身の貴族家系なら共通の先祖もいるのではなかろうか。


 魔術陣を刻み込んだ後、対象となる名前を刻む予定だ。自分で行えばかなり時間がかかったが、ロイクがいてくれたので一日で完成すると思われる。


「そういえば、『シオン』と『アネモネ』って兄弟に一貫性ないよね。性別も種族も違うけどさ」


 アリスから名前について問われた時、子供たちの特徴は聞いた。それを踏まえて名付けたのだが良くなかっただろうか。


「ロイクは孤児院の子供を名前を付けるとき意味とか考えてる?」

「いいや……意味まで考えたらキリがないからウチではそこまで深く考えてない」


 フィーが孤児院にいた頃、捨てられた赤子を拾う度にロイクなどの大人達は、見た目の特徴や庭の花を見て名前を付けていた。

 ロイクは既に持っていた名前でもそれが長ければあだ名を勝手につける。『フィラデルフィア』を『フィア』、『ウォルファング』を『ウル』と呼んだり、リナリアを『リィ』と『リナ』と呼び分けていたり、三毛猫の『ネネ』も本当なら『ネリネ』という名前だったのがロイクがそう呼んだから定着してしまった例もある。


「シオンは、私の名前の由来の花が春紫苑(ハルジオン)だからって言うのもあるけど……私のいた村、竜族やその血が濃い人はライラックとか、メープルとか、エーデルワイスとか『記憶』に関連する花言葉が使われてたから」

「『記憶』?」

「そう。でもそうした理由は分からないよ。シオンは『追憶』『君を忘れない』。私が忘れないって意味でならいいかなって」


 長い時間隠れて竜族を囲っていた村だ。何か意味があるのかもしれないけれど、その由来は知らない。


「ならアネモネは?」

「それは――」


///



 ミスルトゥもといシオンがワタシを姉と認識してくれてから、ワタシはフィーの記憶の一つをシオンに見せることにしました。

 ワタシもその記憶を読むまではこのネームプレートが魔術道具だとは思いませんでしたが、意地でも本当の名前を覚えさせる気合を感じます。それと同時に捨てられずに済んでよかったとも思いました。


「アネモネ、もっとみせて」

「いやです!もうまりょくがありません」

「ケチ!」


 そういいながらむくれるけど、シオンはワタシにべったりくっついてきます。

 姉弟だとわかった途端シオンはワタシに甘えることが多くなりました。

 弟扱いが出来てとてもうれしいですが、シオンは先生と離れることに不満がまだ残っていて、しかも自分よりも長くフィーに抱っこしてくれたワタシが羨ましいのでしょう。


「アネモネ?」

「なんでもないです。ほんをよみませんか?」

「うん……」


 シオンは今までワタシが本を読み、その情報を無理やり流し込んでいたので本を手に取ることに慣れていませんから、自分の力で文字を追うことが出来ません。

 現在ワタシとシオンは魔力核が封じられています。ですが、ワタシはどうしてか魔力核が封じられていても血のつながりがある人に対して魔法を使うことができました。

 父は竜族の血が欲しくてフィーとの間にワタシたちを作りました。だからワタシ達の母であるフィーの血が流れているからだと思いましたが、タマシイ?の繋がりが強いからだと考えている人もいますし、本当のことは分かりません。


 シオンはワタシが魔法を使えるのをいいことに、よくフィーとの記憶をねだります。

 ワタシだってフィーに甘えたいです。ですがまた会えるのは何年も先のことです。

 現在ワタシたちを見てくれる大人たちは、ワタシたちの父親がモス=オーキッドであることを知っています。だから特にワタシが魔法を使うことに良い反応を示してくれません。


『あなたを信じて待つ』


 ワタシの名前、アネモネの花言葉がフィーの気持ちならワタシもフィーを信じて、何年でも待ちます。だから、フィー。その時は今度こそお母さまと呼ばせてください。


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