表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/18

ニンニクちゃんの下半身

 やな感じのおばさん2人組が出てきます。まさかこの連載に悪人が出てくるなんて思ってませんでした。

 やぁオラだよ、おはよう。今日もニンニクちゃんを見ていこうね。オラ昨日から寝てなくてめっちゃ眠たかったんだけど、目に爆竹入れたらギンギンになったよ。あと40日くらい起きていられそう。


 プルルルルル プルルルルル


 電話だ。ニンニクちゃんが取った。


「お電話ありがとうございます。しょうもないもの株式会社のニンニクでございます」


 始まるって感じするよね〜。実際この連載の始まりの合図になってるしね〜。


『ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯』


 ん? 何か様子がおかしいな。戦場か?


「お客様?」


『ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯』


 彼岸島か?


「あの⋯⋯お客様?」


『ニンニクちゃん⋯⋯声かわいいね⋯⋯』


 あ? オラのニンニクちゃんに何言ってんだ! ライバル登場か!?


「えっ! もしかして私のファンの方ですか!」


 ニンニクちゃん喜んじゃってるし⋯⋯


 クソ⋯⋯オラなんてニンニクちゃんと喋ったことないのに。喋れた上に喜んでもらえるなんて、すぐに成仏出来ちゃうじゃん。羨まし過ぎるよ。浦屋魔歯(うらやまし) 酢殺(すぎる)だよまったく。


『ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯』


 マジでなんなのこいつ。走ってんの? 興奮してんの? そうか、こいつニンニクちゃんの声聞いて興奮してんだ! ニンニクちゃん早く電話切った方がいいよ!


『ねぇ⋯⋯今何色のパンティ履いてるの⋯⋯?』


 あー終わりだわ。電話切られるわ。多分ニンニクちゃん激怒するよ。だから早く切れって言ったのに。


「何がファンだよ! 嘘つき! 死ね! あばよ!」


 ほら切った。パンティは1番しちゃいけない質問なんだよな。ニンニクちゃんはパンティが履けない体なんだ。だってニンニクちゃんは3年前の交通事故で下半身が⋯⋯


 プルルルルル プルルルルル


「チャーハンです! あ、失礼しました、しょうもないもの株式会社のニンニクでございます!」


 ニンニクちゃん、さっきのこと引きずってるなぁ。めっちゃ間違えてるじゃん。


『あ、間違いだったんですね。ビックリしました。チャーハンのことで電話をかけたのを超能力で読み取られたのかと思いました』


「いや、本当は超能力です」


 ニンニクちゃん、なんでそんなつまらないことを言うんだ。さっきのショックのせいか?


『この前おたくの冷凍チャーハンを買ったんですけど、今日食べようとして温めたら米粒がそれぞれ動いてるんでビックリしましたよ。アレなんですか?』


 なんだ、そんなことか。


「弊社のチャーハンは生き米を使用しておりますので、動くのは仕様です。ぜひ踊り食いをお楽しみください」


『冷凍したのに死んでないんですか?』


「仮死状態になっているだけなので、温めると元気になります。たまにピョンピョン跳ぶやつもいるので気をつけてくださいね。1匹でも逃げたらその家終わりだと思ってください」


『そうなんですか! ありがとうございます! バイバーイ!』


「失礼いたします」


 電話を切ると、ニンニクちゃんは両手で鼻をほじり始めた。そうか、もう昼ご飯の時間か。


「ニンニクちゃーん、ここの席いいかしら?」


「⋯⋯どうぞ」


 いつもニンニクちゃんに嫌がらせをしているおばさん2人組だ。正直ぶっ殺してやりたいが、この2人は結界の力が強すぎて攻撃のしようがない。


「昨日彼と激しいエッチをしたの、あ〜気持ちよかったぁ」


「あたしも、昨日六本木で捕まえたイケメンとしちゃったぁ。まぁまぁだったわねぇ」


 ニンニクちゃんの前でこんな話を⋯⋯許せない!


「で、ニンニクちゃんは彼氏いるの?」


「いるわけないじゃないですか。私、こんな体なんですから⋯⋯」


「あらそうだったわねぇ、ごめんなさぁい」


 ニンニクちゃんは下を向いてしまった。雫が数滴落ちるのが見えた。


 3年前、車道を全裸で全速力で走っていたニンニクちゃんは、反対側から全裸で全速力で走ってきた牡馬と正面衝突をしてしまった。

 その結果、ぶつかった衝撃で下半身が入れ替わってしまったのだ。なので彼女は今はケンタウロスとして生きている。


「私がめげちゃダメだ、牡馬さんはもっとつらいはずなんだから⋯⋯! 首と足しかないんだもん」


 ニンニクちゃんは自分にそう言い聞かせると、2人に笑顔を向けた。


「何この子、あんなこと言われたのに笑ってるわよ!」


「気持ち悪っ! あっち行きましょ、あっちに!」


 そう言って2人は去っていった。死ねよ。


「ニンニクー! ションベン行こうぜー!」


 ニンニクちゃんの1年先輩の爽やかな青年が声をかけた。おばさん達がいる時に来いよな。いなくなったのを見計らって来たんじゃないのか?


「そうですね、行きましょう」


 ニンニクちゃんは連れションに付き合うことにした。下半身は雄なので、トイレも男子用なのだ。


 しばらくしてニンニクちゃんが戻ってきた。


「ふぅ」


 そう言って椅子に腰を下ろすと、また両手で鼻をほじり始めた。そうだよね、昼ご飯食べてる余裕なかったもんね。だから今から食べるんだね。


「んー、おいしっ!」


 おいしい昼ご飯をモリモリ食べたニンニクちゃんは、その日は馬車馬の如く働いた。ケンタウロスだけにね。

 こういう時見ていることしか出来ないってつらいですよね。


 一応説明しておきますが、酢殺で「すぎる」と読むのは「殺」をKILLと読んでいるからです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お邪魔いたします。 その昔、私の勤め先でのお話。 電話がかかってきて先輩(女性です)が取りました。 そしてしばらく無言。私が、 「どうしたんですか?」 と聞くと、先輩はニヤニヤして、 「あ…
2022/10/26 11:36 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ