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しょうもないもの株式会社のニンニクちゃん  作者: 七宝
オラたち、付き合うことになりました!
18/18

魔女様

 プルルルルル プルルルルル


「はい、ニンニクです!」


 ニンニクちゃんは宇宙空間でも職務を怠らない。と思ったけど、これは仕事じゃなくて自分の体内の電話だな。


『お味噌汁作りたくて今具を1リットルのお湯で茹でてるんですけど、味付けってどうすればいいですか?』


 ニンニクちゃんの体内で味噌汁作ってるんだ。朝ごはんかな?


「鰹節1キロと醤油1リットル入れて1時間煮てください!」


『ありがとうございます! やってみます!』ガチャ


 ⋯⋯味噌は?


 ニンニクちゃんは宇宙空間でも平常運転だなぁ。


「ねぇピンピコくん、どうやったら地球に戻れると思う?」


 頼られてる!? オラ今、ニンニクちゃんに頼られてる!?!? 人生で初めてのことなんだけど! 泣きそうなんだけど! っていうかもう泣いてます!


「なんで目から汁出してるの?」


 汁いうなし!


「これは、涙って言うんだよ」


「知っとるわ、バカにすんなし!」


 〜〜し! っていう言い方なんなの? 小学生? 中学生? って思ったけどオラもさっき言ってたわ。心の中で。


「んで、どうやって帰る?」


 んー、普通に考えてオラにどうこう出来るような問題じゃないんだよね。オラはただの透明人間だから、透明になるしか能がないんよ。


「ほら、早く早く」


 めっちゃ急かすやん。ふざけてみるか?


「⋯⋯どこでもドアとか?」


「なるほど! さっすがピンピコくん!」


 え?


「どこでもドア〜!」


 持ってんだ。


「さ、行くよ!」


 ちょっと待てよ? どこでもドアって1回粉々になって、ドアの向こうで再構築されるとか言わない? 別人になってるとか。これって都市伝説? なんかミニドラの単行本のコラムに書いてあった気がするんだけど。


「はよ!」


 ニンニクちゃんに腕を引っ張られて、ドアの中に引きずり込まれた。


 気を失うとかもなんもなくて、普通にドアの向こうにあったラブホの前に来た。


 ラブホ? これって確か、ドアノブ握った人が思ったところに行ける道具だったよね。てことは、ニンニクちゃん⋯⋯?


「⋯⋯行こ?」


 ニンニクちゃんが頬を赤らめて言った。

 オラは天にも登る気持ちだった。けど、遊園地でめっちゃぼったくられたので地上くらいまで引き下ろされた。


 今更なんだけど、オラ透明人間なんだから入場料とかいらなくない? なんで9800円も払って遊園地行ったんだよ。


「うぅ⋯⋯ピンピコくん⋯⋯」


 ニンニクちゃんがなにやら悲しそうな声でオラを呼んでいる。ニンニクちゃんの方を見ると、入口に張り紙が貼ってあった。


『ケンタウロスの方はご利用いただけません』


 そうだった。


「ニンニクちゃん⋯⋯」


「うぅっ⋯⋯うぅ⋯⋯」


 どうしよう⋯⋯


「ヒィ〜ヒッヒ!」


 突然後ろから声が聞こえたので振り返ると、そこには派手な格好をした白髪の鼻がでかいババアが立っていた。


「⋯⋯あなたは?」


「ヒィ〜ヒッヒッヒッヒッヒ!」


 えっ、無視?


「なんですかあなた、私が悲しんでるのがそんなにおかしいんですか?」


 後ろからニンニクちゃんが言った。


「ヒィ〜ヒッヒ!」


 こういうロボットなのでは?


「お前さん、ケンタウロスだからラブホに入れない。だから泣いてるんだろ、違うかい?」


 喋れるんだ。


「そんなの誰が見ても分かるでしょ! 私のことを笑いたいのなら笑えばいいわ!」


 ニンニクちゃんがなぜか強気になった。


「ワシは魔女⋯⋯ヒッヒッヒ」


 魔女!? あのエロいやつ!?


「魔女が何しに来たっていうのよ」


「さっきワシは人魚姫という女子(おなご)に人間の足を与えた⋯⋯」


 !?


 ということは、ニンニクちゃんも人間に戻れるのか!?


「じゃあ私も!?」


「そういうことじゃ、この薬を飲みなさい」


 そう言って魔女はニンニクちゃんにドクロマークの描かれた瓶を渡した。大丈夫? これ。


「わーいありまとー(^q^)」


 あまりの嬉しさにバカになってヨダレを垂らしながら受け取るニンニクちゃん。


「いっただっきまーす!」


 ゴキュ⋯⋯ゴキュ⋯⋯ゴキュ⋯⋯


 すごい音立てながら飲んでるなぁ。


 全て飲み干すと、ニンニクちゃんの馬半身が強く光り出した。直視出来ないほどの白さだ。


「な、なにこれ⋯⋯! すごい! スーパーリラクゼーション!」


 どういうこと? 気持ちいいってこと?


 少しの間光っていたかと思うと、徐々にその光は弱まり、やがてニンニクちゃんの馬半身、いや、下半身は光を失った。


「こ、これが私⋯⋯!?」


 ニンニクちゃんが自分の下半身を見て感動している。

 オラはニンニクちゃんの下半身を見て驚愕した。


 すね毛の濃いおじさんみたいな足が4本に、それぞれの股間に立派なイチモツが1本ずつ。


 おかしくない? ねぇ、これおかしくない?


 オスっていうのは聞いてたけどさ、イチモツ2本はおかしくない? クレーム入れないと。


 そう思って後ろを向くと、すでに魔女はいなくなっていた。


「⋯⋯⋯⋯」


 ニンニクちゃんが震えている。さっきは喜んでたけど、やっぱり嫌だったんだろうか。


「⋯⋯マジかっけぇ」


 えっ?


「ニンニクちゃん?」


「カッコよすぎない? 私」


 どうしよう、めちゃくちゃカッコ悪いなんて言えないんですけど。ケンタウロスの頃はカッコよかったけどさ、今全部肌色で、すね毛とか腿毛とか腿の裏毛とかボーボーの足が4本生えてんだよ? カッコ悪い以外ありえないだろ。


「カッコいいね」


 もちろんオラは大人で紳士なので、ニンニクちゃんに合わせる。


「これでラブホ入れるねっ!」


 ニンニクちゃんの笑顔にやられてしまったが、本当に入れるのだろうか。これも一種のケンタウロスでは?


 オラとニンニクちゃんは、ついにラブホに足を踏み入れた。

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