結界をぶち破れ!!!!!!
「あなたを倒しに来ました」
ニンニクちゃんが邪我理蠱を見て言った。面と向かって言えるということは、よほど自信があるのだろう。
「あら、そう」
そう言って邪我理蠱は部屋に戻ってしまった。ドアの鍵も閉められてしまっただろうか。
「おい透明人間、このドアぶち破れ」
えっ!? 無理じゃね!? ていうかいきなり!? しかも名前で呼んでくれないの!? は仕方ないか。
「これドア開いたとしても次結界だよね? 無理じゃない?」
「あ?」
ニンニクちゃんは透明人間用殺虫剤をオラに見せた。
「今からやります」
ドアノブに手をかけると、簡単に開いた。
「行け」
目の前には薄い緑色の透明の壁が見える。結界だ。オラは邪悪なのでビリビリして最悪死んじゃうけど、やらないとどの道殺虫剤で殺されてしまう。ニンニクちゃん怖い。
オラは少し距離を取り、結界にタックルをした。
「オラァーッ!」
「ぐああああああああああ!」
「はいもう1回」
言われなくても⋯⋯
「オラァーッ!」
「いぎいいいいいいいいい!」
「はいもう1回」
肩に激痛が走るばかりで、結界はビクともしない。
「鬱陶しいわね。窓に何回も衝突するハエみたいな音立てないでくれる?」
「随分余裕そうですね、私たちがここにいる以上、あなたはここから出られないんですよ? 私たちは交代でコンビニにご飯を買いに行ったり寝たり出来る。でもあなたはそのうち餓死してしまう!」
邪我理蠱に対して強気に出るニンニクちゃん。
「フン、なら結界の範囲を広げるまでよ。コンビニまで広げればあなた達に会わずに買いに行けるわ」
「ぐぬぬぬぬ、聞いてねぇぞ」
ニンニクちゃんが怒っている。
「ニンニクさん、人殺しじゃないならニンニクさんも入れるんじゃないですか? 邪悪じゃなければ結界関係ないんですよね?」
「えっ! ⋯⋯お前そんなことまで話したのかっ!」
ニンニクちゃんがこちらを睨みながら小声で言った。ごめんよニンニクちゃん。
「え、人殺しじゃないんですよね⋯⋯? もしかして、本当に人殺しなんですか?」
サンバサンバブンバボンバちゃんが泣きそうになっている。
「泣かないでっ! 私は人殺しじゃないから!」
「この会社にいるんだから人殺しでしょ」
邪我理蠱がニンニクちゃんに言った。ニンニクちゃんは鬼の形相で「しーっ!」のジェスチャーをしている。聞いてくれるわけないだろ。敵なんだぞ。
「こいつは悪者で嘘つきだから、信じちゃダメだよ? サブちゃん」
「え⋯⋯そう、なんですか」
少し疑心暗鬼になっている様子のサブちゃん。どうすればいいんだ⋯⋯
「うん、だから安心して! 今からやるから!」
さっきのオラみたいになってる⋯⋯可哀想にニンニクちゃん。
ニンニクちゃんは結界の前に行き、人差し指の指先で触れた。
「きゃっ!」
ビリビリが見えたと同時に、ニンニクちゃんは手を引っ込めた。額に汗を浮かべながら結界の向こうの邪我理蠱を睨んでいる。
「ニンニクさん、今のって⋯⋯」
「静電気! 乾燥してるからさぁ! 嫌んなっちゃうよねホント!」
ニンニクちゃん、苦しいと思うよそれは。
しばらく中の邪我理蠱を睨んだ後、ニンニクちゃんは前足の蹄を結界にあてた。
「⋯⋯!?」
ニンニクちゃんが驚いたような顔をしている。結界から蹄を離さない! もしや!
「オラァ!」
パリン、と音を立てて結界は崩れ去った。どうやら蹄はビリビリしないようだった。
ていうかオラのタックルでビクともしなかったのに蹴り1発って、やっぱケンタウロスは馬力が違うなぁ。
「ほら、私は人殺しじゃないでしょ?」
「はい!」
サブちゃんが嬉しそうに返事をした。
「それズルじゃないの! 蹄で割るのはナシでしょ!」
邪我理蠱が狼狽えている。確かにオラもナシだと思う。そもそも心がキレイな人だったら最初から何もないみたいに通れるからね。サブちゃんに先にやってもらわなくて正解だったね、ニンニクちゃん。
「さぁ邪我理蠱さん、行きますよ⋯⋯!」
ニンニクちゃんが邪我理蠱に不敵な笑みを向けた。
「フン、小娘2人に負けるような私じゃないわよ!」
あれ、こいつオラのこと見えてない?
じゃあ奇襲し放題じゃん! やった!
ということで死闘開始!