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えっ!? オラが悪者なの!?

 プルルルルル プルルルルル





 プルルルルル プルルルルル





 プルルルルル プルルルルル


「お電話ありがとうございます。しょうもないもの株式会社、カスタマーセンターのニンニクでございます」


 前回のおさらいなんだけど、いつもニンニクちゃんをいじめる邪我理蠱(じゃがりこ) 穢堕魔理蠱(えだまりこ)っていうおばさんの所にニンニクちゃんとオラと新入社員のサンバサンバブンバボンバちゃんの3人で殴り込みに行こうってことになってカスタマーセンターを出たんだ。


 なのに急にニンニクちゃんが引き返すから何事(なにごと)かと思ったら電話かよ! 仕事人間過ぎるだろ! 仕事ケンタウロスすぎるだろ!


「どうする? サンバサンバブンバボンバちゃん」


 ニンニクちゃん抜きで行ってもいいけど。ニンニクちゃんはあいつにはなるべく会いたくないだろうし。


「えっ、どこから喋ってるんですか!? 最近透明人間に見られてるってニンニクさんが言ってましたけど、本当だったんですね!」


 最近って、3年くらい見てるけど⋯⋯これは言わないでおくか。


「そう、本当だったよ! んでどうする?」


「一旦戻りましょう。お互いの言い分を聞きながら議論を進めた方がいいでしょう」


「議論するの? 結界壊してぶっ殺して終わりじゃないの?」


「は?」


 なんだこいつ。なんにも知らんのかよ。態度も気に食わんし。オラはもう3年もここにいるんだぞ? 先輩だぞ?


「知らないのか? あの2人の結界の強さを。攻撃が通らないんだよ。だからみんないじめを見て見ぬふりしてるんだよ」


「結界ってなんですか? フィクションの話ですか?」


 そうだよな、よく考えたら結界なんて現実世界ではありえないもんな。でもいつも同じ部屋に相撲500段とかケンタウロスとか透明人間とかいるんだからもっとスっと受け入れてくれると思ってたわ。


「バリアみたいなもんだね。邪悪な心を持った人が結界に触れるとビリビリするんだ」


「え、ここの人たちみんな邪悪なんですか?」


「そりゃ全員人殺しだからね。応募資格に書いてあったでしょ?」


「いや、会社名にピンと来て面接受けただけなので、人殺しではないです。ていうかなんですかその応募資格。怖いんですけど。ここ刑務所なんすか」


 こんなんで大丈夫なのかな、この子。人殺してるくらいじゃないとこの仕事務まらないよね。


「この仕事は半端な精神力じゃ務まらないんだよ? ニンニクちゃんもジェットゴリラ翔子さん、みーんな毎晩夢枕に立つ被害者に打ち勝ってここにいるんだよ?」


「打ち勝ったって⋯⋯あいつらには良心の欠片もないのかよ」


 サンバサンバブンバボンバちゃんが怒っている。自分が間違ってるくせに。


 タッタッタッタッタッタッタッタッ


 タッタッタッタッタッタッタッタッ


 誰かの足音がする。めちゃめちゃ走ってる。


「ぬおおおおおおおおおお」


 ニンニクちゃん! 電話終わったんだね!


「ニンニクさん! あなた達全員人殺しってホントですか? 見損ないました! っていうか通報しますよ? っていうか何なんだよもう信じられねぇよ! うああああああああ!」


 サンバサンバブンバボンバちゃん、面白いな。


「落ち着いてサブちゃん! ね、落ち着いて? 邪我理蠱さんのとこ、着いてきてくれるんだよね?」


 ニンニクちゃんが宥めている。先輩ってのは大変だなぁ。


「これが落ち着いていられるか! 殴り込みもなしに決まってんだろーが! なんであたしが人殺しの味方せなあかんのや! 全員敵じゃああああああ!」


 うるさいなぁ。


「人殺しじゃないから、落ち着いて?」


 えっ? 人殺しだよね?


「え、でもこの人が、透明人間が⋯⋯」


「こんな不審者の話信じちゃダメだよサブちゃん」


 えっ、不審者⋯⋯? 確かに不審者だけど、君の彼氏だよ? 彼氏だよね? さっきの夢じゃないよね? ニンニクちゃんの小学生の頃の同級生の代わりに彼氏になったはずだよね? オラ。


「え、この透明人間が彼氏じゃないんですか?」


 そうそう、オラが彼氏だろ?


「違うよ。この人はただの不審者。忌むべき存在よ」


 なにその言い方! ひどくね!?


「ニンニクちゃん、ひどいよ!」


 オラは怒った!


「ひどいのはお前だボケ!」


 ボケ?


「え、オラなんかした?」


「なんかした? じゃねーよ偽物のくせに私を抱き締めやがって! ぶっ殺してやるからな!」


 ええええええええええ!


 なにそれ!


「話が違うよ!」


「違わないよ! 私の勘違いを利用しやがって、お前みたいなゲスは早く微生物に分解されろ!」


 火葬じゃないんだ⋯⋯埋められるんだ⋯⋯


 ていうか、気付いたの!? どのタイミングで!? どうやって!?


 ⋯⋯そうか、さっきの電話か! あの電話に秘密があるのか!


「さっきの電話だね! 君に誰が何を吹き込んだんだ!」


「本物のピンピコくんだよ! ていうかお前どこでピンピコくんの名前を知ったんだよ! 被る可能性0の名前じゃねーかよ! 顔も何でそんなに似てるんだよ気持ち悪いよおおおおおお」


 ニンニクちゃんが泣き出してしまった。そんなに似てるのか、オラとその子。


 でも、本物が現れちゃったなら仕方がないか。もともとバレるまでのつもりだったんだ。いや、本当はバレずにゴールインしたかったけどさ。


「ごめんニンニクちゃん。オラ、ニンニクちゃんが好きだったから勢いで告白OKしちゃったんだ」


「お前何歳なの」


「58歳」


「⋯⋯⋯⋯」


 無言で股間を蹴ってきた。今日のニンニクちゃん凶暴すぎない?


「怒らないんだ。いきなり蹴られたのに。そんなに私のことが好きなの?」


「そりゃもちろん!」


 好きすぎるよ!


「じゃあ私のために死んでくれる? 今から一緒に邪我理蠱さんの所に行きましょ?」


「元々そのつもりで走ってたんだけど」


 なんたってオラの彼女だからね。彼女のために死ねるなら本望だよ。


「なら話が早い! サブちゃん、行くよ!」


「アイアイサー!」


 人殺しの誤解が解けたようでサブちゃんは元気に返事をした。でも本当は人殺しなんだよなぁ。都合がいいからオラが悪者ってことで丸く収めたけど。いやオラが悪者なのは間違いないんだけどね。でも嘘はついてないんだよな。ピンピコくんのとこでは嘘ついたけど。


 着いた!


『穴』


 この部屋があいつの部屋だ! 隣の『海』にはあいつの相方の屈舌(くつした) 濡腐子(ぬれくさこ)がいるので板を打ち付けて出れなくしておこう。


「うるさいわねぇ、なにやってんの」


 3人で金槌でトントンやっていると、『穴』から邪我理蠱が顔を出した。


「⋯⋯あんた達、何しに来たの?」


「あなたを倒しに来ました」


 自信満々のニンニクちゃん。さっきまでのニンニクちゃんと全然違う。カッコよくなってる。もしかしてさっきの電話で元気も貰っちゃった? 妬いちゃうな。

 思ってたより早くバレたね。デート回見たかったのにね。でも大丈夫! 愛さえあればいつかデート出来るさ!

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