《第二章 一節》 居候
以前手違いで投稿していた話になります。
よろしくお願いします。
気づけば俺はベッドの上にいた。
とは言え、昨日のことは大体覚えている。真夜中に月光闇夜という不思議な女性に会い、いつの間にかこの屋敷に連れてこられては自らの生い立ちを言うことになったことは。
だが、その後のことがいまいち思い出せないのだ。
起き上がろうと試みたが全身の筋肉が悲鳴を上げ、行動を拒んでいた。それに眠気も随分酷い。話を終えた時カーテンから覗いた光が明るかったのは幻ではないのだろう。
ふかふかのベッドがあまりにも心地よくてまた寝てしまいそうになる。だが時間だけは確認しようと右腕を上げると――――――
「はっっっっ?!お昼の一時だって?!!!」
あまりの時刻に俺は飛び起きた。その瞬間俺の腰やら足やらが不気味な音を立てて痛みを主張してきたもんだからたまったものじゃない。俺はそれらに耐えながらも、現実を受け入れようとしていた。
「待てよ?俺のこの立場を踏まえると――――――屋敷の主の不興を買うのは最悪のパターンだか、らっっ!!」
俺はこれまで馬鹿なことばかりしてきたが、寝坊だけはしてこなかった。それが信頼を損なうことだというのはよくわかっていたからだ。その上、自分の中の「お約束」を破ってしまったことに、自分で自分に苛立ちを感じていた。
痛みを意識の外側に追い出して飛び起きると早速身の回りを整え始めた。軽く二十帖を超えるだろう部屋に備え付けられている洗面台でバシャバシャと顔を洗い、リュックサックの中に入っていたブラシである程度髪をセットすると部屋を飛び出した。
が、そこで俺は壁に留められている封筒の前で止まらざるを得なかった。
もしや寝坊してしまったことに対する怒りの文章が入っているのではないか?と震えながら開いた。
『起床したならばすぐ私の書斎に来なさい。場所はその地図に載せておくわ。
わかったわね?なんとしてでも来るのよ。』
俺はあぁやってしまった、と頭を抱えた。
読んでくださりありがとうございました。