潜入!勇者パーティー!
勇者は少女にしました。元気っ子です!
2人は草むらから、その少女を遠目に見ながら観察する。
『勇者?本当に? トルン!確認するが鑑定の誤作動とかないよな?』
『いやいや、今までそんな事はなかったし鑑定に間違いはないはずだ!
それに、どっちにしろこれは大事だぞ!誤作動でも、鑑定結果が正しくても
絶対報告案件だ!うちの会社だけの問題じゃない!』
2人はあれやこれやと、小声で話し合う。
ほんの少しだ。目を離したと思った瞬間、後ろから声がする。
?『ねぇ、ねぇ!何をしているの?』
『今、忙しいんだ!黙っててくれ?』
『そうだ、今はだな、、、、?』
デルとトルンは、冷や汗を流しながら後ろを見た。
そこには、あの少女が笑顔で立っていた。
?『あなた達、モンスターよね?こんな所で何してるの?あ!僕の名前は、ポム。
可愛いモンスターさん達、宜しくね!』
ニコニコと可愛らしい。
デルとトルンは顔を見合わせてお互いにうなずく。
(『『いつの間に!? やるしかない!!』』)
2人は体制を整えた。
『は!?何をしているかって?
ここで君みたいな駆け出し冒険者に痛い目を見せて冒険者を辞めさせるためにいるのさ!デルだ!宜しくな!』
『悪いな、ポムとやら俺達に見つかったのは運が悪かったな!こちらこそ!トルンだ!』
そう、2人は心優しいモンスターなのだ。今まで、出会った冒険者を脅すだけ、一度も冒険者に痛い目に合わせた事もなく部署では給与泥棒とまで言われている始末だった。
今のセリフだって、マニュアル通り。挨拶してしまったのはなんと言うか、性格だな。
そして、見つかったのはデルとトルンの方なんだけね。
『ふふ、友達できちゃった!! ところで、僕を痛い目に合わせるの?』
少女は困った顔をする。
『え、いや、、、これは仕事、ん?むぐうう、、』
トルンが慌てて、デルの口を塞ぎ、ヒソヒソと話す。
(『あほ!!仕事とか、言うなよ!俺達は凶悪なモンスターなんだ!戦わないと!』)
(『すまん、つい、、そうだな!散々、給与泥棒とか言われてここで見返さないとだな!』)
2人の覚悟は決まった!これは大事な仕事だ!やるしかない!
『そうだ!怖いだろう!今なら見逃してやるから村へ帰るんだ!』
『見たところ君は、1人だ。こちらは2人いる、さあどうするんだ?』
2人は、マニュアル通りに脅しをかける。
『そうだね、僕は冒険者だ。でも、友達を傷つける事はできない』
『僕は君達とは戦わない。だから一緒に冒険しようよ!』
満面の笑みで手を差し伸べてくる。
『僕たちはパーティーだ!』
その真っ直ぐな瞳はとても綺麗で美しく素直だった。
『そそそ、んな事できるわけないだろ!俺たちはモンスターだ!それに立場ってものがあるんだ!』
『よよよ、く言ったぞ!デル!俺達は君と戦って村まで追い返し冒険者を諦めさせないといけないんだ!』
2人は何故か、揺らいでいた。
ポムの素直な言葉に、彼女の笑顔に。
『え、でも冒険で出会ったモンスターと一緒に旅をする事もあるってお爺ちゃんが言ってたよ?
だから大丈夫だよ!握手!握手!』
少女は半ば無理やりデルとトルンの手を、それぞれ掴み握手する。
その力強い握手で、2人は上下に振り回されて宙を浮き意識を持ってかれそうになる。
(『『この少女、スゲェ、力してる、、、こころされる!』』)
2人はブンブンされながら同じ考えに至る。
ポムは満足したように握手し終わると笑顔で2人を開放した。
『ごめん、ごめん!つい嬉しくて沢山握手しちゃったよ!えへへ』
可愛いんだけど、すごいパワーだ。
開放された2人は、急いで小声で作戦会議をする。
(『おい!どうするんだ、トルン、、俺達じゃ絶対勝てないしこっちが痛い目に合うぞ!』)
(『うーん、、どうしたら、、』)
トルンは短い時間で色々な考えを巡らせる。
村に追い返すのは無理
痛い目作戦も無理
そもそも勇者という真偽も確かじゃないし、、、
トルンの中で膨大な考えが巡りそして、1つの案が浮かぶ。
(『デル、俺を信じて着いて来てくれるか?』)
(『何を改まって、俺達は親友だぞ!なんかいい案が浮かんだんだろ?
俺は着いていくさ!で、どんな案なんだ?』)
トルンは嬉しかった、デルはいつもそうだ、俺の事をいつも信用してくれる。
その言葉でトルンは覚悟が決まっていたし、デルも覚悟はできていた。
(『このポムって少女をスパイしよう!どっちにしろ俺達で勝てないのなら誰か強い人に任せるしかない。
それに情報は大事だ。ここで逃してしまえば追跡は難しくなるだろうし、勇者の真偽も探れない。
一方的にではあるが、どうやらポムは俺達を仲間にしたがっている、これはチャンスだ!
どう思う?』)
(『確かにな、トルンは天才だな!俺じゃ思いつかない作戦だ!それに情報をしっかり集めて報告できれば俺達ももしかしたら出世できるかもしれない!俺達を馬鹿にした奴ら見返す事だって!
よし!やろう!』)
2人はガッチリ握手をする。腹は決まった。
そんな姿をポムは嬉しそうにニコニコ見ている。
『ポム、でいいんだよな?』
『うん!ポムでいいよ!君はデルくんかな?そして、そっちがトルンくん?』
『あってるけど、呼び捨てでいいぜ』
『そうそう。これから俺達は仲間、遠慮はなしだ』
そういう2人を見ながらポムはぴょんぴょん跳ねて喜んだ。
『わーい!!少し強引だったかもって心配だったけど、よかった!!
改めて、宜しくね!僕はいつか勇者になりたいんだ!』
2人は、跳んで喜ぶポムを見ながら顔を引きつらせるのだった。
(『『いつかの勇者現る、、汗』』)
1話大体、2000〜2500文字で書きます。
1話は短いですが、普段の生活の中でちょっとの楽しみしてくれれば嬉しいです。
デルとトルンのスパイ活動開始です!