出会いは突然に
始まり始まり
この世界は理不尽だ。
あー、決して悲観的に世界を見てるわけじゃないんだ。
客観的にみてだ、そう、ちゃんと自分の事は理解してる。
生まれながれにして序盤の村周辺に出現する程度の強さしか与えられなかっただけ。
まあ、嫉妬、妬みなんだ。
大切な事だから2度言う、決して悲観的ではなく客観的に自身をだな、、
『おーい?おい!!!聞こえてるか?』
顔の前で手の葉?をヒラヒラさせて心配そうに声をかけてくる
『ん?あ、トルン。おはよう。』
『ああ、おはよう。どうしたんだ?ボーッとして』
『ボーッとはしていない!至高な思考をだな』
『ははあはっはっはあは!!!なんだそれ!笑
ダジャレを、朝イチで入れて来るとは、さすが親友だな!はは』
こいつは、親友で同じ部署の同僚でもある木型魔物の⦅トルン・トレント⦆
トルンは明るく、頭もよく、俺の事をいつも元気ずけてくれる自慢の親友だ。本当にいい奴だよお前は。
トルンは名前で、後ろに続くトレントはモンスターの種族名だ。
種族名の後に更に続く場合があるが上位種族かネームドだけ。
生まれながらに強い種族もいるし、出世すれば魔王から名前貰える感じらしい。
例に漏れず、俺と、トルンは上位種族でもないし、ネームドでもない一般的な魔物です、はい。
ネームドになれば、それはもうモテまくりで稼ぎもよく、待遇も申し分ないらしい
らしいというのは、身近にそんな知り合いもいないし酒場で聞いただけの噂に過ぎない。
ちなみに俺の名前は。⦅デル・ウルフ⦆
どうだ?強そうだろ?ウルフって付いてるくらいだからな!
牙がギラリとしてそうで。
ただな、それは名前から来る勝手なイメージな訳。
大体、こう思うよな?
ウルフ=強そう
ウルフ=素早そう
ウルフ=鋭い牙
ウルフ=鋭利な爪
ウルフ=かっこいい
ところがだ、序盤村周辺のウルフ見た目は
小さく、何故か2足歩行、、手足には可愛い肉球、、少しお腹もポコっとしてる。。
言いたくないが、可愛いすぎるんだよ!!
尻尾なんぞ、クルン♪って、、、絞った生クリームかよ!
トルンにしても木の魔物なのにデカくないし、見た目はバウムクーヘンに手と足付けましたって見た目。
うん、美味しそう。じゅる
木なのにフワフワしてる、、トレントの魂をどこへ売り払ったんだろうか、、
『そういえば聞いたか?今日の仕事内容』
『ああ、昨日社内メールで確認はしたさ。
ニュービーな冒険者を脅かして冒険を辛さを教える仕事だったな』
『最近にしては珍しいよな、冒険者目指す奴なんて』
勇者vs魔王
これが王道ファンタジーだと思うだろう?
それは正しいが、この世界では魔王が既に勝利を収めていて勇者は敗北し
行方不明というのが周知の事実があり、行方不明になってからかれこれ100年以上経過してる。
しかもだ、魔王のやつは出来た奴らしく、人間や、亜人達を迫害せずに上手く関係を築いている。
そんな中、冒険者を目指す奴はほぼ、いないし居ても趣味か、道楽か、変わった奴くらいだね。
ただ、人間世界では色々と政治的に?世論?みたいので建前は、魔王と戦ってますよー!って
アピールしないといけないらしく冒険者という職業が今だに残ってる。
そういう建前のために秘密裏に、うちの会社に魔王からお達しがあり新部署の設立と運営。
業務委託って奴だね。
魔界も魔界で、大っぴらに魔王が、人間と争うと世論がまた戦争だーってなるから、それが嫌らしい。
要するに、人間も人間で面倒だし、魔族も魔族で面倒な事があるってことだね。うん。
そんな訳で、うちの部署でその現場業務を任せられてるのが俺と、トルンだ。
もちろん、俺達だけって事ではない。
序盤の村周辺担当は沢山いるし、うちの部署はでかいんだよ。結構。
『そうだな。また人間世界でなにかあったのか?
ただの変り者か、、俺達には関係ないが仕事は仕事だしな。
いつもの感じでいこうか?』
『えー、またあれかよ。
慣れてるし、いいけど、、マンネリになるよな』
『そうはいうけど、俺達の仕事って冒険者の経験値稼ぎと教訓を与える事だから変わった事は求められてないんだぞ?脅かして、倒されて、復活して。
それに、、俺達弱いし、どうにもね』
トルンの言う事は正しい、それが会社だ。
嫌なら抜けて、フリーランスで頑張るしかない。
後ろ盾のないモンスターが生きていくにはこの世界は厳しいものだ。
会社に所属していれば、怪我したり死んでも保険が適応され、蘇生アイテムや回復アイテムを支給されるがフリーランスは全て自分で用意し魔王直轄の申告所に申告までしないといけない。
死んで復活できなければ【闇落ち】と言う状態になり、それまでに記憶と経験値を全て無くし
ただの魔物になるしかない。
理性もないし、本当にただの魔物なっちまうのさ。
最近では、闇落ちするモンスターも少なく会社に所属するのが一般的になっている。安心、安全だしな。
俺も、トルンも独り者なのだが理性はあるし、ささやかだが2人で行きつけの酒場に行って
晩酌をするのを楽しみにしてたりする。
これはこれで、幸せだ。
中には、結婚して部署移動する奴もいるが、それも自由だ。
ただ、そんな幸せも闇落ちしたら感じる事もできないし、そうなるのが恐怖でしかない。
そうならないためにも、会社で自分の役割をまっとうしなければならない。
『お、来たみたいだぜ。
メールに添付されてた写真の服装とは違うが顔は一致する、、、な。
背丈もよし、性別も女性で間違いはないだろう。
念のため、鑑定紙で確認してっと。。』
トルンは何もない所から、1枚の紙を取り出した。
異空間収納も会社勤めのモンスターに与えられるスキルである程度のアイテムを格納することができる。
紙を宙に投げるとフッと消えて
トルンの目の前に情報が浮かび上がる。
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性別:女性
年齢:13
レベル:1
職業:勇者
ギフト:【勇者の心得】
スキル:異空間収納:Lv1
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『え??なんだこの鑑定結果は』
『どうしたんだ?』
『おかしい、この鑑定結果、、
あり得ないぞ』
『トルンが慌てるなんて珍しいな』
『いいから!!デルも見てみろよ!』
そう、そこには行方不明になってるはずの【勇者】の2文字が浮かび上がっていた。
勇者出てきちゃったよ。。