表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/38

みせあい。

「それじゃ、食べよっか」

「ええ、そう、ですね……」


 お弁当を入れた巾着を外して、お弁当箱を開ける。自分の作ったお弁当を見られるって、今更、恥ずかしくなってきた。なんか、自分の中身を見られてるようで。

 小山田さんのお弁当は二段になっていて、しかも他にもちっちゃいプラスチックのケースも入っている。わたしだったらお腹いっぱいを通り越しそうな量。わたしのは、どう見えてるのかな。蓋を開けた途端に、おかずとご飯の混ざった、ちょっと酸っぱいようなにおい。目の前で、お弁当箱を覗いてくる顔。


「茜ちゃん、これ本当に自分で作ったの?」

「あ、はい、一応……」


 冷凍食品に頼ることもあるけど、今日のものは一応自分で仕込んだものだ。ふりかけを掛けたご飯に、鶏もものネギ塩炒めと、卵焼きと、プチトマト3個。炒め物は昨日のうちに漬けておいたのを焼くだけだし、卵焼きも朝ごはんの分を多めに作っておいただけで、そんなに手間もかけてないのに、まるで魔法でも見たかのように目を輝かせてる。


「すごいなー、わたしのなんて作ってもらってばっかだし、好き嫌いも多いから困らせてばっかだもん」

「そう、なんですか……、そちらは、どんなのなんですか?」

「こっちも見る?茜ちゃんのに比べたら、地味かもだけど」

「えっと、それじゃあ。……あれ?」


 それを聞いて、頭の中で思い浮かべたのは、ご飯以外は肉料理や揚げ物で茶色っぽいものばかりなもの。でも、実際に中身を見てみると、前から押されるのを警戒してたら、後ろから突き飛ばされたみたいな感じ。

 卵焼きが三切れと、魚の塩焼きが2切れに、ほうれん草のおひたし。ご飯も白いのじゃなくて雑穀米みたいだし、……高校一年生のお弁当っぽいのは、別のケースに入ってるさくらんぼくらいだ。


「んー、どうかした?」

「えーっと、……なんか、健康的、ですね……?」

「それ、よく言われるなー」


 おばあちゃんのご飯みたいって言いかけて、なんとか言葉を探した。頭を巡らせているうちに、さっき、はぐらかされた質問も、頭に浮かぶ。


「あの、そういえば……、どうして、こういうとこ、知ってるんですか?」

「あ、ごめん、言ってなかったね。……こんな広い学校初めてでさ、入ったとき学校探検みたいなのしたの」

「あぁ……、わたしも、入ったときは、そんなことしました……」

「じゃあ一緒だね、なんか嬉しいなぁ」


 小山田さんは、本当に好奇心でやったんだろうな、わたしのは、一人になれるような場所を探してただけなのに。目の前にいるだけなのに、まぶしく感じる。

 盛り上がる小山田さんに、元気を吸い取られたみたい。勝手に落ち込んでるだけなのに、落ち込ませたのを悟られたら、小山田さんまでしょげてしまいそうで。黒い髪のカーテンで、全部隠してくれないかな。淡い期待は、ひとまずは叶ったみたいだ。


「え、っと、そう、ですね……」

「うんうん、あ、もう食べなきゃだね」


 いただきます、という声が、二つ重なる。食べてる間は、ちょっとほっとする。話しをしなくても、不自然には思われないから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ