みせあい。
「それじゃ、食べよっか」
「ええ、そう、ですね……」
お弁当を入れた巾着を外して、お弁当箱を開ける。自分の作ったお弁当を見られるって、今更、恥ずかしくなってきた。なんか、自分の中身を見られてるようで。
小山田さんのお弁当は二段になっていて、しかも他にもちっちゃいプラスチックのケースも入っている。わたしだったらお腹いっぱいを通り越しそうな量。わたしのは、どう見えてるのかな。蓋を開けた途端に、おかずとご飯の混ざった、ちょっと酸っぱいようなにおい。目の前で、お弁当箱を覗いてくる顔。
「茜ちゃん、これ本当に自分で作ったの?」
「あ、はい、一応……」
冷凍食品に頼ることもあるけど、今日のものは一応自分で仕込んだものだ。ふりかけを掛けたご飯に、鶏もものネギ塩炒めと、卵焼きと、プチトマト3個。炒め物は昨日のうちに漬けておいたのを焼くだけだし、卵焼きも朝ごはんの分を多めに作っておいただけで、そんなに手間もかけてないのに、まるで魔法でも見たかのように目を輝かせてる。
「すごいなー、わたしのなんて作ってもらってばっかだし、好き嫌いも多いから困らせてばっかだもん」
「そう、なんですか……、そちらは、どんなのなんですか?」
「こっちも見る?茜ちゃんのに比べたら、地味かもだけど」
「えっと、それじゃあ。……あれ?」
それを聞いて、頭の中で思い浮かべたのは、ご飯以外は肉料理や揚げ物で茶色っぽいものばかりなもの。でも、実際に中身を見てみると、前から押されるのを警戒してたら、後ろから突き飛ばされたみたいな感じ。
卵焼きが三切れと、魚の塩焼きが2切れに、ほうれん草のおひたし。ご飯も白いのじゃなくて雑穀米みたいだし、……高校一年生のお弁当っぽいのは、別のケースに入ってるさくらんぼくらいだ。
「んー、どうかした?」
「えーっと、……なんか、健康的、ですね……?」
「それ、よく言われるなー」
おばあちゃんのご飯みたいって言いかけて、なんとか言葉を探した。頭を巡らせているうちに、さっき、はぐらかされた質問も、頭に浮かぶ。
「あの、そういえば……、どうして、こういうとこ、知ってるんですか?」
「あ、ごめん、言ってなかったね。……こんな広い学校初めてでさ、入ったとき学校探検みたいなのしたの」
「あぁ……、わたしも、入ったときは、そんなことしました……」
「じゃあ一緒だね、なんか嬉しいなぁ」
小山田さんは、本当に好奇心でやったんだろうな、わたしのは、一人になれるような場所を探してただけなのに。目の前にいるだけなのに、まぶしく感じる。
盛り上がる小山田さんに、元気を吸い取られたみたい。勝手に落ち込んでるだけなのに、落ち込ませたのを悟られたら、小山田さんまでしょげてしまいそうで。黒い髪のカーテンで、全部隠してくれないかな。淡い期待は、ひとまずは叶ったみたいだ。
「え、っと、そう、ですね……」
「うんうん、あ、もう食べなきゃだね」
いただきます、という声が、二つ重なる。食べてる間は、ちょっとほっとする。話しをしなくても、不自然には思われないから。