表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/38

やくそく。

 集中なんて、できるわけない。三時間目の中身は、聞いたそばから抜けていって。ノートもあんまり取れなかった。他に頼れるひとなんていないし、……小山田さんのメッセージも、まだ返せてないし。とりあえず、外に出よう。四時間目の準備を済ませてから、廊下で軽く深呼吸。


『自分で作ってるひとは、そんなに居ないと思いますから大丈夫ですよ』


 組み立てた文章を送るのにも、しばらく悩んで、送信をタップする。これで、よかったの、かな。2組の教室のほうをちらりと見て、ほんのり何かを期待してしまってるような。でも、何を。それを頭の中で探そうとして、

 返信は、すぐに来た。一回バイブが鳴ったと思ったら、すぐにもう1件も。。しかも、スタンプまで使って。着信の通知はスタンプを表示してくれないから、トークの欄まで見に行かなきゃ。


『わかってるけど、自分でできちゃう茜ちゃんがすっごい羨ましいよ~』


 その文の下には、じたばたとダダをこねているキャラクターのスタンプが動いてる。思わず、頬が緩む。よかった、本気で落ち込んでるわけじゃなかったんだ。それに、なんというか、かわいい。わたしには、苦手なタイプなのに。押しが強いし、わたしが一歩進むときにはもう、話を十歩くらい飛ばしてくるのに。嫌だとは、不思議と思えない。


『どんなの作ってるか気になっちゃうなーっ』


 ぐいっと、顔を近づけられたような気がした。倒れ込みそうになるのを、壁にもたれかかって抑える。それって、そのまんまの意味、だよね。告白でもされたみたいに、顔の内側から熱くなる。でも、なぜか、断ろうなんて思えなくて。


『そんなに凝ってるのでもないですよ。それでもいいなら……』


 誰かといるのは、苦手なはずなのに。それも、よりにもよって、わたしとは正反対の、明るくて積極的な人と。でも、なんとなく、やさしくて、あったかい。寂しいわけじゃないのに、心のどこかで、また会ってみたいって思ってて、その気持ちに、何故だか押し切られてしまう。時間を見ると、もうすぐ需要が始まってしまう。わたしにしては、けっこう返せたほう、なのかな。


『いいの⁉ありがとー✨゜+。:.゜ヽ(*´∀`)ノ゜.:。+゜✨』

『お昼、そっち行ってもいい?』


 相変わらず、すぐに来た新しいメッセージ。多分、今から断るなんてできないし、もう、こう打つしかない。


『わかりました。ありがとうございます。』


 約束、しちゃった。教室、戻らなきゃいけないのに、足がふわふわして、おぼつかない。メッセージのやりとりを眺めて、本当にわたしが送ったのかすらあやふやなくらい。

 今の、夢じゃない、よね。太ももをかるくつねると、軽い痛みが走る。胸の奥、まだ何かがぐるぐるしてる。高揚感なのか、今更の後悔なのかも、わからない。

 席に着いても、四時間目のチャイムが鳴っても、何故だか分からない旨の高鳴りは、収まる気がしない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ