かかえて。
……とりあえず、おいしくできたな。味見のつもりが、晩ご飯の分まで食べちゃいそうになる。初めて作ってみたけど、けっこううまくいったな。一人だし、どんぶりみたいにしちゃえばいいか。余計なことばっかり頭の中で浮かんで、頭がうまく回らないや。
「……いただきます」
慣れてるつもりの一人のご飯、なんか静かだな。賑やかしにテレビをつけても、なんかこうじゃない。ただ、耳を通り過ぎてくだけ。両親といるときとも、なんか違う。……ちらついちゃってる、恵理さんの影。おうちに呼んだこともないのに、この前のお昼のときみたいに一緒に食べるの妄想しちゃって。……なんか、ちょっといいなって思っちゃってる。首をぶんぶん振ってその景色を頭から振り落として、ご飯に頭を向ける。ぐるぐるしたまんまで頭がいっぱいになって、おいしかったはずなのに、そんなに味がしなくなってくる。……あのときは、いつもより美味しかったような。誰かといるなんて苦手なのに、思い出すと全部、嫌じゃない、の先の何かに行き当たる。
「……ごちそうさま」
何もなくなっちゃうと、まだ頭の奥で考えがぐるぐるしてる。洗い物して、お洗濯して、体が覚えてることの合間で、恵理さんの何の曇りもない笑顔がずっと頭から離れてくれなくて、……何か呼びかけてくるような気さえしてくる。
「……変だな、わたし」
話してても疲れちゃってばかりなはずなのに、離れると一緒にいたいなって思ってるの。とっても辛いものを食べるときみたいに、しんどい思いをした記憶が薄くなったらまた食べたくなっちゃうみたいな。……ううん、そういうのじゃないって、わかってるけどわかりたくないだけ。わたしが踏み出すのが怖くてたまらなくて、そんなことする意味なんてないって思いたがってる。
『私も、もっと茜ちゃんの声聞きたいな』
ざらざらした電話越しでも分かる、照れくさいような甘い声。恵理さんがそんな嘘つくような人じゃないの、わかってるのに。だから、わたしも、なんかドキドキしてて。……恋、なんて言わないといけない気持ちに気づいちゃってる。もう、頭の中でごまかせそうにないや。優しくされるとすぐときめいちゃって、勘違いして傷ついて。そんなのもうイヤになったはずなのに。恵理さんはそうじゃないかも、なんて期待をしちゃってる。頭の中でずっと浮かべてる。テストも近いから、考えるべきなことなんてもっといろいろあるのに、ずっと、あのかわいらしい姿が浮かんでしょうがなくなる。




