どきどき。
……疲れた、とっても。ソフトボールだったからチームで分かれてだったし、二人組が組めないとかそういうのはなかったけど、やっぱり、何もできなかったや。疲れるだけで、もやもやも晴れてくれない。一人でただ走るとかだったら、良くも悪くも、そんなのも忘れちゃうんだけどな。
次が授業だったら、たぶん寝ちゃってる。残ってるの、終わりのホームルームだけでよかった。相変わらず、恵理さんからの通知を知らせる着信ランプは、ぴこぴこと元気よく光ってる。でも、今は見る気力もないや。
帰り道、乗ってる自転車のペダルも、なんとなく重いや。体も、心も。一人でいるのは慣れてるけど、今は、なんとなく、誰かといたいような気分。その『誰か』でちらつくのは、あのきらきらした笑顔しかいない。わたしには、まぶしいすぎるのに、……そのあったかさが、どうしてかちょうどいい。
買い物して、家に帰って、……それまでの時間が、妙に長い。暑いせいもあるだろうけど、そんなのが理由じゃないのは、一番分かってる。
「ぅ……恵里さん、何書いてるんだろ……」
いいよ、とか、そんなのだとは思うけど、それでも、待たせてるし。そのことも、謝らないとかも。そんなのを根に持つような人じゃないのは分かってても、頭の中、まだ黒いものがぐるぐる回ってる。わたしのこと、あんなに、……わたしのこと、……なのに。それなのに、わたしから、離れていこうとしちゃう。そういうこと、したいわけじゃないのに。
頭を使わないでもできることだけ済ませて、ベッドに倒れこむ。考えること、今はこれだけにしないと、たぶん何もできなくなってる。喉の奥がつっかえて、何も食べてないのに吐きたいような感じ。
返信したのも入ってるはずだけど、もう十個以上通知が来てる。既読つけちゃうけど、トーク画面を除いてみないとわかんないや。
『本当に大丈夫?(>_<)』
『何もしてないのに心配になっちゃうよ。゜(゜∩´﹏`∩゜)゜。』
『お話したいんだけど、いい?.・゜゜(>ω<。人)』
あったかいのが、今はしんどい。今、優しい声聞いたら、きっと泣いちゃいそうで。でも、……しみる。どうしたって、あったかいの、心地いいの。
吐き出しちゃえば、楽になれるのかな。もし、それで幻滅されていなくなっても、……最初から、何もなかったときと一緒になるだけだ。
『今は空いてるので大丈夫です』
文字を打とうとする指が震える。ちょっと違うけど、いけないことしてるような気分。送信ボタンに触れようとして、その前に、もうトークの吹き出しの中に 入ってる。時間と一緒に、既読も横に入って。
知らない音。恵里さんからの着信音だ。どうすればいいんだっけ。トークアプリで電話とかするの、初めてだから、よくわかんないや。