ふつふつ。
強引なのに、優しい。あったかくて、眩しいくらい明るい。わたしには、吊り合わないくらいいい人なのに、どうして、わたしにかまってくれるんだろう。
「……ごめん、嫌な事、思い出させちゃったかな」
「……気にしないで、ください……、わたしが、そういうの、考えすぎ、だから……っ」
「ううん、……わたしも思い出したくないこといっぱいあるからさ、そういうの、ほじくり返されたらしんどいよなって思うだけだよ」
嫌じゃない。……恵理さんに浮かぶ気持ちで形になるのは、これくらいしか見つからない。苦手って思ってるのに、逃げたいって思えない。
全部、昔の事を引きずったままのわたしが悪いのに。手も、心も、あったかい。離れてずいぶん経つのに、まだ、ほわって、あったかい気がしちゃう。
もっと前に、恵里さんみたいな人に会えてたらな。微妙な空気にさせちゃったけど、その気持ちは、嘘じゃなくて。……そしたら、今だって、上手におはなしできてたのかな。そうだったら、よかったのに。じめじめした嫌な記憶も全部、晴らしてくれたかもしれないから。たぶん、手を引っ張ってくるのに離せないのも、そのせい。……まだ、わたしにはまぶしいけど、それでも、どこか明るいとこに連れ出してくれるような。
そういえば、お弁当のおかず作ってほしいなって言われたっけ、それも、試してみないとな。暑いから、さっぱりしたものが食べたいときにはちょうどいいし。
ぽわぽわしてる頭の中、どうにかなっちゃいそう。……理由なんて分かってるけど、それ以上、どうしようもないや。授業も半分聞き流しかけて、その度に慌ててノートを写して。
休み時間、引き出しの中からちかちかとしてる。恵理さん、またなんかメッセージくれたんだ。
『さっきは傷つけちゃったかな:;(∩´﹏`∩);:』
『ごめんねm(._.)m』
『辛かったら言ってほしいな(>人<;)』
次、体育で移動教室だから、返事、できないや。出会ってちょっとしか経ってないわたしのこと、どうしてそんなに気にかけてくれるんだろう。こっちは、どうしたってわからない。訊く気持ちも、持てそうにないや。
時間が経つごとに、もやもやしたのが、どんどん膨らんで。……痛いや。優しいはずの手で、勝手に傷ついてるのはわたしなのに。
『わたしの方こそごめんなさい』
それだけ打って、返信ボタンに軽く触れる。ただでさえ体育は憂鬱なのに、……胸の中、ずきずきして収まらない。