みつかる。
……やっぱり、変な感じ。同じ言葉なのに、わたしと恵理さんとじゃ、違う意味になってるみたいなくらい、全然、合わないのに。考えるだけで、どうするのがいいのか考えてドキドキしてるのに。それなのに、何でか分からないけど、一緒にいると、ほっとする。
こういうの、何て言うんだろう。普段だったら考え事はできるほうだし、寝不足ってわけでも何でもないのに、この気持ちは、全然わかんない。
何もかもすっ飛んでいくような、日常がドロドロになるまで濃くなってくような感じ、昨日から、全然変わんない。いつの間にか、四時間目も終わりかけ。……移動教室だったり、先生に当てられたりがなくてよかった。心ここに在らず、って言葉がよく合うような今なら、多分何もできない。ノート、写したっけ。そんなのもぼんやりとしか思い出せない。
お昼休み、喉が乾くのは、暑いからじゃない。どう考えたって、恵理さんのせい。
お弁当と水筒を持って教室を出ると、その人はもう、お日様より眩しいような笑顔で待っててくれてた。
「茜ちゃん、来てくれたんだー、行こ行こっ!」
「え、ま、待ってって……っ」
いきなり、手を繋がれる。そのまま引っ張られそうになって、零れた声に止まってくれる。止まってくれなかったら、引き離そうって思えるのに。……ずるい。優しくないのに、肝心なとこだけは、めちゃくちゃ優しい。
「ごめんって、……なんか、来てくれたの嬉しくてさ」
「そ、そう……?」
「うんうん、すっごく嬉しいよ、……茜ちゃんは嫌?」
「い、やじゃ、ない、けど……っ」
イヤなわけじゃない。それだけは、本当。それ以外のことは、全然わかんない。どれだけ考えても。見つけた入れ物の中に、恵理さんは入ってくれない。どこにも置けなくて、ずっと抱えて持ったまま。
「よかったぁ……、茜ちゃん、あんまり笑ってくれないからさ」
いつからだろう、上手く笑えなくなったの。意識して笑ってみようとしたら、ほっぺがつりそうになる。そんなの、見られてたのかな。
「わたし、笑ってたかなぁ……」
「初めて茜ちゃんのこと見たとき、すっごくいい笑顔だったよ、……めちゃくちゃ、かわいかったのに」
「そ、そうなの……?」
「うんっ、……茜ちゃん、せっかくかわいいんだから」
確か、お料理のこと考えてたとき、だよね。恵理さんに見つかったときは。……笑えてたんだな、わたし。でも、それ以上に、恥ずかしいよ。引き出しの中身、勝手に覗かれたみたいで。
少しだけ早足になるのに、恵理さんは、なんともなさそうについてくる。なんで、ついてくるの、……なんで、そんな人を、嫌いになれないの。