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つめたい。

 四人掛けのテーブルの、テレビが一番見える席にご飯を置く。あんまり面白くないけれど、無音のままなのは苦手だ。……今日はそれが、痛いほどに刺さる。寂しい、なんて。慣れてるし、「さみしくない」ことを求めるのは、最初からもう諦めてたのに。

 何で、今更、蘇ってくるわけ。昔に忘れたはずの感情が。誰かと、仲良くなりたいなんて。その理由に、心当たりは一つしかない。だけど、それがどうして、抑え込んでた感情を、起こしてしまったんだろう。


「いただきます」


 形だけ賑やかなリビングに、声はかきけされる。……多分、おいしいはずなのに、口の中を透明な膜で包まれたみたいに味がしない。お腹が空いてるはずなのに、食べたいって気が起きない。今はもう起こさなくなったはずなのに、……心だけ、全部あの時に戻されてるみたい。あの時の記憶も、全部消し飛んでくれたらいいのに。戻りかけた記憶でえずきかけて、慌てて飲み込む。代わりに、今日の昼休み、恵理さんと二人でご飯を食べた時。何でもない、いつものお弁当がいつもよりおいしくて、……思い出しただけで、目の奥が熱くなる。ずっと、寂しかったんだ。そのことを認めるには、まだ勇気が足りない。だって、あんなに嫌な思いしたのに。まだ、誰かと話をするのには緊張するし、メッセージのやりとりだって、みんなみたいにすらすらできないのに。……今更、誰かと触れ合いたいだなんて、信じられない。

 だけど、どうしようもなく、あったかかった。恵理さんと、一緒にいた時間は。でも、恵理さんだって、私以外に仲のいい人がいないってわけじゃない。ずっと私と一緒にいてくれるなんてことも、きっとない。わかってるのに。胸が痛くてしょうがない。私なんかに、今更光の指す場所が空いてるわけがない。

 ご飯も、食べる気がしないや。こんなの、ぐるぐる考えてたら。でも、……がんばって食べなきゃ。無理やり食べるご飯が、おいしいわけもないけど、……どうせ、今は何食べても味なんてしないや。

 

 「ごちそうさま……」


 ……何とか食べ終わったけど、お腹の中、重いや。もうちょっと、休ませて。食器をシンクに置いて、水につけて置いてから、また部屋に戻る。吐き気はしない。ただ、体が重いだけ。テレビも消して、また部屋のベッドに倒れ込む。

 恵理さんに出すレシピも見つけないとだし、宿題もまだ途中。でも、そんな気にはなれない。


『わかりました、レシピはもうちょっと待っててください』


 それだけ打ち込んで、また、落ちかけた夢の世界に身を委ねる。駄目だな、わたし。心の中、黒い雲に覆われてたけど、雨は降ってなかったのに。今は、土砂降りだ。これから晴れる予報なんて、一つも出てないのに。

  

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