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さみしさ。

 暗い部屋で、緑色の小さい光が点滅してる。もう、通知なんて見なくても、誰から来たのか分かる。今日だけなのに、もうずっと前から知り合いだったみたいな。

 それだけ取って、リビングまで戻る。通知は、全部で三件。


『うん、それは焼くのでお願いしよっかな』

『大葉はなくて大丈夫だけど、チーズは欲しいかも……( º﹃º` )』

『他はあんまり考えられないから、無くても大丈夫だよ(^_-)-☆』


 相変わらず、言葉だけでも、明るさが伝わってくる。羨ましいな、私にも、その元気の十分の一でもあったらよかったのに。……もう、とっくの昔に、私の心の中で、何かに縛り付けられたままなのに。

 多分、このまま返す時間もないやと、ポケットにしまう。しっかり手を洗って、お料理のほうに頭を切り替える。ソーセージのほうも、そろそろ茹でておかなきゃな。じゃがいもをレンジであっためたら、タオルとかで包んでしばらく置いておいたほうが中までしっかり熱が通るし、そのうちに少しぬるくなってくれるから触れるくらいになるまで冷やしたり待ったりするのに時間を使わなくてもいい。

 ソーセージも、冷凍庫から出しておく。一本がけっこう重いから、2本ずつでもどうにかなる。大き目の鍋にいれて、水を張って強火にかける。焼くのもいいけど、こういう冷凍のを使う時は、いつも茹でたままにできるのに甘えちゃう。入れるのはお湯が沸いてからで、ときどき竹串を使って中まで火が通ってるか確認する。本当は、前の日から冷蔵庫でじっくり解凍したほうがいいとかも聞いたけど、手間とか忘れたときのことを考えちゃうと、手が出しづらいとこがある。それなら、ちょっとおいしさが逃げちゃうんだとしても、おいしく食べてあげたほうがいい。恵理さんの言ってた言葉ほど、大仰なものじゃないけれど。

 レンジの鳴る音も聞こえて、じゃがいもを出してから、もうしばらく使わないまな板に置く。剥くまでには、茹で終わってたらいいな。吹きこぼれかけるのを見て慌てて火を弱めながら、都合のいいことばかり考えてる。初めてのメニューで、そんなにうまく行くわけがない。……恵理さんのも、早くメニュー見せてあげなきゃな。考えの流れ着いた行き先に、思わず首を横に振る。包丁を使うようなのじゃなくてよかったな。そうじゃなかったら、指を絆創膏で埋め尽くさないといけなくなりそう。そしたら、……考えるだけで身の毛がよだつ。もっと、ちゃんとしなきゃ。心を引き締めて、……その緊張は、なんとか出来上がるまで途切れないでいてくれた。

 結局、じゃがいもがちゃんと出来上がって、剥き終わった頃に、ようやくソーセージが中まであったまった。ちょっと、慌ててたから火加減を弱くしすぎたかな。思ったよりも出来上がりが遅くて、でもそれがうまい具合に偶然はまってくれた。

 冷蔵庫に置いたキャベツの浅漬けも、いい感じに出来てた。3つ分よそって、両親の分にはラップをかけておいて、自分のだけご飯を盛る。

 ちょうど、しまったポケットの中でスマホが震える。恵理さんのにはまだ返してないし、既読もつけてない。だから、きっと家族のグループの。相変わらず、『ごめん、連絡遅れた。今日は9時くらい』って、お母さんの連絡でよく見るフレーズが並ぶ。『こっちも無理そう。ご飯は家で食べれるから』こっちは、お父さんの。忙しいのは分かってるけど、最後に三人で食べたのって、いつだったっけ。

『わかってた。あっためて、ご飯よそうだけにしてあるから』って返して、せめてもの賑やかしにテレビをつける。一人なのは、別に慣れてるからいい。でも、今日だけは、胸の中でチクチクと棘が刺さる。 

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