どうして。
返信は、相変わらず早い。何で、そんなにわたしにこだわるのか、訊けるものなら訊いてみたいほどに。
『えー?(* _ω_)...あ、そういえば、お料理作ってるんだっけ』
『それはそこまで問題じゃないですけど、友達も多くないし、行っても面白くないだろうなって』
お父さんもお母さんも忙しいからっていうのも、わたしがお料理してる理由の一つではあるけれど、わたしがそういうことに参加するのは、喜んでくれるはずだ。でも、それ以上に、わたしの踏ん切りが付かない。今のところ、わたしがちゃんと話できるのは、まだ、……恵理さんだけだから。
『わたしが一緒にいるから、じゃ駄目?|∀・)+』
向けられた感情が、重くて熱い。ねえ、どうして。打とうとして、慌てて文字を消す。温もりが消えてしまうのは、怖い。見知らぬ感情に、外からも中からも乱されることよりも。さっきの断るための理由も、あっさりと打ち消されちゃったし。興味が、なかったわけじゃない。気持ちは、少しずつ、行きたいってほうに振れていく。
『まだ、ちょっと不安です。あんまり、人づきあいが得意じゃないので』
でも、胸の中の何かがひっかかる。まだ、……恵理さんがこっちを見つめてくる理由、わかんない。吸い寄せられそうになってるのを、引き留めようとするのは何。
『そっか……』
『もう少し、考えてもいいですか?』
『うん、いいよ?待ってるね!:*:.。.:*(´∀`*)*:.。.:*:』
これだったらもう、話しを切っても大丈夫、だよね。話しを切るタイミングも、全然つかめない。しばらく教室の中をさまよって、結局、そのまま帰ることにする。晩御飯は、今日はカリーヴルストみたいな感じにしようかな、今日のうちに恵理さんに頼まれたのも、考えておきないかも。これは、お店でじっくり考えようかな。せっかくだから、わたしも食べれるのにしたいし。昇降口を出て、自転車置き場に向かって、にぎやかな声が響く校庭に背を向ける。もしかしたら、その中に恵理さんがいるかも、なんて考えるのを、無理やり頭の外に追いやろうとして。……でも、相変わらず、離れてくれない、いくら自転車を飛ばしたって、捨てられた子猫みたいに追いかけてくる。よせばいいのに、見てしまうとこも、見掛けてしまったら、かまわずにはいられなくなるとこも。
いつも向かってるスーパーも、気が付いたときには通り過ぎてしまうとこだった。いないはずの背中の影が、気になってしょうがなかったせいで。一番好きなお料理のことで気を紛らわそうにも、その視線の端で見え隠れしてしまう。
誰にも見られてないはずなのに、頬の奥が、また、熱くなる。溶けそうなくらい熱くなった顔は、冷房の効いた中でも冷えてくれそうにない。