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クソ解説botの尻を拭う紙  作者: クソ解説botの中の人
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ギスギスオンライン

クソ解説


ギスギスオンライン

ネトゲのヤベー奴①

主人公のように見えるゴミが

ゴミを殺して回るが

そんじょそこらのゴミよりはるかにゴミなので

ヒロインのようなゴミに囲まれて

ゴミのように死ぬ。


ゴミとは。


朝っぱらから〇〇しちゃうヒロイン達にはびっくり。


http://ncode.syosetu.com/n0776dq/


 そのゲームはゲームとしてはあまりに破綻していた――魔法強すぎ、敵強すぎ、人間弱すぎ。主人公からして「種族人間とはゴミと同意義」と言ってはばからないゲームバランス。しかし、世界唯一の「VRMMO」はそれでも人々を魅了してやまなかった……。


 ゴミのように人が死ぬというか人っぽい見た目のゴミが死ぬオンラインゲーム物「ギスギスオンライン」は、SAOの登場以来一大ムーブメントとなった「VRMMO小説」に一石を投じる異色の作品であり、ある意味ではどんなゲーム物より「ゲーム」らしく、どんなSF物より「SF」らしい怪作だ。一言では語りつくせないその魅力を、今回は「ゲームにおける死」という観点から解説していこう。


 こうして「小説家になろう」でWEB小説に親しむ者にとって、もはや説明するまでもない一大ジャンルである「VRMMO小説」であるが、その多くが持つ属性として「デスゲーム」があげられるだろう。


 WEB小説の金字塔「SAO」を例にあげるまでもなく、「ゲームのカジュアルさと共に緊張感を演出する」「主人公の強い動機としての『生存欲求』を設定する」など、さまざまな目的から、ゲーム物ではデスペナルティとしての「プレイヤーの死」あるいは、それに準ずる重たいペナルティが設定されている。(もしくは、「どんなペナルティがあるかわからない」という恐怖をそれの代替としている)


 しかしこの作品に登場するVRMMO『GumS Gems Online』にはそれがない。


 いや、あるにはあるがプレイヤーたちは意図してそれを『無視する』のだ。


 そもそも、電子ゲームにおけるキャラクターの死、つまり「ゲームオーバー」は往々にしてゲームの終了を意味するものではなく、プレイヤーによって都合よく利用されてきた歴史がある。多少ゲームに親しみのある読者なら「死に戻り」や「デスベホマ」等の「キャラクターの死」を利用したテクニックに一つ二つ思い当たるだろう。


 多くの「VRMMO物」においてこういったテクニックが積極的に用いられるケースは決して多くはない。それも当然で、「ゲームキャラクターの死」とはつまり、「そのキャラクターの敗北」であり、積極的に敗北していく主人公などいない。そして主人公の用いないテクニックをあえて敵役に使わせるというプロットも多くはないからだ。


 さらにいうならば、上で述べたように「ゲームの死」と「プレイヤーの死」を直結させることで、物語内における「命の価値」を読者が共感しやすいレベルに引き上げることができるというのも大きい。――別に死んでも何ともない戦いに一生懸命な人間なんて、よっぽどの理由がない限り滑稽でしかないだろう――だから多くの「VRMMO物」の登場人物たちは「負けられないんだよぉ……!」と叫び「死にたくないッ……! 死なせたくないッ!」と覚悟を新たにしたりする。


「ギスギスオンライン」ではそういった「命の大事さ」や「生きる意志の尊さ」みたいなものを鼻紙より気軽にポイしてぱっぱか景気よく登場人物が死に散らかす。


 キャラクターが死ぬ要因は様々だ。モンスターが強くて死ぬ。魔法を撃つと死ぬ。イベントと称して発生する怪獣大決戦に巻き込まれて死ぬ。PKされて死ぬ。PKKされて死ぬ。仲間割れで死ぬ。特に理由はないがすれ違いざまに頭を割られて死ぬ。頬を染めた異性ににじり寄られて刺されて死ぬ。


 そしてセーブポイントで復活しデスペナとしてアル中じみた手の震えなんかに襲われながら再び舞い戻り又死ぬ。


 人がゴミのようだ。まだゴミのほうが再利用の余地があるだけましかもしれない。


 そもそもこのゲームにおける『種族:人間』というのはおよそゲーム内の力関係の最底辺も最底辺であり、一見かわいらしいマスコットキャラにさえ片手で肉団子のように丸められて死んでしまう。そんなに弱っちいのだから大人しくしていればいいものを「所詮ゲームだ」と我が物顔で振る舞って周りに迷惑をかけて又死ぬ。ろくなもんじゃない。


 そう、この作品において、主人公を含む「プレイヤー」達は、基本的に迷惑と騒動しか巻き起こさない。主人公からして「金のために宗教組織に食いついて腐敗させ甘い汁をしゃぶる」なんて事を平気でする。そして死ぬ。


 ほんとに人はゴミのようだ。まだゴミのほうが能動的に迷惑を掛けないだけましかもしれない。


 だから読者は、安心して主人公たちが作中で悪逆非道な謀略の限りを尽くしても、笑ってそれを見ていることができる。


「ああ。どうせ最後はひどい死に方をするんだろうな。天罰覿面」と。


「ギスギスオンライン」において「キャラクターの死」がもつ意味合いは多い。しかし、一読者として楽しむうえで最も効果を感じることができるのはこの一点だろう。


 主人公「コタタマ」は第一話の時点で周囲のプレイヤーから魔王とののしられる悪魔的ゴミであり、主人公じみたゴミに過ぎない身体能力ゆえに苦難にあっては死に散らかし、ゴミ味溢れる主人公として悪だくみするがゆえに正義の裁きにあい死に散らかし、ヒモともゴミともつかない男であるがゆえにヒロインに刺されて死に散らかす。巻き込まれて周囲の人間も死ぬ。酷い話だ。


 しかしてこれは、「死という言葉を使いながら死なない」というゲーム物の特権であり、ギャグ漫画的な「過激な描写も回を跨いだら無傷になる」というプロセスの論理的な描写法でもある。


 あくまでカジュアルに、おののくほどポップに、冒涜的なまでに軽々しくゴミたちは死ぬ。


 決して褒められた楽しさではないかもしれないが、これはこのジャンルでなくては楽しめない面白さだ。そして、私たち読者はそれを大いに享受すべきであろう。


 なぜなら、そう。


 これは、とあるVRMMOの物語。


 なのだから。


「ギスギスオンライン」

http://ncode.syosetu.com/n0776dq/

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