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6.神官長のなが~い話……


ブクマいただきました。

有難うございます。





 神官長モナーフの話は、『豊穣の乙女』の説明から始まった。




 『豊穣の乙女』とは、人々を救う聖女とかではなく、あらゆる意味で、実りをもたらす、女性の事だという……



「あの……もっと、わかりやすく説明して下さい」



「……『豊穣の乙女』とは、豊かな実りをもたらす者。人にとっての実りとは、繁殖をも意味する。皇太子が召喚したのだから、王族の子を産む役目を担うだろう……」



ナンダソレ?気持ち悪い……

「それって、無理やりとかじゃ……」



「そんなことは無い。今度(こたび)の豊穣の乙女にしても、既に殿下に夢中だったではないか?」



そう言われてみれば、顔赤くしてたなぁ……


「豊穣の乙女を、召喚するのが目的だったんですね?豊穣の乙女は、私じゃなくて、もう一人の……」


「ああ、皇太子がそう決めたからな……」


神官長モナーフは、忌々しそうに小さく息をついた……


「私は?偶然一緒にいたから豊穣の乙女の召喚に巻き込まれたんでしょうか?」


「私にはわからぬ……」


「『豊穣の乙女』じゃない私に、用はないですよね?」


「……ああ、だが子供を放り出すわけにもいかぬ。暫くは私が面倒をみようと思うが、どうだろう……」


神官長の提案を、私は受ける事にした。この世界の事を何も知らないで放り出されても、生き残れそうに無い……

ある程度の知識とか、生活手段を手に入れないと……


「あの……子供じゃないので……一人でも生活出来るようになったら、出て行きますから、それまでよろしくお願いします。それと、出来ればこの世界について、教えて下さい……」


「ふむ……簡略に概要で良いか?それとも……」


「くわしく、わかりやすい説明をお願いします……」


そう言うと神官長は何故かイイ笑顔を浮かべて、私をじっくり見ていた。


「神話の時代から、今現在まで、詳細にとなると、かなり長くなるが……寝台の上で寝物語にでも、微に入り細にわたって、事細かに聞かせようか……」



なっ……何言って……セクハラか!

「簡略で!!簡単に短く、わかりやすい説明を求めます!!ワタシコドモダヨ、ムズカシイコト、ワカラナイネ」



「ふっ……ついに自分で子供だと認めたな」



くぅ~……係長(中間管理職)めぇ……イイ性格してやがる……

そう思って、神官長をジト目で睨んでいた時、私のお腹が

空腹に耐えられなくなって……


ぐきゅ…ぐるるぅ~……

お腹の虫が……鳴った



「くっくっく……子供だものなぁ、我慢できぬか」



 笑いながら、神官長は壁際にある紐を引いた。

程なく、室内の奥の扉が開き、濃いベージュ色の、腰の部分を細いベルトで絞った貫頭衣を着た、十三歳ぐらいの少年が現れた。



「あぁ……ヨルズ、お茶と、何か食す物を……」



ヨルズと呼ばれた少年は、笑っている神官長と私を見て、一瞬驚いた様な顔をしていた。



「すぐに、ご用意いたします。」



両手を胸の前で交差して一礼すると、ヨルズはそのまま扉の中に下がっていった。

既に準備してあったのか、間も無くお茶と、甘食みたいなお菓子を、銀色のトレイにのせて持ってきた。

ソファーの前のテーブルに、音もなく置くと、慣れた手つきで、ティーポットからカップにお茶を注いでくれた。



「ありがとう」


私がそう言うと、肩のあたりで切りそろえた、黒というよりは藍色の髪に茶色の瞳をした、ヨルズと呼ばれた少年は、はにかんだ笑顔を浮かべた。


ヨルズは神官長に何事か指示されると、仰せの通りに、と

言って礼をとり、退出して行った。



「子供は甘い物が好きだろう?食べながらでよい、そのまま私の話を聞きなさい……」



そう言って神官長は、この国と、この世界の概略を話し始めた。



 神官長が話してくれた内容によると、この国の名前は『アストーリア神皇国』といい、この世界を統べる三神を信仰する宗教国家だけど、国の統治は皇族が担っているということだった。



 現皇帝はユーリウス・ソル・アストーリア、召喚をした皇太子は第二王子でユークリッド・ソレス・アストーリアといった。


兄の第一王子は、迷い人に関係した出来事が禁忌に触れ、神の怒りを恐れた大神官の提言によって幽閉されていたけれど、第二王子とその母を擁する派閥に糾弾されて、皇族の地位を剥奪され、国から追放されてしまっていた。




 私がトリップしてきた世界『アレスティレイア』……


聖域と呼ばれる世界の中心には、この世界を統べる神が

住んでいるという……



 十年前、聖域に近い森で、迷い人(異界人(いかいびと))が保護された……



 サキュラと呼ばれた、当時十歳だった女の子は、星を読み、天候を予言する能力を持ち、『星読の巫女』と呼ばれていた。


 

『星読の巫女』の能力はそれだけでなく、お菓子や、新しい料理も開発したらしい。

ラノベとかでよくある、テンプレな展開……果たして、この世界にカレーはあるのだろうか……?




 神殿にある塔で、外界から隔離されていたサキュラと、親しくしていた、第一王子……。

元の世界に戻りたいと言って嘆く彼女に同情し、書庫から「召喚と帰還」に関する禁書を持ち出し、禁忌とされた送還の儀式を行った……



送還の儀……それって、帰る方法だよね……出来ないって言ったの、ウソだったの?


「それで、サキュラさんは?……彼女は帰れたの?」



「サキュラは……おそらく帰れたと思うが……彼女が望んだ通りに帰還できたかは、わからない」



「それって……どういうこと?……」



「全ては、神の御業(みわざ)……(ひと)の身には為しえない、為してはならないことだからだ……」



「そんなこと言われたって、わっかんない!!送還だって、出来ないって……嘘言ったの?ねぇ!……」



「嘘ではない。……まず、今回の召喚が千年ぶりで、成功するかも、分からなかったと言ったが、覚えておるか?」



「たぶん……?」



(何故に疑問形なのだ……)

神官長モナーフは眉間にしわを寄せ、指で米神を押さえていた……


「千年前に……人の手による召喚も、送還も、神々が禁止とされたのだ。だが迷い人が現れ、迷い人を送還した事で世界が揺らぎ……代償を払う事で召喚が、出来るという事がわかったのだ」


神官長は、抑揚の無い声で淡々と話し続けていた。


「……おそらくサキュラは、お前と同じ世界から、迷い込んで来たのだろう。送還されたモノと入れ替わりに、同等のモノが、同じか、近しい世界から招かれるのだ……

迷い人というのは、世界の調律を整える、神の御業にて訪れしモノ、神が望めば元の場所に戻る事も出来ようが、禁忌を犯して送還したのだ、無事に帰還出来たとは到底思えん……」


リンカは大人しく神官長の話しに耳を傾けていたが、同じ世界から迷い込んだらしい迷い人の名前がサキュラと聞いて、動揺していた。

サキュラって、もしかしてサクラってこと……?


神官長はリンカの様子を気にしながらも、更に話を続けた。


「無理に送還した事で、同等のモノを此方(こちら)に招かねば、世界が揺らぐ。だが、代償が多すぎたのだろう……故に豊穣の乙女ともう一人、リンカが此方に招かれたのだろう……」



神官長の話しを、大人しく聞いていたけど、分らないことばかりだった……

世界が揺らぐとか、神様とか、代償とか、謎な事ばっかりだよぉ、係長~……


「私は……これからどうすれば……」


やけ食いとばかりに、甘食をほうばっていたら、(むせ)てしまった……



「くくっ……あわてずとも、誰も取ったりせぬ……落ち着くがよい……さぁ、一緒にお茶も飲むとよい……」



「けほっ……」

うぅ……視線がイタイ……



涙目になりながら、お茶を飲んでいたら、扉の外から、ガチャガチャした音と、人の言い争う声が、聞こえてきた。



え?なに?……と、思っていたら勢いよく扉が開かれた。



「お待ちください、副団長……」



扉の外で、警護していただろうキュリアスのあわてた声に、扉のほうを見れば、金属の様な素材の鎧を身に着け、長い銀髪をなびかせた、美麗な騎士が立っていた。




鈴花の反応を楽しみだした神官長。

係長呼びが、ばれないといいですね……。

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