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42.麗しのミレーヌ……


読んでいただき、ありがとうございます。

冒頭、大巫女ユーフェミア視点です。


活動報告にて、不定期に人物紹介もしていきます。

よろしくお願いいたします。



 大巫女ユーフェミアは、ユスティアに昨日の事を聞かれても、答えられないでいるユースヴェルクと、フォルツァの様子に、何事か禁忌に触れているのだろうと、推測していた。


 禁忌に触れし事を口に出せば……身体に負荷がかかり、変調をきたすのだ。

命を奪う程の事は無いが、問うても、言葉を返せず、言いたくとも、言えぬその様子が、禁忌に関する事と気が付かねば、ユスティアの様に、逆上するのも……仕方が無かろう……


 そうは思っていても、逆上して椅子を投げつけるユスティアに、大巫女ユーフェミアは右手でこめかみを押さえた……


 ユースヴェルクとフォルツァの二人から感じられる精霊の痕跡に、何であれ精霊に深くかかわる出来事があった事は、『感受の巫女』たるエレンも気が付いている……

だが、禁忌に触れるのであれば、当事者で無くとも、迂闊に口に出すことは出来ない……


大巫女ユーフェミアは、ユスティアが、フォルツァに激怒して椅子を投げつけた時、フォルツァの身体うちから湧き出る、強い精霊の力を感じた。


 フォルツァの身体から生じた精霊の力は、フォルツァを守る様にその体を覆い尽くしていた。


 そして、ユスティアの投げた椅子がフォルツァを覆う精霊の力に、触れる寸前、小さき精霊の力が、椅子を瞬時に粉砕したのだった。


 大巫女ユーフェミアは、小さき精霊……フォルツァと契約している雷の精霊レヴィが発した雷光のまばゆさに、眼を庇う様に、左手を顔の前に出した。その刹那……大巫女ユーフェミアは、何かに引かれるように、身体から意識が離れるのを感じた……






◇◇◇◇◇◇◇◇





 ユスティアは、意識の無い大巫女ユーフェミアを抱え続けていた。

抱える事で、大巫女の体が冷たくない事を、確かめていた。


 床の上にしゃがんで大巫女を抱え続けるユスティアにエレンが、奥にある控えの間に寝かせるよう、声を掛けても、ユスティアは無言で首を左右に振るばかりだった。


 見かねたエレンに言われて、フォルツァとミランの二人が、円卓の間の窓辺にある長椅子をユスティアの側まで移動してきた。

そして、大巫女を抱えたままのユスティアを、エレンが後ろからガシッ……と、抱きしめた。


 神官長は、エレンに抱きしめられて、ユスティアが怯んだ隙に、大巫女の身体をユスティアから引き剥がし、長椅子の上に横たえた。

そして、抱きしめるエレンから逃れようとしているユスティアに、落ち着く様に、話し掛けた。



「落ち着きなさい、ユスティア。人前で取り乱してはならぬ」



「で、でも……ユース兄様、小母様が……小母様が……」



「だから、落ち着けと言っている!」



 落ち着く様に言われても動揺が納まらないでいるユスティアに、神官長の雷が落ちた……



「エレンが心配いらぬと、言っていたであろう?だいたい、皇女ともあろうものが、逆上して騎士に椅子を投げつけるなど……」



神官長のお説教は、始まると長い……

とにかく長い……とんでもなく長い……

そして、くどい……


 神官長に小言を聞かされて、ウンザリしたユスティアは、ついつい、リンカに聞かされていたアノ言葉を呟いてしまった……



「***……」



 ユスティアは、神官長から顔を背けてボソッと呟いた。

言われた神官長は、聞きなれない言葉に、珍妙な顔をしていた。



「ユスティア……今、何と申した?」



 神官長の小言を止めて、してやったり、と満足げなユスティアに、神官長は眉をひそめながら、不機嫌そうに聞き返した。



「馬車の中で、リンカが言っていたのです。ユース兄様も、お聞きになったでしょう?」



 ユスティアは『白の塔』に来た時、馬車の中で、リンカを膝に乗せて抱きしめていたユースヴェルクの事を、思い出して、若干頬を赤く染めるのだった……



「……ユスティア……何故そんな顔を……?」



 頬をうっすら赤く染め、顔を隠すために背を向けたユスティアを、神官長は、怪訝そうに見つめていた。

ユスティアの様子も気になるが、今はそれよりも、

リンカが言っていた事が何か気にかかっていた。


 神官長はユスティアの肩に両手を置くと、くるりんっとユスティアの体を回転させて、正面から向かい合った。そして「***」と言った事について、説明するように言うのだった。



「……ユース兄様は、小言が多いのよ……だから、リンカに“オカン”って言われるんだわ。え?……“オカン”が何か、わからない?……ユース兄様ったら、覚えていらっしゃらないの?」



 ユスティアは、眉をよせながら、リンカが“オカン”について説明した時の事を思い出していた。あの時、ユース兄様は、自分を“オカン”と言っていたリンカの事を……

笑っている私達の事を、咎める事さえしなかった……


 膝に乗せたリンカの事を、抱える様に抱きしめて……あの時、ユース兄様は、何を考えていたのかしら……


 ユスティアは、そんな事を思いながら、ジト~っとした目で、ユースヴェルクの事を、見ていた。そして小さく溜め息を吐くと、“オカン”について説明しようと、口を開こうとした時……



「ティア様……“オカン”について、私にも教えて下さる約束でしたよね?」



「我にも教えるのじゃ……馬車の中で何があったのじゃ?

“オカン”とは何じゃ?隠さずに教えるのじゃぁあ!!」



「!!小母様??」



「……小母上……貴方という方は……」



 エレンと大巫女ユーフェミアの声に、ユスティアと神官長は、先刻まで大巫女ユーフェミアが横たえられていた長椅子に目を向けた。


 いつの間に意識を取り戻したのか、大巫女ユーフェミア、エレン、シリウス、フォルツァ、ミランの五人が、優雅に茶を飲んでいた。



「エレン様の入れて下さったお茶、とっても美味しいですぅ」



 エレンを『感受の巫女』と知らないミランは、美人が入れたお茶は、格別だと、素直な感想を述べていた。


 成人してから男ばかりの騎士団で過ごしているミランにとって、女性と接する機会など、殆ど無かった。

実年齢を知らないミランにとって、エレンは綺麗なお姉さんにしか思えなかった。


エレンはそんなミランの気持ちを感じとって、満面の笑みを浮かべていた。



 神官長は、いつの間にか覚醒して、優雅にお茶している

大巫女ユーフェミアに驚き、安堵するよりも呆れて、二の句が継げないでいた……



「小母上……貴方は、気が付いたなら気が付いたと……」



 大巫女に向けて神官長のお説教が始まりそうな雰囲気を、遮ったのはユスティアだった。大巫女の元に駆け寄りながら、神官長を軽く突き飛ばしていた。


 不意を突かれた神官長は、よろめいたが、倒れそうになるのを、根性で踏みとどまった……


確信犯のユスティアは、神官長を振り返り軽く舌を出していた。



「小母様……気が付かれたのですね……良かった……」



 ユスティアはそう言うと、大巫女ユーフェミアに縋りついた。


 大巫女ユーフェミアはそんなユスティアに、長椅子の隣に、腰掛ける様に促した。そして、心配そうな顔をしているユスティアの、額を平手で“ぺちっ”と叩いた……


 ユスティアは、大巫女が額を叩いた理由がわからなくて、額を撫でながら、キョトンとした顔をしていた。


 大巫女ユーフェミアは、ふぅっ、と小さく息を吐くと、

諭す様にユスティアに話し始めた。



「ユスティア……我は、ユースの様にクドクドとは言わぬ。じゃがの……キレてフォルツァに椅子を投げたは、見過ごせぬ……わかるか?」



 小言など、滅多に言わない大巫女からのお説教に、ユスティアは、すっかり項垂れてしまった。大巫女は、肩を落としてしょんぼりしているユスティアに、更に言葉を続けた。


「立場が上にある者が、激情に任せて叱責するは、愚行じゃ……冷静に物事を見極めねばならぬのじゃ……

ユースも、フォルツァも、昨日の事は禁忌に触れて、話す事叶わぬのじゃ。なぜ話せぬのか、その事を思いやっておれば、禁忌に触れたと、わかった筈じゃ……」


 大巫女ユーフェミアは、昨日の話が出来なかった二人について、禁忌に触れて話すことが出来なかったのだと、ユスティアを諭すのだった。

それから、フォルツァに向かって、意識を無くしたのは聖域に呼ばれたからで、フォルツァと契約している精霊が放った雷が原因ではない、気に病んではならぬ、と言い聞かせるのだった。



 大巫女ユーフェミアの話に、フォルツァは聖騎士団・副団長でもある、ユスティア皇女に昨日の話をしようとした時、何故か声が出なくなり、話す事が出来なかったその理由が、禁忌に触れたからだったのかと、理解する事ができた。


 フォルツァは今迄、禁忌に触れた事を話す……いや、禁忌その者に触れた事など、皆無だった。初めての体験に、声が出なくなったあの現象が禁忌に触れた時、身体に負荷がかかるという事かと、納得したのだった……



「さて……らしくない小言は、もう終いじゃ……それよりも、ティアよ……何か、楽しそうな話をしておったのぉ、話の続きをするのじゃ。“オカン”とは何じゃ?馬車の中で何があったのじゃ?」



 大巫女ユーフェミアはしょげているユスティアに向って、眼をキラキラさせて強請ねだるのだった。ついさっきまでの、大巫女としての威厳が台無しである……

 

 ユスティアは、そんな大巫女ユーフェミアの様子が、

へこんでいる自分を気遣っての事だと……勘違いしていた。


 エレンはそんな二人の様子に、よくある事、いつもの事だと、何も気にしていない……

チラッと神官長を見て、これもまた、いつもの事なのだが、若干気の毒そうに吐息をこぼした。



「……小母上……」



 神官長は大巫女とユスティアの二人を無言で睨みつけると、フォルツァの隣に腰を下ろした。


 エレンは絶妙なタイミングで、神官長に茶を入れると、

可愛そうな子を見る様に、憐憫の目を向けるのだった。


 ユスティアは神官長に向けるエレンの眼差しには気が付かず、これから話す内容についてチラッと神官長の顔を覗き見た。

神官長の機嫌が悪いのはいつもの事……と、ユスティアは、ホッとしたように目の前に置かれたお茶を口にすると、乾いていた咥内と、喉を潤し、大巫女とエレンに向って、話し始めた。



「小母様……馬車の中で、ユース兄様ったら、リンカの事を膝に乗せて、抱える様に、抱きしめていたのですわ。それから、前の日にユース兄様がリンカに説教をした事で、リンカがユース兄様の事を、“オカン”と言ったのですわ。細かくて、クドクドと口うるさい母親の様だと……。」



 ユスティアの話を聞いて、大巫女ユーフェミアはお茶を飲む手を止めた。

そして、ギギギっと音が聞こえてきそうなほど、ぎこちない人形の様な仕草で、神官長……ユースヴェルクの事を、二度見するのだった。


 大巫女ユーフェミアは、ユースヴェルクはリンカの話を聞いていなかったのではなく、聞きたくなかったのではないかと、考えた。

好意を持った女子が自分を男としてみていないどころか、母親の様だと……、そう言われては、記憶にとどめていなくても仕方ないだろう、と、そう思った。



 神官長は、妙な視線を感じて、大巫女ユーフェミアのいる一画を、振り返って見ると、大巫女、エレン、シリウスの三人が、気まずそうな顔をして自分を見ている事に気が付いた……


 大巫女ユーフェミアが座っている長椅子から、神官長、フォルツァ、ミラン、の三人がいる席は、大きな窓一つ分ほど、離れた場所にあった。

ユスティアが大巫女達に話していた内容など、聞き取ることなど出来なかった。


 神官長は、大巫女ユーフェミアやエレンが、何故微妙な表情で自分を見ているのか分からなかった。だが、その訳は、ユスティアの話に寄るものだろうと考えた。


 

 大巫女ユーフェミアは、昨夜のリンカの発言を思い出していた。

ユスティアがリンカに、ユースヴェルクの事をどう思っているか、好きか嫌いか聞いた時……あの時リンカは何と言っていた……?



「ティア……昨晩リンカは、何と言っておった?ユースの事を、どう思っておると……?」



 リンカが酔って寝てしまった後も、飲み続けていた大巫女ユーフェミアは、細かい部分の記憶が無かった……リンカにユースの事を聞いた本人の……

ユスティアならば明確に覚えているだろうと、問い質したのだった。


 大巫女ユーフェミアと飲む機会など、滅多にある事ではない……

昨夜の飲み会を、ユスティアは心から楽しみ、酒の量も多かった。

ユスティアは大巫女ユーフェミアに聞かれたことを思い出す様に、両手の人差し指で、こめかみ部分をぐりぐりと揉みだした……



「う~ん……昨日リンカは……確か……わか……らない……わからない……って言っていたわ。」



 ユスティアは昨日リンカが、ユース兄様の事が好きか嫌いかわからない……

そう言っていた事を思い出した。あれ?でも、他にも何か言っていた……?



「……ふむ……リンカは今どうしておるのじゃ……?」



 大巫女ユーフェミアは、リンカが今どうしているのか、

エレンに聞くのだった。


 エレンは、大巫女ユーフェミアに、リンカは今、熱を出したエティ……リビングストンを部屋で看病している……

リンカには、エティが起き上がったりしない様に、

側でみているように言い含めてきた、と大巫女ユーフェミアに言うのだった。



「エレンは、エティ……リビングストンの味方だったわね……」



 ユスティアは、リビングストンが、少しでもリンカと共にいられるように、エレンが味方すると言っていたのを思い出した。

それにしても……



「エレンったら、ズルいわ。エティばかり優遇して……」



 ユスティアは、リンカにエティの側についていなさいと言ったエレンを、恨めしそうな眼で見ると、今日はリンカは部屋から出てこない、ユース兄様と会う事なんて出来ない……と、ぼやいた……



確信犯のエレンは、微笑みながら、言うのだった……


「もうしわけありません……ですが、ユースヴェルク様が昨日の今日で、塔に戻られるとは、思ってもおりませんでしたので……」



 エレンの言葉に、シリウスは昨日からの事を考えていた……

昨日塔から去る間際、神官長は五日後に戻ると言っていた。

それ故、リンカが襲われた事を神官長に報告する事と、リビングストンの不在を偽装する為にフォルツァを、神官長の元に送り出したのだ……


 それがどうだ……前触れもなく乗り込んできた神官長と、女装して……帰って来たフォルツァ……

 

 シリウスはフォルツァの女装姿を思い出し、危うく吹き出しそうになった。



「ふむぅ……我は、フォルツァの味方をするとしようか……このままでは、フォルツァが一番不利じゃからの……ふふっ……」



 大巫女ユーフェミアは、自分に跪き騎士の礼をとったフォルツァがすっかり気に入った様だ。どうすればフォルツァが、リンカと共に、居られようか……大巫女ユーフェミアが、何を考えているかわからぬが、口元が緩んで、楽しそうにしていた。


 シリウスは、大巫女に気に入られたのが運のツキ……とばかりに、フォルツァに憐憫の目を向けるのだった。


 それにしても、所詮リンカは『神の花嫁』として、聖域に嫁ぐ身の上……深入りなどして傷ついたらどうするのだ?誰が、フォローすると思って……

 

 シリウスは、確実に来るであろうその時を思って、ウンザリしたように、盛り上がる三人を見て、わからない様に溜め息を吐いた。




 一方……何やら盛り上がっている女性陣と無表情のシリウスを遠巻きにして見ていた、神官長、フォルツァ、ミランの三人は、リンカが今頃何をしているのか、今後の護衛をどうするか、と言った事を、話していた。



「リンカを側で警護する為に……いい考えがあります」



 フォルツァは、昨日ミランに会ってから考えていた事を、神官長に話した。神官長は、神官長で、ミランを神官に仕立て、塔の居住区に連れて行こうと思っていた……

だが、フォルツァの話を聞いて、リンカをすぐそばで警護するには、フォルツァの考えを採用する事が最善だと、考えを正すのだった。


 フォルツァの考えた事を聞いたミランは……絶句していた……

これは、アレか?フォルツァ先輩の女装を揶揄った罰なのか……?


 そんな事を考えて、燃え尽きた剣闘士の様に、真っ白になっているミランに、フォルツァは言うのだった。



「ミラン、昨日約束したよな?俺の頼みを聞くって、言ったよな?」



 フォルツァは昨日、内容を言わずにミランから了承の言質を取っていた。

ミランはその事を思い出し、頭を抱えるのだった。


 神官長は、ユスティアが何を話し、三人が微妙な顔をしていたのか……

大巫女ユーフェミアとユスティアが何故ああも盛り上がっているのか、悪い予感しかしないが、そろそろ、釘を刺しに行かねば、と思っていた。


 神官長は、丁度良い頃合いだと……シリウスと席を代わるので、警護の事など、話し合う様にとフォルツァに告げて、椅子から腰をあげた。

その時神官長は、思い出したように、カルセドニィの事は、リンカにあまり近づけない様にと、フォルツァに警告するのだった。



 フォルツァは、ミランと二人になって、リンカの事で、どうしても伝えたかった事を打ち明けるのだった。


 神官長と入れ替わりに、フォルツァの隣にシリウスが座ると、フォルツァはリンカの警護について、隊長のシリウスに、神官長と話していた策について説明するのだった。


 シリウスは反対こそしなかったが、気の毒そうにミランを一瞥した。

だが、ミランの契約精霊が風の属性で、リビングストンとも、リンカとも、ほぼ面識が無い事を加味して、適任だな……と呟くのだった。


 それにしても、『カルセドニィをリンカに近づけるな……』と、神官長が言っていた、と、フォルツァに聞いたシリウスは、カルセドニィについて、引き続き監視を続けなければ……と、気を引き締めた……

それから、フォルツァに向き合うと、エレンから聞いた話を、フォルツァにするのだった。



「リンカは今日は部屋から出て来ないそうだ……」



 シリウスは、思い出したようにフォルツァにそう言うと、早速ミランが役に立つな……と、ミランに向かって笑みを浮かべた。


 ミランは、『凍れる獅子』の笑みを間近で見て、まるで恋に落ちた乙女の様に、頬を染め俯くと、隊長の笑顔、破壊力パネェ……と、思うのだった。


 シリウスはエレンにミランの事を頼むと、影に命じて、

女装具を手配した。そして、執務室を出るとカルセドニィを連れて、騎士団白の塔支部に、フォルティス隊の二人の騎士、ロータスと、ティアーズを、迎えに行くのだった。



執務室には、大巫女ユーフェミア、エレン、ユスティア、神官長、フォルツァとミランの六人が残っていた。


 神官長は、ユスティアと話しをしていた。

途中神官長は顔を青白くして、絶句していた……


 大巫女ユーフェミアは、エレンと影が、ミランを女装させるのを興味津々で見ていた……

途中女装具の偽乳を触ろうとして、エレンに窘められていた。




 フォルツァは、そんな大巫女ユーフェミアの様子を目で追いながら、話しを切り出すタイミングを計っていた。


 リンカが『神の花嫁』として聖域に嫁ぐとき、出来得るならば、自分も聖域に……リンカと共に行きたい……

神官長に聞いた時、大巫女様の指示を仰ぐ必要があると言っていた。


 フォルツァは大巫女様本人にお伺いを立てるか、神官長を介して、返答を待つがよいのか、どちらが良いのか考えていた……


考えて、考えて……

出た答えは大巫女様に直接聞くのは恐れ多い……

神官長を介して、返答を頂くとしよう……と、いうものだった。


 フォルツァは、ユスティアと話している神官長に、どうやって切り出そう……話し掛けよう……と悶々と悩むのだった……



 

◇◇◇◇◇◇◇◇


 


 エレンと、影の尽力により、いつの間にかミランは、

見目麗しい侍女姿になっていた。


 後に『麗しのミレーヌ』と、騎士達に讃えられた伝説の侍女が、いまここに誕生したのだった……



次回は忘れられそう?な

主人公リンカのターン……

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