3.ファーストキスは……
数多ある作品の中から、選んで読みに来てくださって
有難う御座います。
並行多重世界の一つ、『アレスティレイア』
管理する神々の尽力に、他世界に比べても、
美しく、調和のとれた、安定した世界だった……
その日、世界各地で異常な事態が起こっていた……
何かが体をすり抜けるような感触に人々は驚愕し
狂ったように咆哮する獣の声、怯え泣き出す赤子達
大気が震え、天空には光り輝くオーロラが現れた……
果たしてソレは、吉兆なのか、凶兆なのか……
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「何なのよ……イヤだ、近づかないで!!」
喚き散らす甲高い声と、ざわつく周囲の気配に、私は意識を取り戻していた。
冷たい大理石のような床に寝ていたせいか、体が痛い。
そっと辺りを見渡すと、少し高くなった場所から、私と、泣きわめいている玲奈を見ている集団があった。
「************……」
「※※@@@@$$*::」
何語だろう?聞きなれない言語だが、昔の宗教映画で古代の言葉として言われていたセリフみたいに聴こえる。
コレって、もしかして異世界、召喚??な~んて……
遊ぶ暇も、自由に使えるお金も少なかった私が、よく読んでいたネット小説やライトノベルの一場面を見ているようだった。
物語では言語は神様補正や異世界転移特典で自動翻訳されるのに、どうしよう?神様に会わなかったからかな……
困ったなぁ、何言っているのか全然わからない……なんて思っていたら、腕の中にいたクロちゃんが私の唇を舐めはじめた。
よかった、無事だったんだね……
でも、初キスが猫のクロちゃんなんて、乙女としてどうなんだろう……
《これぐらいで、どうだ?言葉は通じるようになったか?》
不意に頭の中に、声が響いてきた……それと同時に、周囲の人が、何を言っているのかが解るようになった。
え?何で?もしかしてクロちゃんに舐められたから?
《ふむ……今の姿では、舐めた事にしかならぬか……
心配ではあるが、少し離れるぞ。何かあれば我を呼べ。良いな?》
言葉がわかるようになったのって、やっぱりクロちゃんに舐められたから……?
そう思っていたら、今度は不意に頬を舐められた。
そして、瞬き一つする間もなく、クロちゃんは消えていた。
クロちゃんって、ただの猫じゃなかったんだね……
早く、戻ってきてね……
クロちゃんは、鈴花大好き、見かけはニャンコです。
その正体は……アレ……でしょうね~