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38.『白の塔』の異変


 神官長執務室を、急襲したのは聖騎士団・団長の、ユーアン・ベンブルグだった。


皇族の証でもある銀髪を無造作に、ざっくばらんに切った様な、好く言えば雄々しいと言えなくもない、ワイルドな髪型をしていた。


 今年三十一歳になる甥の神官長ユースヴェルクより、七歳年上の三十八歳だ。

幼い当初、神官長ユースヴェルクは、団長のユーアンの事を、兄のように慕っていた。

だが、ユーアンが騎士団に入団してからは、苦手な……出来れば避けたい相手でしかなかった。


 豪快で大雑把な脳筋の団長と、神経質で理知的な神官長とは、水と油の様に反発し合い、馴染まない間柄だった。


そんな二人だが、ユスティアに関しては、親愛の情を示し、二人とも、ユスティアの事をかわいがっていた。


 団長は、神官長が花嫁を塔に連れて行ったと聞かされ、

今朝から顔を見せていないユスティアを連れて行ったのかと、神官長を問い詰める為に、執務室を訪れたのだった。



「落ち着いて下さい、ユーアン団長……」



執務室に入るなり、今にも掴みかかりそうな団長の前に、

神官長を庇う様に、護衛のミランが立ちはだかった。


 自分と、神官長の間にミランが立った事で、幾分頭の冷えたユーアン団長に、冷めた目をして、神官長が話し始めた。



「四日後のアプリール・アンファングの『花嫁の儀』に、

ユスティアが立ち合うのを忘れたのですか。たしか……

五年前にも、同様の説明をしたと記憶していますよ……」



神官長は、大げさに溜め息を吐き、あきれた様な表情かおで、ユーアン団長を見た。



「ぅぬ……だが、なぜ貴様も一緒に塔へ行ったのだ。しかも、フォルティス隊を護衛に連れて……」



出鼻をくじかれた感じのユーアン団長は鼻に皺を寄せ、忌々しそうに神官長を睨みつけた。



「私が何故塔に行ったか知りたいと……何を今更……『花嫁の儀』についての打ち合わせですよ」



 まったく、誰から話しを聞いたのだか……

そうだ……いったい誰が、団長に余計な事を喋ったのだ……

神官長は、眉根を寄せると、黙り込んでしまった。


 ユーアン団長は、普段だったら神官長に好い様に、あしらわれ、言い負かされていた。

いつもと違い、なぜか沈黙している神官長に、団長は、ここぞとばかりに言い放った……



「ところで、迷い人を囲ってるそうじゃねぇか……随分と、物好きだよなぁ……神官長さんよぉ」


団長は顎に手をやり、擦りながらニヤリと口角を上げ、

獲物を捕捉した猛禽類の様な鋭い眼で、神官長を見据えた。



「ユーアン団長……囲っているなど、人聞きの悪い……相手は子供です。保護しただけですよ」



 まったく何を言っているのやら……

神官長はあきれ返った様に、勿論、幼女趣味もありません、と言葉を続けた。



「くだらない事をあなたに吹き込んだのは、クラレンスでしょう?」



そう言って神官長は、大きくため息を吐いた。

ユーアン団長は、クラレンスから聞いたという事を隠そうともせずに、不機嫌そうに話を続けた。



「出掛けようと思ったら、大神官付きのパッセリ野郎が来て、『神官長が朝からどっか行って、礼拝にも出ない……

大神官に対して不敬だ。迷い人を囲い込んだ。迷い人を使って何かやるつもりだ。由々しき事態だ』って、パッセリ野郎がわめいてよ。調べねぇ訳にいかねぇだろが……」


 ユーアン団長は、何時でも大神官の側にいるクラレンスの事を、肉料理の色どりに添えられているが味も無く、食べずに捨ててしまう、なよなよした野菜『パッセリ』の様だと侮り嫌っていた。



「言い出したのがパッセリ野郎でも、やる事はやらねぇとな……」

 


 面倒くさそうに団長は言いながら、左手の人差し指で

左耳の穴を掻くと、その人差し指に大げさに息を吹きかけた。

神経質な神官長に対しての、嫌がらせに他ならない。

狙い通り、黙って見ていた神官長の顔が、歪んだのを見て、ユーアン団長は、満足そうに口角を上げた。



「門番の所に人をやったら、神官長が『白の塔』に花嫁を連れて行った、って報告があってな。で、朝から姿が見えねぇユスティアの事かと思って、わざわざ聞きに来てやったのよ。んで、迷い人だろうが、何だろうが、女囲ったって言うから、やっとその気になったのかと思ってよぉ…」



女は女でも、子供じゃなぁ……子作り出来ねぇよなぁ……

そう呟くと、お手上げだとばかりに両掌を上に向けた。



「まぁ、大人の女相手でも、何も出来ねぇヘタレだしなぁ……」



 ユーアン団長は一人で納得すると、両腕を組み、うんうん、と首を上下に動かした。


神官長はうんざりした表情で、黙って聞いていた……



「それで、話しは終わりですか……はぁ……貴方は、私の事をいうよりも、自分が何とかしたら如何です。身を固めて、母様かかさまを安心させたらいいでしょうに」


 辺境の神殿で神殿長を務めているユーアンの母から、

報告書と共に来る私信に、年々愚痴が増えている……



「……母様かかさまからの私信には、貴方の心配ばかりですよ。もう若くないんですから、子種が尽きる前に嫁をもらって子供を作って下さいよ」


 神官長は、ユーアンの事を心配などしていないが、

育ての母ともいえる母様かかさまの矛先が自分に

向かってこない為にも、早く身を固めてほしいと思っていた。



「ッチ……まだ諦めてねぇのか……」



 厄介な事にしかならない、皇族の血筋など要らない。

子供が欲しいなんて、思った事さえ無いユーアンだった。

だが、クラレンスからユースヴェルクが迷い人を囲ったと聞いて、特定の女を側に置くだけならいいか……と、思い始めていた。



子供ガキは要らねぇが、女作るぐらいはするかな……お前の真似じゃねぇが、女でも囲ってみるか」



 ユーアン団長は、ニヤニヤしながら神官長を見ると、

迷い人……リンカが何処にいるのか、その所在を聞いてきた。

神官長はユーアン団長が何故リンカの事を聞いてきたのか、その目的を考えて返答しなければならないと、身構えた。



「何故、迷い人の事を聞くのですか……」



 神官長は、ユーアン団長の真意を測るかのように、

表情の変化を逃すまいと、その顔を凝視しながら問いかけた。


ユーアン団長は、そんな神官長の表情かおを見て笑い出した。



「クックック……何て顔してやがる。お前がそんな顔するなんてな……」



 ユーアンは、ここまで感情を露わにするユースヴェルクを見るのは子供の時以来だった。

常に無表情のユースヴェルクにこんな顔をさせる迷い人に、ユーアンは俄然興味を持った。



「そんな顔とは……私がいったいどんな顔をしているというのです」


 神官長は、楽しそうに笑うユーアン団長とは対照的に、

眉間に皺を寄せ、不機嫌そうに問いかけた。

だが、そんな神官長の様子は、ユーアン団長を余計に楽しませるだけだった。



「くっくっく……。気が付いてないのか……。誰が見ても、気が付くと思うぞ……なぁ、ミラン、そうだろう?」



楽しそうに、笑いながらユーアン団長は、黙って二人のやり取りを見ているミランに同意を求めた。



 突然話を振られたミランは、返答すべきかどうか迷った。神官長とは、隊長や副団長の様に親しい付き合いは無い……仕事以外で顔を合わせる事は少ない神官長だが、こんな顔は、初めて見る……


馬車の中で膝の上に抱きかかえていた事から考えても、神官長は、迷い人に恋情を持っているだろう事が読みとれるのだった。



「……私がお答えして良いのでしょうか?」



 護衛任務に専念したいミランは、自分にとってどうでも良い二人のやり取りに、参加などしたくない。

どう返答しても、悪い予感しかしない。何とか誤魔化す手は無いかと、苦悶に満ちた表情をしていた。



「……そういえば、カルセドニィに用事があったのでは?団長が呼んでいると、言ったら慌ただしく向いましたが……」



 ミランは、『鳥の眼』で監視しているカルセドニィの事を団長に聞く事で、話題の転換を画策してみた。

すると、団長は渋い顔をして応えた。



「カルセドニィ……奴もなぁ……最近たるんでやがるから、ち~っと、根性鍛えなおしてやろうかと思ったんだが、ヴェゼルの野郎に持ってかれちまってよ……」



 ミランは団長の答えを聞いて、カルセドニィの慌てふためいた理由に、なるほど、と納得した。だが、参謀官とカルセドニィのつながりが、わからない……

『鳥の眼』は、監視は出来ても盗聴は出来ない。

契約精霊の助けが無い今、詳細を知るために、団長に問いかけた。



「参謀殿がですか?カルセドニィに何用があったのでしょう?」



話しの流れからついでに聞いているかのように装いながら、ミランは団長に、駄目もとで聞いてみた……



「あぁ?何かよく知らんが、計算がどうとか、書類がどうとか、っつーか、そんな事よりミラン、暇ならカルセドニィの代わりに、相手にならねぇか?」



「団長……」



 ついさっきまで団長の相手をしていたミランは、両眉を上げ、団長の顔を見上げた。フォルティス隊の中でも、年若いミランは、一見すると、勇猛果敢なフォルティス隊の一員には見えない、優しそうな、好青年と言った風貌をしている。

肩の先まで伸びた、軽くウェーブのかかった栗色の髪を

耳を隠す様に、緩く紐で纏めていた。決して小さく無いのだが、二メートル近い団長が相手では、どうしても見上げる様になってしまう。



「勘弁してください……朝からず~っと団長の相手して、やっと食事にありつけたっていうのに……それに、暇じゃないです。」



 ミランに鍛練の相手を断られた団長は軽く舌打ちすると、思い出したように言った。



「そういやぁ……、ミラン、何で此処にいるんだ?護衛任務ってのは、ユースヴェルクの事かぁ?」



言い当てられてしまったミランは、気まずそうに目を伏せた。


「ユースを護衛……かぁ……」


ユーアン団長は愉快そうに一人呟いていた……


何か思いついたらしいユーアン団長は、気づかぬ内に神官長の事を、かつて呼んでいた愛称で、呼んでしまうのだった。



「ユース……久々に相手するか?神官職だからって、何もしてないわけじゃねぇよなぁ……」



獲物を追い詰めた捕食者の様に、舌なめずりしそうなほど、愉悦に満ちた表情で、団長は神官長を見据えていた。



「はぁ……貴方って人は……暇なら参謀殿の手伝いでも

したらどうなんです?だいたい、貴方がしっかりやらないから、他の騎士が参謀殿を手伝わされるのでしょう?」



始まったら止まらない神官長の小言に、聞く耳を持たない団長……

その二人を傍観しながら、軽食を口に運ぶ騎士ミラン……

通常であれば静かな神官長執務室が、異様な雰囲気につつまれていた。



「ッチ……いつもそうやってギャンギャンわめいてよ、

口うるさい女みたいだぞ?ヒョロヒョロしやがって……」



神官長の小言に、辟易した団長が吐いた悪態の中に、

リンカが自分に向けて言い放った“ひょろ”……

その単語に、神官長が過剰に反応を示した。



「……そんなに私はヒョロいですか?男には見えませんか?」



低く絞り出す様に唸った神官長の言葉に、団長は狼狽えた。



「……?お、おい?ユース?どうした?……」



「……いいでしょう……こうなったら、つきあいますよ……貴方とは前から一度、思う存分やり合わないと、いけないと思っていたんです……場所は鍛錬場ですか?行きましょう?」



我先にと、鍛錬場に向かおうとしている神官長に、焦って止めたのは、他ならぬ、ユーアン団長だった。



「ユース……?いつもだったら、俺が何言っても、そんな反応したことないだろう?じょ、冗談だ。今更お前と鍛練なんて、俺はやらねぇ……」



昔だったらいざ知らず、今や力の差に加えて、立場という者がある。

守護対象の神官長を相手に、怪我させるなんてあり得ない。

言い出しておいて今更だが、団長はダラダラと顔に脂汗を浮かべながら、

頭に血が上った神官長をどうやって鎮静化させるか、考えていた……。



「お、落ち着け……おい?どうした?冷静沈着な神官長らしくもねぇ……」

なんだ?何だって、こんな感情的になって……?



「私は落ち着いていますよ。動揺しているのは貴方でしょう?」



ダメだ此奴、眼が据わってやがる……

「う……あ~しまった、ヴェゼルにすぐ戻れって言われてたんだった。いやぁ~、残念だが、しょうがない。手合わせは時間がある時になぁ」



そう言うと、団長は逃げる様に執務室を後にした。

残された神官長は、乱暴に閉ざされた扉を見つめながら深い溜め息を吐くと、疲れたように深く椅子に腰を下ろした。


 二人の様子を傍観していたミランは、皇族という関係以上に、団長と神官長の間には何かあるのだと、初めて知った。だが、その関係がどんなものなのかについては、今の自分には必要も、関わりもない事と、気にしていない振りをした。


 執務室の騒ぎが収まったのを見計らったかのように、

食事の片づけに来たヨルズが、神官長とミランにお茶を入れ直すと、両手を胸の前で交差し神官の礼を取り執務室を出て戻って行った。



「……そういえば、誰が見てもわかるって、どういうことですかね?そんな変な顔してましたか?」



 静けさが戻った執務室で、神官長がミランに問いかけた。

飲んでいたお茶を危うく吹き出しそうになったミランは、

ゲホゲホとせき込みながら、何て言えばいいか、思考を巡らせた。



「ケホッ……ゲホッ……神官長……そんな気にしなくても、大丈夫ですよ……誰でもわかるなんて、ありませんから……」



 実際、団長が『迷い人』について聞いた時に変化した表情も、馬車での様子を知らなければ、神官長が迷い人に抱いているらしい恋情にミランが気が付くことは無かっただろう。


冷静沈着な神官長にしては珍しい事もあるものだ……程度にしか、いや、もしかすると、気にも留めないかもしれない。

間近で見ていたからこそ気が付く事が出来たほどの変化だった。



「神官長は、迷い人に特別な思い入れがあるのでしょう?」



 誤魔化しても仕方がない。ならばいっそ……と、ミランは逆に神官長に、心の内を聞いてみた。


 『迷い人』……リンカに特別な思い入れが?そう聞かれた神官長は、言葉に詰まってしまった。

リンカに対する感情が、いったい何なのか、神官長自身、わかっていなかった。

誰よりも愛しい……守ってやりたい……

昨日会ったばかりの迷い人に対して、なぜこんな気持ちを抱くのか……


自分でも持て余している想いに、いっそ誰かに、吐露してしまおうかと、神官長は思った。だが、目の前にいるミランという若い騎士に、言う事など出来ない。年若い、リンカと似合いの年頃の騎士……

自分がミランの様に若ければ、たとえ神に背こうと、リンカを連れて逃げる事が出来るのに……


 神官長は小さく溜め息を吐くと、何もないという無表情な顔で、ミランに返答するのだった。



「迷い人に思い入れ……私が?そんな事あるわけな……」



 神官長がミランに話しかけた時だった……



「何だ?何が起こっている……?」



神官長が執務室の扉を開けるよりも早く、ミランが外へ飛び出していた。

神殿から遠い……『白の塔』の方角で何かが暴発した様な……

光の球が膨張して弾けたように小さな光が、飛び散って行く……

まばゆい光の流れに、遠くの出来事なのに、直視できない。

大気が震え、歓喜の歌が聞こえてくる……


 異変に気付いた人々は、訳もわからぬまま、零れ落ちる涙をとめる事が出来ない……

やがて光が消え、震えていた大気が静まると、精霊使いの元に、契約していた精霊が戻り始めていた。


 神官長とミランは、異変が終息したのを感じ取ると、神官長執務室に戻った。

そして、戻って来た精霊に気がつくと、事情を聞くことにしたのだった。


 ミランの元には、契約している風の精霊と、光の精霊が戻っていた。

神官長の周りには何故か無数の精霊が来訪していた。

だが、契約していない精霊の姿を、目視出来る事は殆ど無い。

精霊の気配を感じることは出来ても、その姿をはっきりと見るには、精霊に好意を持たれて契約するか、精霊自身がその姿を現すほかは無い。



「ミラン殿は、精霊使いでしたか……。聖域から精霊が戻りましたか?」



 精霊の気配しか感じられない神官長が、ミランに聞くと、小さく頷いたミランが、精霊に何があったのか聞いてみたが、その話がよくわからない……。だが、悪い事では無く、精霊達にとって、何か良い事があった様だった。



「精霊は何と答えたのですか?」



神官長に聞かれて、ミランは先程精霊から聞いた話しを、

かいつまんで神官長に伝える事にした。



「はぁ、どうもよくわからないのですが、何か良い事があった様で、精霊が浮かれています。どうやら、特定の誰かに呼ばれて嬉しいとか、輝いていたとか、可愛かったとか……」



どうにもわかりにくい話しだと、ミランも戸惑っている様だった。



「それから、更にわからないのですが、神官長の放つ光が、その人物に似ていて、心地良いのだと……」



それで、神官長の周りに無数に精霊が集まっているのだという。

そうは言われても、神官長には思いあたる節が無い……。

いったい何のことなのか?以前から精霊に好意を寄せられていると感じていた事と、関係があるのだろうか?


 精霊に好意を寄せられる神官長は、契約こそしていないが、相手の苦痛を取り除いたり、落ち着かせるために眠らせたりする、精霊術を行使する事が出来ていた。


 悪い事ではないという話だが、『白の塔』で、何か異変が起きた事は間違いない。調査に行くという大義名分のもと、『白の塔』に行くことができる……そうと決めたら、準備をしなくては……


 神官長は、壁にある紐を引くとヨルズを呼びだし、大神官に面会の先触れを出す様に命じた。

大神官の許可など必要ないが、異変の調査ともなれば、

公的な手続きが必要になる。

神官長は身支度を整えると護衛のミランと共に、大神官の元へ向かった。


 

 大神官は、先触れがあったとはいえ、滅多にない神官長の訪問に、何事かと身構えていた。野心のみで大神官の地位に着いたクレールスに神官としての脳力は殆ど無い。『白の塔』で起きた異変など、感じる事も出来なかっただろう。敏い神官達の騒ぎに、どう対処しようかと思っていた大神官は、神官長の申し出にすぐに許可を出すと、『花嫁の儀』が終わるまで、神官長が戻らない事にも、快諾するのだった。


大神官にとって邪魔な存在でしかない神官長が神殿を離れる事に、異議を唱える事などしない。それどころか、むしろ塔から戻ってこなければいいとまで、思っているのだった。



 大神官からの許可も取った。これで、誰にはばかることなく、『白の塔』に向かう事が出来る。神官長は護衛のミランに、明日また、五の鐘と共に神殿を出発して『白の塔』に向かうので、その為の、準備を頼むと伝えた。


 明日塔に向かったら暫くは戻らない……後々の事を、ヨルズに指示しておかなければならなかった。表面上とはいえ、千年振りの召喚を成功した事で大神官の影響力が大きくなっている今、神殿を長く空けるのもよくないのだが、戻ってから対処できるだろう……


 神官長は、信頼のおける直属の神官に大神官の動向に注意するように指示を出し、ヨルズと共に神殿での勤めを任せる事にしたのだった。






 夕刻の六の鐘が鳴り、湖に出来た透明な通路を一人の騎士が馬を駆り、疾風の如く駆け抜けて行った。


 それは、神官長への報告を携えた騎士、フォルツァだった。だが、その風貌は聖騎士団白の塔支部隊長のリビングストンによく似ていた……


パッセリはパセリの事です。

飾りとして皿に乗っていても、

食べる人は少ないですよね?

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