32.初めてのお酒と恋バナ
後半、かるーい、
自慰行為描写があります。
イヤな方は後半スルーして下さい。
お酒を取りに行って戻って来たエレン様が、
ハグしている私とエティを見て驚いていた。
それよりも、エレン様が連れてきた大巫女様に驚いた。
「女子会とはなんじゃ?なんかわからんが楽しそうなのじゃ。我を除け者にするなど、許せんのじゃ。仲間にいれるのじゃ~」
大巫女様……既にほろ酔い状態です?
エレン様は、何処か気まずそうに苦笑いしています。
「お酒を取りに行ったら、見つかってしまって……リンカが初めてお酒を飲みたいっていう話に、ぜひ付き合いたいって、お酒の楽しみ方を教えるんだって、そうおっしゃって……女子会なんですよ、って言ったら、我も女子じゃ~参加するのじゃ~って聞かなくて……」
「エレンが楽しそうにしておるからじゃ……」
「あら、私が悪いと?」
片眉を上げて不敵にほほ笑むエレン様の背後に、吹き荒れるブリザードが見えたような気がする。
「小母様も、エレンも、いい加減になさいませ……ねぇリンカ、小母様が加わっても、気にしないわよね?」
私は黙って、首を縦に振った。
「お茶の用意も出来ましたけど、どうしましょう?」
メリルがティーポットからお茶を注ぐかどうか、悩んでいた。
「私はお茶をいただきます。酔っていては、リンカを守る事が出来ませんからね」
「そうね、エティはお茶がいいわね。メリルも一緒にお茶にしましょう。身分とか気にしないで……無礼講で、ね。リンカは、初めてお酒を飲むのよね?」
「ティア様は、飲んだ事があるのですか?」
「あるわよ。成人しているもの。初めてなら、甘いお酒がいいかしら……」
「ティア様、このお酒でいかがでしょう?」
ティア様が、お酒初心者の私にお酒を選んでいると、エレン様が、赤い実の絵が付いた、陶製の容器に入った赤いお酒を差し出した。
「そうね、これなら飲みやすいわね」
ティア様はそう言うと、陶器で出来たグラスにそのお酒を
半分ぐらい注いで、私に差し出した。
「初めて飲むなら、口当たりのいい甘いお酒がいいと思うわ」
ティア様の前にある陶製のグラスには、青い容器に入っていたお酒が注がれていた。
大巫女様も、エレン様も、いつの間にか、お酒の入ったグラスを持っていた。
メリルとエティもお茶の入ったカップを手に持っている。
私も、目の前に置かれたグラスを、手に持った。
「大巫女様の健康と、リンカの初めてに……」
エレン様が、そう掛け声をかけると、
「大巫女様とリンカに……」
ティア様、エティ姉様、、メリルが一斉にそう答えた。
「楽しく飲もうぞ!」
そして大巫女様の掛け声で、一斉にグラスに口をつけた。
私も、初めて飲むお酒(しかも異世界産)を、飲むべく恐る恐るグラスに口をつけた。
「美味しい……甘くて、果汁100パのジュースみたいだ」
私は、思っていたより飲みやすいそのお酒を、一気に飲み干した。すると開いたグラスにエレン様が、二杯目を注いでくれた。
「飲みやすいけれど、ゆっくり飲まないと悪酔いしてしまいますよ」
「はい、エレン様……」
この時、酔いが回り始めていたのか、すごく気分が良かった。
私は、二杯目をチビチビ舐める様に飲んでいた。
大巫女様も、エレン様も、軽く三杯以上飲んでいるはずなのに、ちっとも変わらない。ティア様は、ほんのり赤く染まっていた。
「ティア様、ほんのりピンク~」
「?あら……リンカはあまり変わってないわね。強いのかしら?」
そう言って、私のグラスにお酒を注ぎ足した。
コクコクッ……
音を立てて半分ぐらいまで飲んだ。
甘い、ベリー系の果物の味がする……
「うっふんっふ~ん……ん?」
エティ姉様と目が合った。私はエティ姉様に抱きつくと、
「エティ姉様……だぁ~いしゅきぃ」
そう言ってぎゅーぎゅーした。
椅子に座ったままのエティの顔が、ささやかな胸の谷間に押しつけられて、エティはその場で固まっていた。
次はメリルだ。私はメリルを抱きしめた。そして……
「メリルゥ~。青いミサンガは、誰にあげるの~?」
私は、たちの悪い酔っ払いになっていた……
周囲の人に絡むタイプだ。
「リンカ様、酔ってます?」
「う~ん??酔ってないよぉ。気分がいいだけ~。でぇ、
メリルゥ?誰にあげるのかなぁ?好きな人?メリル好き~」
「リンカ様ぁ、ぎゅーぎゅーしないで下さい。苦しいです。もう少し弱めて……」
「おっぉお、ごみぇ~んね?でぇ、誰にあげるのぉ?」
メリルは溜め息を吐きながら、仕事で助けてくれる
ヨルズにあげるんだと、教えてくれた。そうか、ヨルズか。
「私も、ヨルズ好き~。かわいいよねぇ……なおクンみたいでぇ」
「ナオクン?だれですの?そんな神官見習いいたかしら?」
ティア様が“なおクン”の事を聞いてきた。
「なおクンはねぇ、私の大切な……う~ん、ないしょ~」
「リンカ……好きな人がいるの?なおクンがそうなの?」
「えぇ~?ちがうよぉ……好きな人いないよぉ~ティア様はぁ~シリウス様でしょう?」
「な、なに言って……違うわよ。シリウスは幼馴染なの。
リンカこそ、フォルツァは?兄様って言って仲いいじゃない?」
「う~ん??ウィル兄様はウィル兄様だよ」
「カルセドニィは?好きな人に似てるとか言ってなかった?」
ティア様に言われて、カルセドニィ??だれだっけ??
「あ?あぁ??エセオスカー様??やだぁ、あんなタラシ……」
私はティア様の隣に、歩いて移動しようとしていた。
とと……足元がフワフワして……
「きゃっ……」
「危ない……リンカ、は、もう……目が離せませんね」
私は足がもつれて、エティに倒れこんでしまった。
「あ、ありがとう。エティ姉様……」
「もう、このまま、ここにいなさい……ね?」
ふらついた私は、エティ姉様に隣に座るように言われた。
「わーい、エティ姉様のとなり~」
そう言ってエティ姉様の腕に、縋りつくように両腕を絡めた。
「エティばかりずるいわ。リンカ……ユース兄様の事は
どう思っているの?好き?嫌い?どっち??」
ティア様に聞かれて、私は答えた。
「え~?神官長?神官長はぁ……わかんなーい?わかんないけどぉ、今度会ったらぁ、頭突きしてやんよ~」
「リビングストン様は?どう思っているのです?リンカ」
エレン様は、さっきまでは甲高い声で笑っていたのに、
硬い表情をすると、幾分低い声で、身を乗り出す様にして、聞いてきた。
「リビングストン……?アゴヒゲ……エディだぁ?」
私は隣に座っているエティを見つめた。
「エティ姉様ってぇ、エディにそっくりぃ……」
「うむ、エティはリビングストンに瓜二つじゃ。それで、リンカ、リビングストンは好きか?嫌いか?」
大巫女様も、恋バナに参戦だ。でもぉ?何で私の事ばっか??
「う~ん、エディはぁ……ヘン!!急にキスしようとしてぇ、ヘンなの~。付き合っても無いのにぃキスしな~いよね?」
「それは、嫌いっていう事なの?リンカ……」
ティア様が、そう言うと、エティ姉様が何故か悲しそうな顔をしている?眉がさがったよ?
「キライじゃない。アゴヒゲ好き……柔らかいし」
「アゴヒゲが好きなの?意外ね。髭は嫌なんじゃ無かったの?」
「エディのアゴヒゲは柔らかくて好きかも……なんかね~
そばにいるのがいいの……あったかいの……エティも……
あったかいの……」
私はティア様にそう答えながら隣にいるエティ姉様に倒れこんだ。
「リンカ……」
「う、ん……エ、ティねぇ…………」
初めて飲むお酒は美味しくて……楽しくて……
私はエティに倒れこんでそのまま寝てしまった……
「エティ……リンカは?」
「……眠ってしまったようです、ユスティア様」
「初めてのお酒で加減を知らなかったものね……エティ、運んでもらえるかしら?」
「はい、エレン様。それでは、大巫女様、ユスティア様、
失礼いたします」
「側に付いていてね……頼んだわ」
エレンの言葉に、無言で頷くと、エティはリンカを抱きかかえて、部屋へと入って行った。
「リンカ様……」
メリルは、人前であんな風に寝てしまうなんて、お酒ってコワイ……と、思っていた。
エレンは、メリルに先に休む様にと言うと、メリルは両腕を胸の前で交差し礼をして、応接間をあとにした。
あとに残された大巫女ユーフェミア、エレン、ユスティアの三人は、十の鐘が鳴るまでそのまま、飲み続けていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
エティエンヌ……それが今の私の名前……
腹黒い策士のシリウス・パンツァーに女装させられ、男子禁制の居住区でもリンカをすぐ側で守る事が出来る。
それにしても、『感受の巫女』エーレンダニカ様は、何を……一体何を……何かを感じたのだろうか?
リンカの側を離れるなと、部屋で一緒に過ごせなどと……
私がリンカに好意を寄せている事は、ユスティア様も、
ご存知の事なのに……私が何も出来ぬと?
リンカと二人きりになっても、女装している今の私では、
何も出来ぬと……?そうだ、何も出来ないとも……
こんな……女装しているのがエドワード・リビングストンだなどと、リンカに発覚したくない。触れる事も出来ぬと、そう、思っていたのに……
リンカがやたらと、近い。あぁ……う、腕に胸が……
拷問なのか?何と甘く、ツライ責め苦なのだ……
避ける様な態度に、傷ついた顔をしたリンカ……
顔を伏せて、湯浴みに行ってしまった……
湯あみ……
うぅ……いけない……だめだ、想像しては……
私は、今は女性なのだ。同性なんだから、湯浴みごときで、動揺しては……
……?今、精霊の気配が……?リンカに何かあったのだろうか?
ドアを開けるわけにもいかないが、心配だ……無事だろうか?
神経を研ぎ澄ましてみれば、笑い声が??笑っているのだろうか?
今は同性なのだから……いっそ開けてしまおうか……
イヤイヤ……さすがにそれは……あぁ、今私の心の中で、
善と悪が戦っている……
「エティお待たせ~……」
あぁあ、リンカが湯浴みから出て……湯上り……
「!!リ、リ、リンカ……な、な、なんて、格好を……」
透けてる……あちらこちらが透けて……み、見え……
クラクラする……眼福だが、いけない……刺激が強すぎる。
私に似合う??何を言っているのだリンカ……
無理だ……これ以上見ていられない……
私は部屋を出て、応接間にいたエレン様に訴えた。
あの……煽情的な夜衣の上に羽織る物と、普通の寝間着を
用意して欲しいと……アノままでは、同じ部屋になどいられないと……
エレン様は、残念そうなお顔をされたが、
「まぁ、アレではねぇ……。大巫女様もお人が悪い……」
などと呟くと、すぐに寝間着の上に羽織る上着と、透けない普通の寝間着を用意して下さった。私はそれを持って、
リンカの待つ部屋に戻った。
私は手に持っていた上着をリンカの肩にかけると、
浴場に行くことにした。
リンカに声を掛けられ、立ち止まると一緒に浴場に来て、
しゃんぷー、とりーとめんっと、ぼでぃそーぷの使い方を
教えてくれた。リンカと同じ甘い香りがしていた……
リンカが出て行って、一人になると、私は頭から水を被った。何度も、何度も……
火照った心と、身体を冷やす……冷やさなければ……
水を被るだけでは、熱く猛った身体は治まらなかった……
あんな、煽情的な格好で……
「はぁ……ぁ、あぁ……リンカ……」
女装していても、中身は男だ。好きな女の、あんな姿を見て……どうして平静でいられよう……
出来るなら……リンカの体を組み敷いて……
「くぅっ……っぅうぁっ、リ、ンカぁ、あっぁああ……はぁっ……はぁっ……」
はぁ……やってしまった……
十代の若造か……俺は……
形跡が残らないようにしなくては……
私はまた頭から水を被ると、リンカに言われた通り、
しゃんぷー、とりーとめんっと、ぼでぃそーぷを使って
頭と体を磨き上げた。
リンカと同じ香りに、ざわつく心をフォルツァの女装姿を
思い出し……萎えさせた……
冷水を浴び過ぎたか……少し寒気がした。湯に浸かって、
身体を温めると、エレン様に用意してもらった服を着て、
リンカの待つ部屋へと戻った。
少し寒気がして、怠い……リンカと目が合った。
リンカに椅子に座るように促され、動かないように言われた。
「私がやってあげる……気持ちよくしてあげるね……」
「!!リ、リンカ……な、何をしようというのか??」
リンカは、私の髪を拭いて、真っ直ぐで綺麗な髪だと、
褒めてくれた。髪は綺麗でも、私自身はこんなに汚れている。
リンカに対して邪な情欲を抱いているのだ……
エディに私が、エティが似ていると気づいたリンカ……
同一人物だと……気が付かれたかと思ったら、姉か妹かと……天然なのか?鈍過ぎる……絶句していたら、何故だ?
どうして私がリンカを嫌がっているという考えに……
私はリンカを抱き寄せ、頬に口づけした。
髭も無い……嫌がられなかった。それどころか、リンカが、私の頬に……口づけを返してくれた。
あぁ……なんという幸福……しかも、私を姉と慕ってくる……
腕の中で、私に寄り添ってくるリンカ……
可愛い、愛しい、リンカ……
何やら糸を編んで作るミサンガ……リンカの好きな色で、
リンカの為に作ろう……
姉と慕うようになったリンカと私を、エレン様はあきれた様な表情で見ている。今はエティなのだ。
姉としてリンカに付き添うぐらい、なんでもない。
ユスティア様に揶揄られても構うものか……
お酒を飲んだ事が無いというリンカ……
誰に捕まるというのか……
リンカが私を好きだと……
誰よりも……誰よりも、愛しいリンカ……
ユスティア様に邪魔されようと、離しはしない。
離れない……リンカ……愛しい私の……
最近、リビングストンがかわいいです。
フォルツァの扱いがちょっと酷かったですかね?




