表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/59

22.授業に設定はキケンです


 強き者……勇猛果敢にして戦乙女に従う



 聖騎士団・副団長付き『フォルティス隊』の隊長シリウス・パンツァー……彼は、雪の日の空の様な灰色の瞳に、黒に近い濃い藍色の長い髪を高い位置で一つに結わえている。所謂いわゆるポニーテールだ。


長さと言い、質感と言い、まさに馬の尻尾(しっぽ)……


 そんな事を考えていたら、エレン様が御茶を入れながら

ニッコリ微笑んだ。


「リンカ様は容姿が幼い、というより心情が幼くて、可愛らしいのですよ。」



心情が幼い?心が成長していない?幼稚ってこと?

うぅ、憧れのエレン様に幼稚って言われた……



「リンカ様、そうでは無くて……」


エレン様は、言葉を濁した。何だろう?幼稚じゃないって言いたかったんだよね、きっと……。



「……ティア様、シリウス様は、女性に人気がございますよね?」



「エレン?……唐突ですわね。シリウスだけじゃなくて、

フォルツァも人気があるわよ。ここ以外ではね。」



ここでも、人気がございますよ。勇猛果敢な、

『フォルティス隊』ですからね。家格を気にされない者や、それどころではない者もおりますからね。居住区には立ち入らないのが良いでしょうね。」


 ティア様とエレン様、二人のやり取りを聞いて、フォルツァ様は苦笑い、シリウス様は、相変わらずの無表情だ。


「シリウス様も、フォルツァ様も、女性に人気でモテモテなんですね。二人ともイケメンだもんね。」



「イケメン?……人気のお二人ですけど、リンカ様はお二人をどう思います?」



「私?ですか。う~ん、二人とも見た目、格好良いですよね。でも、シリウス様は性格が難しそう……でも、笑った顔は、破壊力有りそうです。フォルツァ様は頼れる兄貴って、感じですかねぇ。」



「ほら!リンカ様は、そういったところが、幼いのですよ……」



ん?どーゆー事?



「そうね、幼いのかもしれないわね。ねぇ、リンカ、二人の事を恋人にしたいとか、思う?」



「え?ティア様、なにを……」



「もしも、よ。例えば、二人のどちらかから、愛を告白されたとして、リンカはどうする?」



「え?そんな事、考えて無かったから、どうする?って

聞かれても……それに、お二人に失礼ですよ。例え話でも私が好きなんて……あるわけ無いですって……」


 絶賛、子供扱い中だしね……

自分で言っても、ダメージがくるわー。



「そんな事ないぞ。リンカは可愛いからな。あと数年してから嫁に貰うのもいいなって、思うぞ。」


 

あと数年、って、それがダメなんじゃ……


「御世辞でも、嬉しいです。フォルツァ様」


シリウス様の様に、スルーで良かったのに、気を使わせてしまって、すみませぇ~ん。




「私、シリウス様のこと……好きです」


 

「ぶふぉっ……げほ、げほっ……」



私の突然の告白に、シリウス様がお茶を吹いた。



「空気読んでも気にしない……マイペースで雰囲気をぶち壊してくれる、勇者様ですもの。それに……」


 あ~綺麗な長い髪……三つ編みしてみたい。

何本も細かく三つ編みして放置して、癖つけてみたい。

恋人とか……なったら、やらせてくれるかなぁ。


「シリウス様に、やらせてほしいです」


あれだけ長いとやりがいがありそう。ふふ~ん……



「リ、リンカ……?な、な、なにぅおぉ?何を言っているのです!」


……?ティア様カミカミですよ?なんか、焦ってます?


「何って、シリウス様の、いじってみたいな、って」



「リンカ?どうしたんだ?まだお前には早いだろう?」


 あれ?フォルツァ様、何だか顔が赤くなって??

シリウス様は放心したように、口を開けたまま固まってるし……



「……はぁ……皆さま、安心してください……。リンカ様が言っているのは、シリウス様の御髪のことです。長くて綺麗な髪を三つ編みしてみたい。いじってみたいと……」


 

 エレン様が混乱している三人……ティア様、フォルツァ様、シリウス様に、そう告げた。あれ?私、言ってなかった?え?髪って主語抜けてた?うわ~やっちゃった。

主語抜けて話が分かんないって、友達に言われてて、注意してたんだけどなぁ……




「……リビングストンも、綺麗な髪をしていてよ」



「……」

 

 そういえば、ティア様の言う通り、アゴヒゲ隊長も綺麗な髪をしていた。

腰まで長さのある、ストレートの茶色の混じった金髪で、

瞳は泡立つエスプレッソみたいな暖かみのある茶色をしていた。


 私の髪は、背中の中ほど、ブラのホックがある辺りの長さで、濡れたカラスの様な黒い髪、自転車に青春をかける漫画のパーマ先輩の様なワカメ髪だ。

中途半端なウェーブの髪にコンプレックスがある私は、

サラサラストレートな長い髪を見ると、無性にいじってみたくなるのだ。

手指でいたら、どんな手触りだろう?とか、細かい三つ編みで、ウェーブを着けて仲間にしてみたくなるのだった。



「フォルクスも見事な長い巻き毛をしていたな……」


シリウス様がそう言うと、ティア様が神官長の事を言い出した。



「あら?そんな事言ったら、ユースお兄様だって、長くて綺麗な髪をしているわよ」



そんな事をティア様が言うので、神官長の事を考えて、

また思い出してしまった。しかも、髪の毛の話なんてしていたから神官長の姿をまざまざと思い浮かべてしまった。


いつも片側で軽く結んで肩から前に流している銀の髪……

神官のくせに、意外に筋肉質だったな……なんて、余計な事まで思い出してしまった。



「リンカ?どうかしたの?顔が赤いわ……」



「ティア様、私は、別に……」


 エレン様は、口を閉じ、人差し指を口の前にあてて、

『シー』のポーズだ。ありがとうございます。

エレン様の、優しさが身にしみます……



「……リビングストンなら、リンカのいい様にやらせるんじゃないか?俺は……無理だが……」


 復活したシリウス様だが、何故か死んだ魚の様な眼をしている。髪の毛いじられるの、嫌なんですね……ザンネンです。



「リビングストン様……かぁ……」


 三つ編みしても、アゴヒゲが可愛さを邪魔するよなぁ。

何でアゴヒゲ生やしてるんだろう……?嫌いじゃないけど髭……

柔らかいのかな?サワサワしてみたいかも……

やだなぁ、こんなところが幼い?のかな……






◇◇◇◇◇◇◇◇







 お茶休憩が終わって、子供でも知ってる事講座は再開された。


 私は休憩前に気になった、時間についてシリウス様に

教えてもらうことにした。

時間については、元いた世界と同様で、一日は二十四時間、半日は十二時間で一時間は二刻、一刻が三十分だとすると、半刻は十五分……それ以上細かい時間は重要では無い様だ。


 朝の六時になると、鐘が六回鳴り響き、七時には七回、

八時には八回という風に、鐘が鳴り、十二時には十二回鳴るが、それからは一時間ごとに一回、二回、三回……と、

鐘の鳴る回数は増えて行き、夜の八時に八回鳴った後は、

翌朝の六時になるまでは鐘が鳴る事はないそうだ。


 そんな仕掛けが開発されているなら、時計もあるのだろうか?早速、聞いてみる事にした。



「シリウス先生、質問があります!!」



「……(センセイ?)なんだ?」



「時計はあるのでしょうか?」



「時計とは、どういったものだ?」



 質問を質問で返すなんて、シリウス先生は仕方が無い人だ……

私は紙に、少し歪んだ円を描き、円の線上に四本の線を

書いた。上から12、3、6、9と数字を書き入れ、説明した。

数字の表示は同じ様で、シリウス先生はすぐに理解された。



「時計と言うのか……時刻みの塔に似たものがあるな」



「シリウス先生、時刻みの塔と言うのは、何ですか?」



「自動で鐘を鳴らす装置だ……ところでリンカ、センセイってなんだ?」



「はい、先生。先生と言うのは、教えてくれる人の事です。常識を教えてくれる、シリウス様、フォルツァ様も、

私にとっては、先生です」


 私は満面の笑みを浮かべながら、答えた。

シリウス様は、何故か眉間を手で押さえながら、深く溜め息を吐いていた。


「師匠みたいなものか……」


 シリウス様は、この設定はお気に召さなかったようだ。フォルツァ様は喜んでいるみたいだけどね……。ティア様とエレン様は、私達のやり取りを楽しそうに見ていた。


 時計は、公的な建物、宗教施設など、広く人々に知らせる意味で設置されてはいるものの、個人で所有している事は少なく、かなりの富裕層、有力貴族の好事家だけらしい。小さい物はまだ、懐中時計ですら、出回っていないらしい……




 そういえば、この世界に季節ってあるのかな?

暦の事について聴いたのに、忘れていた。



「フォルツァ様、季節ってありますか?」



「リンカ……俺はセンセイって呼んでくれないのか?」



「……フォルツァ先生、季節があるのか、教えて下さい。」



な?何だ、やたらと可愛いぞ?

「ぐっ……キセツが何かわからん。詳しく頼む」


 フォルツァは、自分を先生と呼ぶリンカの雰囲気に、

訳の分からない感情が沸き、動揺していた。



「季節と言うのは、私がいた国では春夏秋冬、四つの季節があって、春は芽吹きの季節、夏は灼ける様な暑さ、秋は実りの季節、冬は寒くて家から出たくない、です。フォルツァ先生」



家から出なくていい、出さない、出したくない……

「うぐぐっ……なるほど、季節ね……」



 何故か視線を合わそうとせず、やたらと髪を掻き上げて、フォルツァ様が説明してくれた。


この世界にも四季があり、三月から五月が春でフリューリンク、六月から八月が夏でゾンマー、九月から十一月が秋でオルティス、十二月から二月が冬でヴィンターと言う。


 今は三月末のはずだから、春になってから一月ひとつきといったところか……

それにしても、役の設定があると、楽しく勉強できるかな?と思ったけど、先生と生徒という設定は、もう終わらせた方がいいみたい……。


 シリウス様、フォルツァ様、二人ともお疲れのご様子。

詰込み授業で、私もお疲れモードだ。


余裕があるのは、楽しそうなティア様とエレン様のお二人だけ……

一度に詰め込んでも、覚えられないし、今日はもう終了して、明日にしようかなぁ……



精霊とアゴヒゲ隊長、出せませんでした。

次回こそ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ