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18.神官長の贈りもの


 ようやくありつけた朝食は、味は微妙だったけど、皆で食べる事が出来て、楽しかった。食事が終わると、食器をワゴンに戻して、入ってきた時と同じ大きな、両開きのドアから、私達は食堂を出た。


 誰ともすれ違う事も無く、通路を進んで、昇降機の前に着いた。

部屋へはまた、迷路の様な複雑なルートで向かうのかと思ったら、湖底から出現した透明の通路が消えて、外部と遮断されている時は、昇降機を使って居住棟への出入りが出来ると、エレンさんが教えてくれた。

逆に、通路が出ている時は、使えるけど難しい?とのことだ。


 それにしても、こんなに早く部屋に着くなんて……

あぁ、中に入ったら、アレが待っている。

神官長にもらった、謎の物体が……

使ってくれ、なんて……何が入っているんだろう……

こんなに悩ませて、次会ったらまた頭突きしてやる!!


 メリルが開けた扉を、ティア様を先頭に部屋の中に入っていく……私の足取りは重かった。



「リ~ンカ。わかっていて?わかるわよね?早く開けて見せるのですわ」



 ティア様は、眼をキラキラさせながら、満面の笑みを浮かべ、楽しそうです。まるで、獲物を捕らえる狩人みたいな眼で、ジリジリ迫ってきています。逃げられません。


 私は部屋に置いてあったマイバッグに、無造作に放り込んでいた、小さな木箱をそっと、取り出した。今は、青い悪魔になってはいけない。

じゃじゃーん、とか変な擬音は無しだ。現実逃避は……したいけど、無しだ。



「何が入っているのかしら?ユース兄様は何か言っていて?」



「中身については何も、大したものでは無い、使えばよいと、それだけ言っていました」



「まぁあ!お兄様ったら、やっぱり……」



 ティア様は、目を見開いて、片手で口を塞いでいた。

すっかり、お嬢様口調ですね。流石皇女様は違いますね。

私も、付き添いらしい言葉遣いを目指しますね。



「……開けますね……」


 はぁ、もう、早く済まそう……



「待って!!何が入ってるか賭けましょう。当てた人は願いを一つ叶えてもらえるの。それでいいかしら……?きっと、中に入っているのは、指輪だと思うわ」



「いいえ、きっと首飾りですよ。リンカ様の吸い付きたくなるような首筋に、似合う首飾りです」


 メリル?な、なんか言い方がエロいよ?



「ふ……二人とも考えが浅いですね。ユースヴェルク様ですよ?きっと、縛り付けたいはず……足輪か、腕輪に決まってます」



 エレンさ~ん、それ、神官長(確かにSっぽいけど)変態?変態って言ってるから!!さりげなく二種類言ってるし……



「待ったぁ~!待つのじゃぁ~~」



 突然部屋のドアが開いて、大巫女ユーフェミア様が乱入してきた。



「楽しそうな事をして……我も仲間にいれるのじゃ。ユースがリンカに贈った物が何か当てるのじゃな?そんなの、木箱といえば、指輪じゃろ?」



「小母様、指環は私がもう言っていますわ。首飾と腕輪も、ダメですわよ」


 エレンさん、足輪も言ってるよ?ティア様、チェック漏れですよ。


「ぬ?むぅ……ん~……見えた!耳飾りじゃ!輪になって、緑色の宝石いしが付いておる……」



 大巫女様には、透視能力があるのだろうか?

願いが一つ叶うのか……


「開封していないから、私も参戦していいですよね?食べ物、は無い?だろうし、う~ん……頭…毛…髪の毛……

髪飾りで!!髪飾りにします」


 私を囲んで、箱を開けるのを、身を乗りだしそうにしながら、待っている。うぅ、なんか緊張してきたよ……。私は、そっと、箱の蓋を右手で掴んで、落とさない様に注意しながら開いた。


箱の真ん中に、柔らかな布で覆われた、緑の宝石いしが付いた輪というより、筒状になった物が二つ入っていた。



「これは?何でしょう?」


私は箱に入っていたそれが、何かわからなかった。



「あ~……髪飾りですね。取り分けた髪の束に嵌めて使うものです」


エレンさんが教えてくれた。



「緑色の宝石(いし)が付いておったのは、当たっておったがのぉ……残念じゃ」



「お兄様ったら、瞳の色を使った髪飾りをリンカに贈ったのね」



「ふむ、ユースにしては、気が利いておるのぉ。使えないものを下げ渡したなどと、言い訳しておったがの」



「照れ隠しでしょう?ユースヴェルク様ですもの」



「ヘタレ……」ボソっ


 傍観していた大巫女様の側仕えの方が思わずといった感じで呟くと、皆さん、無言で頷いている。


 うふふふ、おほほ……


って、なんか周りが楽しそうですが、忘れてませんか?

私、忘れていませんからね~。


「当てた人は、願いを叶えてもらえるのですよね?」


 私は、言い出しっぺのティア様を見て、微笑んだ。



「え?えぇ。出来る範囲でね。リンカの願い事って、

何ですの?」



「私の願い、それは……」







◇◇◇◇◇◇◇◇





 神官長の贈りものは何だ!……で、盛り上がってしまって、荷解きが全然終わっていない。応接室に積んであった箱の内、子供達への贈りものは、大巫女様の側仕えのシンディさんが抱えて部屋を退出していった。細いのに力があるなぁ……

あれ……?箱の数が増えてる?

何で?と、思ったら、大巫女ユーフェミア様が私に用意してくれた日用品とか、着替えだった。



「着換えやら何やら、無いと困るじゃろ?気の利かないユースに代わって用意したのじゃ。他に足り無い物が有れば遠慮なく言うのじゃ。良いな?それから、願いの件も手配するからしばし待つのじゃ」



私はユーフェミア様に礼を言うと、応接室の奥にある扉の一つを開けて中に入った。神官長の執務室の奥にあった部屋と同じ様に、応接室は共同の、談話室の様になっていて、奥に同じ様なドアが五つあった。

同じ宗教施設だから、造りが似ているのだろうか?


 私は、メリルに手伝ってもらいながら、ユーフェミア様から頂いた着替えやら何やらが、入っている箱を部屋へと運んだ。

箱は全部で、三箱あった。メリルと二人で、箱の中身を出して、着替えをクローゼットに仕舞ったりしながら、

気になっていた事を聞いてみた。


 メリルの話しによると、食堂で顔を合わせた子供たちは、事情があって預けられていたり、身寄りのない子供達で、塔にある孤児院で育てられている。

メリルもヨルズも、塔の孤児院で育ったという……


 女の子が多いのは、男の子は労働力として育てられる場合が多く、また宗教施設な事もあり巫女候補として女の子を引き受ける事が多いからだという。


 女子も男子も、十二歳になると、巫女としての能力を調べられて、かんなぎとして神の言葉を聴いたり、神の依代となる能力が有ると巫女みこ巫覡ふげきとして、その能力を伸ばすよう育てられる。


能力の無い物は、女子であっても神官見習いとして塔の中で働きながら勉強するか、メリルやヨルズの様に、神殿で働きながら勉強したり、側仕えになったりするそうだ。


 塔にいる女子の神官見習いは、塔で過ごしている貴族令嬢達の世話係として働き、中には気に入られて、侍女として令嬢と共に、塔から出ていく者もいるのだとか……


 花嫁修業中の令嬢に間違いがあってはならない。

令嬢達が居る南側は、男子禁制になっているとの事だ。


食事は各自部屋で神官見習いに給仕されて取るので、食堂に来ることは無い。

どちらかと言えば、来ないでほしい……そう、メリルは呟いた。

 

 メリルの闇を覗いてしまったかも知れない……


まだ、小さいのに、いろいろあるんだね。

私はメリルをギュッて抱きしめると、そっと頭を撫でた。


突然の事に驚いたのか、メリルは、一瞬身を固くしたが、

暫くの間、されるがままになっていたが、やがて、



「リンカ様……早く片づけませんと、何も出来ませんよ」



「それは、困るね。よし、ちゃっちゃとやりましょう」



 この後の予定があるのだ。私達は、荷解き作業を再開した。いくつかの箱から、同じ様な貫頭衣ばかり出てきた。

着心地は悪くないし、体型も隠せるし、ま、いっか……


しか~し、納得いかないことがある。なぜだろう?

下着とか、多分寝間着?とか……スケスケなのはなぜ?

微妙にエロなのは、だれ得?

ユーフェミア様の趣味なのだろうか……




 二人無言で作業して、どうにか片付ける事が出来た。

何だか、塔でこのまま暮らせそうだ。


 神官長から貰った髪飾りは、小さくても本物の宝石が付いていた。

庶民の私が普段使うのは恐れ多い。

いざという時に、使わせてもらおう……


そんな時が来るかは、わからないけどね。




神官長が贈った物は、まるで用意されていたようですが、

実際は、出会って間が無いですから、下げ渡したもので

間違いないです。誰かからの貰いものだったのでしょうかね?


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