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9.お風呂は湯帷子で

読んでいただいて、ありがとうございます。


お風呂回パート1です。

きゃっきゃ、うふふ度は低いです。



 濃いベージュの貫頭衣を着た、ヨルズという少年に案内されて入った処は、思ったより広い部屋だった。

二十畳ぐらいのリビングといったところか……

大きな暖炉があり、その前にはテーブルと、気持ちよくうたた寝が出来そうな、大きなソファーが置いてあった。


その奥には、同じ様な扉が並んでいて、その内の一つに案内されると、そこには、机と椅子のセットに、ベッドが設置された、落ち着いた雰囲気の部屋があった。


ビジネスホテルの様な、シンプルな造りの部屋に、机の引き出しの中には、()()が入っているのだろうか?などと、どうでもいい事をリンカは考えていた。


私の世話をしてくれるという、灰色を混ぜたような、桃色の髪をした少女を見て、あぁ、此処は異世界だったと、しみじみ思った。



夕餉(ゆうげ)までの間に、湯あみを致しましょう、リンカ様」 



青灰色(スモークブルー)の瞳に灰桃色(スモークピンク)の髪を、頭の後ろで三つ編みにした、メリルという名前の少女は、人懐こい笑顔を浮かべ、部屋の奥にある、黒い金具で四角く縁取られた壁を、右手で軽く押すのだった。


音も無く開いた壁の中……三畳程度の空間の片側には、

洗面台とトイレがあった。

ドアが無く、仕切られているだけなのにクサくない……


確認してみると、水洗トイレだった。

それだけでなく、柔らかい革の様な素材で出来た、握る時の力加減で、出す量が調整できるハンドウォッシュレット(異世界仕様)的な物が、設置されていた。

過去に、この世界を訪れた迷い人の恩恵だろうか?私は心の中で合掌していた。アリガタヤ、アリガタヤ……


「清潔、衛生、ばんざーい!ヒヤッハー!」


テンションが高くなった私に、生温(なまぬる)い視線を向けたメリルは、何も見なかったような顔をすると、トイレと洗面台の、反対側の棚に置いてあるカゴを指した。


「このカゴに、脱いだものを入れてください。洗濯されて返ってきます」


メリルがそう教えてくれた。


「リンカ様のお召し物は、変わっていますねぇ」


「この上着はね、ポケットが沢山あって、いろんな物が

入れられるんだよ」


お気に入りのミリタリー調のジャケットをメリルに説明しながら、ポケットに入れていたものを思い出していた。


そういえば、(あわただ)しくて確かめていなかった……

見られたらダメだよね?


後で確認する事に決めて、取りあえず便利なアレを取り出すことにした。


「じゃじゃ~ん、コンパクトマイバッグ~」


ついつい、青い悪魔の口調が出てしまった。


「部屋に持ち帰りたいから、この袋に入れちゃうね」


そう言うとウェストバッグと、着ていた服をポイポイ脱いで、その袋に入れた。

(下着は……後で自分で洗おう、うん、そうしよう)



 一糸(まと)わぬ姿になると、女の子同士、裸のつきあいだー!と、ばかりに棚に置いてあった、厚手の布で前を隠すと、そのまま奥にあるお風呂に、向かおうとした私に、メリルは小さな悲鳴をあげていた。


「リンカ様!!湯帷子(ゆかたびら)をお召しください!」


リンカは慌てた様子のメリルに、長方形の布を頭から被せられた。


透けそうに薄い湯帷子は、肩の部分を紐で結んだ二枚の布で出来ていた。

両サイドには、お湯に入っても、めくれない様に結ぶ紐が、三か所付いていた。



「横の紐を結びますね」


黙々とこなす目の前の少女に、リンカは猫なで声でおねだりをはじめた。


「ねぇ、メリルぅ~」


「何でしょう?リンカ様」


「勝手がわからないから一緒に入ろう……でね、洗いっこしようよ!ね?いいよね?だからメリルも、脱いで、脱いで!」


「洗いっこ?致しません……」


一刀両断、バッサリ断られた……


「一緒に湯あみは出来ませんが、腕によりをかけて磨かせていただきますね。うふふ……」


そうして……あれよあれよという間に、隅々まで磨かれてしまいました、とさ……





 用意されていた着替えは、メリルが着ている貫頭衣と同じデザインだった。

神殿の制服みたいなものなのかな?


肌触りのいい布が重なり合い、重たそうな見た目に反して、軽くて動きやすい衣装に(リアルコスプレや~)と、

凹んでいた事も忘れた。



「お疲れになりましたか?何かお飲み物をお持ち致しますね」


そう言ってメリルが退出すると、私はマイバッグから脱いだ上着と、貴重品を入れていたウエストバッグを取り出した。

キャリーバッグもあったら、着替えに苦労しなかったのに……


こんな時で無かったら、初ヒモパンに(セクシーだぜぇ)ってテンションが上がったかもしれない。

胸を寄せる事が出来る、前を絞めるタイプのビスチェに

(谷間出来たぜぇ~)って、喜んだ事だろう。


今は歩いている時に紐が切れたり、結び目が解けたらどうしようって?不安しかない。 


初ヒモパンに興奮して話がそれてしまった……って、変態か!



 貴重品を入れたウエストバッグにはパスポートとお財布、スマートフォン、ソーラー式充電池、イタリアの下宿先の連絡先……


スマホの電源を入れても電波は通じ無かった。

あ・た・り・ま・え……ですよねぇ~

さて、気を取り直して確認の続きを……

 

お気に入りのミリタリー調のジャケットの左右にある大きなポケットには、機内で読むつもりだった本が三冊。

内側にある隠しポケットには便利グッズ、非常食……


この世界で、元の世界の服は変わっていて、すごく目立つ……盗まれたり、取り上げられたりするかもしれない。

ポケットから中身を取り出して、必要な物、使えそうな物は出来るだけ小さくしてウエストバッグに詰め替えた。


暫くするとドアを叩く音がして、メリルが入って来た。


「夕餉の準備が出来ておりますが、食堂に行かれますか?

お部屋でお取りになることも出来ますが……」


「一人で食べるのは嫌い。食堂でメリルと、ヨルズも、一緒に食べよう?其処にいるんでしょ?」


ドアの横に立っている、ヨルズに声をかけた。


「では、食堂にご案内いたします」


メリルは満面の笑みを浮かべて私を案内してくれた。


 食事は、決して豪華なものでは無かったけど神官見習いや巫女見習いの子供たちと、一緒に摂った食事は、賑やかで楽しかった。



 食事を終えて部屋に戻ると、メリルが御茶を入れてくれた。

ほっと一息つくと、今日一日の目まぐるしい出来事に、疲れたぁ……と、つい言葉に出てしまった。


疲れた時はゆっくりお風呂だ……


メリルに、この後入浴出来るかどうか聞くと、いつでも好きな時に入浴出来ると教えてくれた。

また手伝います、と言われたが、一人で入りたいから、

着替えの用意だけお願いした。



「御用があれば、呼び鈴を鳴らして下さいませ」


そう言って、メリルが部屋を出て行った。



 一人になった私はベッドに寝転がって、ウエストバッグから本を出すと、パラパラと見ていた。


私はこれからどうなるのか?どうすればいいのか?気になって本を読むほどの余裕は無かった。


この国に……神殿(ここ)にいていいのかな……?

そんな事を考えていたらいつの間にか眠っていた。



次回はお風呂パート2です。

しかも、アノ人のターン……

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