プロローグ
―――春、入学式の日。俺は運命と出会った。
校門の前に設置された舞台の上で舞い散る桜が舞台の上で演じる彼女に彩りを加えていた。その姿に見入った。
部活なんてものに興味はなかったし、早く帰っていつもの灰色の日常に身をうずめよう。そう思っていたときだった。
春風で揺れる彼女の髪、耳に残る彼女の透き通った声。
彼女は一瞬にして俺の中に居ついた。
彼女のことを知りたい。
その欲求だけが心の中を支配した。
『そんな急がないでよく考えろよ。あんな可愛い子がお前なんかを相手にするわけないだろ。』
頭の中で誰かが囁く。
『いいから見なかったことにするんだ。その場の情で動いても後悔するだけだ。それにあの部活だぞ。灰色を生きるお前には一生縁がない部活じゃないか。頭冷やせって。』
それでも…俺は…
ずっと自分を変えたいと思っていた。
でもそれは簡単なことじゃなくて。いつからか現実の自分を否定していた。
容姿も成績も平凡。秀でた能力もない。唯一、人より秀でたものなんて中学生の頃からずっと愛好していたアニメやライトノベル、漫画、ゲームなどのいわゆる『二次元』に関する知識のみ。
この知識を持っているだけじゃこの『現実』という名の無理ゲーには太刀打ちできない。
だから、自分を変えたいだなんて考えはいつの間にか捨てていた。―――いや、捨てるしかなかったのかもしれない。
でも……
再び舞台の上で今もなお演じ続けている彼女に目を向ける。
今回だけ…今回だけだから…
凄く俗な理由ではあるけれど。
絶対に途中で投げ出したりなんかしない!どんなに辛くても耐え抜いて見せる!
そして…いつか…
―――彼女の隣に立ちたい―――
作品としては三作品目となります!
他の二作品共々よろしくお願いします。