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ようこそ。
お越しくださり、嬉しいです。(*´з`)<ヤッタァー!
ではでは~ またあとがきで。
シャボン玉がしたい…… 何故だろう?
スナジリア島の暗闇に閃光が走った。
星がちらほらと散見できる夜空に一羽の『鷹』が光の残像を残しながら飛翔する。
正体は六縁機が一人、麓孫が使役する全長6メートルはあろう『弐鷹』のその機体である。
その身に通常では目に掛けることすら叶わない、軍事機密マテリアルを素材とした合成装甲を纏い、風切音すらさらに細かく切り刻みそうなほど鋭利でありながら、どこか流線型を思わせるそのシルエットは夜闇の中を超高速で動くために確認することすらできない。
そして驚くほど静かに空を飛ぶのだ。
戦闘機が離着陸の際に発する体を揺さぶられるような音と振動や飛行中のような爆音は皆無である。
過ぎ去った後に残すものはその瞳から発せられる赤色ライトの残像線とHBの鉛筆で静謐に引いたような風を切る音だけである。
その美しい空の支配者は静かに、だが確実に追い込まれていた。
鷹の背後から何かが同じ飛翔速度で追随する。それはまるで意思を持つ雲か霞のようなものだった。それも確認できるだけで5つある。その正体不明の追尾体は夜空を這う蛇を思わせる動きを見せ、行き止まりなどあるはずもない空中で鷹をどんどん追い込んでいく。
鷹が身を翻し、羽を折りたたみ、交差して行き場を閉ざす追尾飛翔体の間を縫って避けてまた羽を広げ、踊るように急行降下したと思えば手首を軽く返すように急上昇を図った。
その次の瞬間、後尾から鷹がフレアを放ち、赤外線センサによるものと思しきその追跡を欺瞞せしめようと攻勢に出た。
だが反抗虚しく、用いたデコイはなんの意味も成さない結果に終わった。
フレアは光波帯域(主として赤外線、紫外線)を目標とし、誘惑と飽和を任務とする使い捨て型アクティブ・デコイである。その主として赤外線ホーミング誘導ミサイルを回避するために多々用いられるものではあるのだが、
目標が赤外線を用いていないのならなんの意味もないのだ。
では誰が操っている?
知れたこと……。麓孫は苦虫を噛んだように、しかしどこか諦めを帯びた表情で微笑した。
夜のスナジリア島を己の運動性能を縁機との連結により極限まで高めた脚力をもって駆ける。後に追いつく者はいない…… はずだった……。
麓孫は右肩の負傷箇所を左手で押さえながらすぐ後ろを振り返る。
男がいた。
古肚がいた。
敵からだけでなく、味方にすら畏れを抱かせる『伍煙草の古肚』が、そこにいた。
《問:送レ*上脳▼下脳//“ジッキン=ゲン”損傷・被害状況ヲ報告!》
《解答:感アリ*下脳▼上脳//装甲侵度49% 右翼ノ動作確認完了 左翼ノ動作確認実行中・・・ スキャン・・・ 右翼侵度81% 左翼侵度74%を検出》
《問:重ネテ送レ*上脳▼下脳//平タク言ウト?》
《解答:感アリ*下脳▼上脳//カナリ マズイデス》
《上脳指令:*//オ前ニハ後デ他人ノ慰メ方ヲ教エテヤル》
《下脳受領:*//アナタハ人間デハアリマセンヨ(笑)》
(笑)って……。どこでそんな表現方法を覚えたのか問い質したいが今はそれどころではない。
「古肚、なぜだ!?」
麓孫が叫ぶ。怒りか? 興奮か? 悲しみか? 寂しさか? 自分でもわからない。
「……」
古肚は答えない。余計に麓孫はわからなくなる。
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古肚と麓孫はスナジリア島に着いたその日、島に存在する毒ガス工場の様子を見に島の頂上まで足を運んだ。
毒ガスの種類は血液剤・催涙剤・糜爛剤・嘔吐剤などさまざまであり、島では万一のための防衛用機械兵が巡回していた。
ほとんどの住民は島外に避難しており、ここにいるのは他所から工場運営のために招き入れた中東の地域に住む“チナ人”がほとんどだった。彼らの境遇を考えればなぜここに送り込まれたかも見当がつく。
そして運命の時を迎える。
その日の夜のことだ。古肚は麓孫を呼び出し周辺の哨戒を命令した。
「この辺りは入島の際に一通り探ったが必要なのか?」と尋ねると古肚は無言で頷いた。
そこで不思議に思ったが、次の瞬間には自分の油断と侮りを恥じた。
これはれっきとした作戦、任務なのだ。だとすれば念には念をいれるのが定石、いや作戦を成功させるには必須、義務なのだ。
それを一瞬でも怠った自分はやはり古肚の足元にも及ばぬ若造なのだと痛感した。
それもあってか一度探ったところももう一度念入りに調べ、どんな違和感も見過ごすまいといつにも増して力を入れた。
だから、油断など、隙など、一切なかった。ないはずだった。
麓孫の右肩を何かが貫いた。
「「「「「「「「「 ッッッッッッ!!!!??????」」」」」」」」」」」」」
声にならない声が濁流のように湧き上がってくる。
一瞬なにが起こったか分からなかった。
背後から右肩に感じたのは痛みというよりも、むしろ火傷のときに感じる焦熱感を彷彿とさせた。
いや、待て……。『背後から』だと?
そんなことはありえない。探索・哨戒中の麓孫の五感はこの上ないほど鋭利に研ぎ澄まされ、全ての異物、異変を察知しうる領域にあったはずだ。なら、その自分の“背後に”まわり、あまつさえ攻撃まで仕掛ける事のできる者など存在するのか?
六縁機が一角の『弐鷹』であるぞ?
一つの戦場を支配しうる力を持った、この俺だぞ?
怒りが沸点を超えた。理由は単純。
敵はわざと肩を狙ったことが明白だからだ。
あれだけの潜伏スキルを持ち合わせるのなら、肩など狙わなくとも殺そうと思えば頭を狙えたのだから。だからこそ憤るのだ。
「何者だッッッ!?」
麓孫は力いっぱいに叫び、攻撃者に向け怒りをぶちまけた。返答はない……。
いや、待て。目の前の木立の間から何者かが…… 一体、だ、れ……。
時が止まった。
そして麓孫がその場面において、いやどの場面においても絶対に出てくるはずのない名前を呟いた。
ウソだ、ウソだウソだ。ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだ…… ウソだ!
「ふる、はら……?」
古肚は何を言うともなくただ煙草の煙を燻らせた。
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麓孫は逃げる内に本土にまでかかる橋のところまで来ていた。
逃走中にも行われた再三の攻撃により腿をケガし、もはや走ることすら叶わない麓孫は橋の中腹の辺りまで来てとうとう力尽き、倒れた。古肚がゆっくりと近づいてくる。
「なぜだ…… 」
返答はない。
「どうしてなんだ…… 」
返答はない。
「くッッッ! なんでだっツってんだよ!!!!!」
叫んだ。返答はやはりない。かに思われた矢先――。
《問:解答推奨*伍番機▼弐番機//煙草ト鷹ノ共通点ハ何ダト思ウ?》
不躾に投げつけられた質問。何かが、麓孫の中で、キレた。
「くッッッッッ!! 答えろオオオおおオおオオオオオおオオおおォォオおォォォお!!!!!」
麓孫は、おそらく、いや間違いなく、初めて心の底から叫び、涙を流した。
次の瞬間、衝撃波が辺りに轟音と橋の崩落音を響かせた。
麓孫は海の中に墜ちていった。意識が遠のく。夜の海の静けさの中に麓孫の形は溶けていった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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男の娘って、不思議だ…… ( ´⊿`)y-~~