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茫漠のジッキン=ゲン  作者: 大柄 仁
収束
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《上脳指令:*//“固有加護”ノ付与》

《下脳受領:*//“加護”ノ展開ヲ確認》

《上脳指令:*//“エネルギー放出”ヲ応用接続/反響探知/初目ヲ探セ!》

《下脳受領:*//反響ヲ確認/該当者ナシ》


 麓孫は体の中の電磁波を増幅させ放射する事で反響探知ソナーを行い人間や機械などの位置を把握する事ができる。だが、その真価が発揮される事はなかった。


 現在、時刻は深夜を回っている。


 初目が行方をくらました。林寺らと共に拠点内を聞きまわったが、わかった事は機械兵たちが二度と侵入してこないよう対策するため非常時の避難経路を通り、出口のある1㎞以上先の廃墟まで赴いていた事だった。同行していたフロッツォたちが言うには彼女は自分たちよりも早めに切り上げ、ここに戻ったという。ならなぜ彼女は行方知れずなのか。


「林寺…… 他に彼女が赴きそうな場所はあるか?」

「いや…… まず、あいつが自分で自発的に姿を消したなんて事はないと思う。だから……」


「誘拐されたって? 誰がなんのために!?」ナターシャが林寺の考えに疑問を呈した。

「落ち着け。落ち着くんじゃ。外を歩きまわっとる事だって考えられる。そう決めつけるのは早計じゃ」


シルクがそう2人を制する。


「そうね。とりあえず探すしかないわ」波多野が話をもう一度整理するように、皆に言い含める。

《麓孫殿、周囲の捜索を行いましたが今のところ発見には至っておりません》クレヴァーからの経過報告が電脳を通じて上がってくる。


《わかった…… そのまま捜索を続けてくれ》麓孫がそう応答する。


 その時だった。麓孫の嗅覚に反応があった。この感覚を彼は知っている。今でも覚えているこの感覚。なんとも甘ったるいこのニオイを、彼は、知っている。


 縁機同士ではまま使われる暗号通信が存在する。麓孫は届いた通信メッセージフォルダを開こうとして、敵に盗聴されても内容が看破されぬようそのメッセージにはスクランブル処理が施されている事に気づいた。その信号を己の中で機械的に解析している自分と同時に、どこまでも困惑している自分がいる事に気づけたのは己自身の両の手が怯えた小動物のように震えている事を自覚したからである。


 時が止まった。そして麓孫がその場面において最も出てきて欲しくない名前を呟いた。ウソだ、ウソだウソだ。ウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだウソだ…… ウソだ!


「ふる、はら……?」

《女を、返し、て欲しいか? ならば我が、元へ来い》古肚の声は変わっていなかった。そして取ってつけたように最後に添えた言葉はもう何度も聞いたフレーズだった。


《問:解答推奨*伍番機▼弐番機//煙草ト鷹ノ共通点ハ何ダト思ウ?》




 時を同じくして、駿河八甲国《大総司令府・中央八甲部》の最奥にある広々とした会議室に召集された7人は此度の議題について話し合っていた。駿河八甲国は軍部が議会・裁判所を掌握した軍事政権のため、その色合いは強く、その場の全員が軍服を着用している。といっても彼らのそれは一般のグレーや焦げ茶を基調とした物ではなく、赤に金の刺繍とド派手な物だった。


「さてさて、そろそろ結論を出さねばいけませんねぇ」おおらかな口調でそう言った髭面の初老の男は《冷那びえな コツジ》だった。


「と言ってもねえ…… 冷那中将。答えはとっくに出ているものと思うがね」

「そうですね。ではでは皆さんの意見を聞いてから、まとめに入りましょう。最善の方法をね。ねえ、蝋刻ろうこくさん?」冷那は先ほど自分に話しかけてきた大太りの男にそう尋ねた。


「まあ、『人形兵』の可能性を開く材料としては惜しい存在ですが、あとからどうとでもなりますしね」蝋刻=R=クランジーはそう答えた。

「傾国は現在、再建の途上にあり、条件付ながら駿河八甲国との正式な終戦も望んでいる。我々も戦争により甚大な被害を受け、終戦後の現在も復興の最中にある。そんな中で休戦中の我々が『協定破り』のようなマネはできんしなぁ」そうため息まじりに言ったのは顔にアザのある禿頭の男《佛却ぶっきゃくボウセ》だった。


「ならば、“六縁機の休止及び封印”という協定通りにする他あるまい……」顎鬚を触った後に眼鏡をクイっとあげる所作を見せた《Kナート》という老人はそう言った。


「そうだね、やはりそうすべきだね」冷那の口調はやはりおおらかで穏やかだった。

 他の2人は何も言わずにただ押し黙っている。冷那はその場に流れる考えを総計した結果を言葉にした。


「それでは休戦協定に基づきスナジリア島にいる2体の縁機の即時殲滅ということで……」

「やはり爆弾か? ならどのような物を使うとしようか? それともミサイルか?」佛却は興奮ぎみにそのような事を言い放った。


「あの島には確か、島民が生き残っているが?」先ほどまで言葉を発しなかった、この場では一番若い男がそう提言した。顔をしかめた様子からこの結果には不服ようだ。

「もう少し議論を重ねるべきでは? これではあまりに短絡的だ!」


「これは皆の総意だよ。若人の君にはまだちょっとむつかしい問題だったかな?」Kナートは馬鹿にするような言いぐさだった。

「っ……!」


「島民の事は気にする必要はないんじゃないかな? 島民たって『アレ』でしょ? 使い捨てが目的なんだからさ。まあもったいないけど、死んでも代わりはいるから大丈夫だよ」


 冷那の口調はなお穏やかなものだった。


「では、なるべく苦しませずにヤッてやるのがこの場合の人道的精神というヤツかな?」蝋刻の言葉に会場ではドッと笑いが起きた。



 いつまでもその笑い声が絶える事はなかった。




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