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茫漠のジッキン=ゲン  作者: 大柄 仁
出会い
3/50

ようこそ。

お越しくださり、ありがとうございます。(●^曲^●)


より多くの人からチヤホヤされt…… 笑顔を引き出したい!!!!!!!

 甲歴2003年。生産力で優越する傾国に対して、量より質で対抗することを目標とした駿河八甲国、この二国による此度の『ラン・チナ問題』への介入から始まった戦争は甲歴1990年の勃発時よりもうすでに13年という歳月が費やされていた。

 

 他の追随を許さない生産力を抱える傾国。

 ただ、かの国も全てを戦争にまわした事で深刻な食糧・資源不足に陥っていた。戦争中は強大な戦闘力を誇る六機の縁機を前に多くの兵力をすり潰され、その国力も今や大きく消耗しているのだ。

 

 そして、それは駿河とて同じこと。


 人工知能と人体の機械化の技術が非常に発達し、今では自律的に行動する機械すらも生活面・軍事面で実用化され、人間も体の一部を機械化することが医療行為として行われているほどに浸透してきている。


 しかし13年という途方途轍もない時間を激しい闘争に焼べた結果、以前では考え及びもしなかったレベルの貧富の差が色濃く、激しく国内において表出している。


 ビルディングの立ち並ぶ豪華絢爛な街並みもすぐ外を見渡せば、急造のテントと木材の切れ端を寄せ集めてできたような小屋が密集する無法地帯がそこにある。

 子供たちを見れば四肢のどこかが欠損しているという無残な有様だ。多くの女性は娼婦に身を落とし、性病と不衛生な環境での闇医者が蔓延するようになり、そこに付け込んだ現地マフィアが違法、脱法ドラッグを広め、シノギとして懐を温めているというのが現在の駿河八甲国ひいては世界の状況である。

 

 だが、それもこれも何もかもがもうすぐ終わりを迎える――。迎えてしまう。

 

 今や戦争も末期に来ている。麓孫はそう思った。

 ふと隣の男に目を向ける。橋の入口の前でその男、六縁機が一人『伍煙草の古肚ふるはら』と麓孫は何をするでもなく突っ立っていた。


 戦中に重要拠点とされていたスナジリア島。駿河八甲南部のステイン諸島の一つであり、エリアライン521地区に所属する有人島である。面積は64.54㎢と521地区に所属する島の中では最大の規模を誇る。一本の大きな橋で島と本土は繋がっており、その入り口に彼らはいる。


《問:解答推奨*伍番機▼弐番機//煙草ト鷹ノ共通点ハ何ダト思ウ?》

 

 これだ……。古肚はいつも自分の口で喋ることはない。一切喋ることはないという訳でもないがほとんどがこの縁機同士ではまま使われる暗号通信によるコミュニケーションなのだ。

 正直いってこの通信はとても煩わしいものなのだ。

 敵に盗聴されても内容が看破されぬようスクランブル処理が施されており、その解析に少々の時間を要する。

 だが問題なのはそこではない。

 これは生体改造を施されていない人間にはまず理解できない事だが、臭うのだ。通信に関する電気的話題において、なぜ臭うという表現を用いたのかというと、実は深い訳がある。

 サイボーグ化を受けた際に手術による活動中の脳へのアプローチにより、共感覚という知覚現象が発現しているのだ。ある刺激に対して通常の感覚だけでなく異なる種類の感覚をも生じさせるこの現象は自分にとって『ニオイ』(なんか甘ったるい感じの)という形で現れたのだ。


 人によっては違う感覚が呼び起されるらしく、『肆扇しおうぎ』は視覚に、『陸座頭ろくざとう』は味覚に現れると諸先輩方から聞いたことがある。


《解答:感アリ*弐番機▼伍番機//ドチラモ空ヲ昇ルモノダ》

 

 仕方ないから返信する。これを聞かれるのも何度目だ……。

 この質問を受けたのは自分がまだ士官学校を卒業したばかりの時、『弐鷹』の上脳指揮官を

選出する際に行われた個人面談において、席に座るなり面前で座していた古肚より不躾に投げつけられた質問がこれだった。今考えても不思議な時間だった。


(……もしこの戦争が終われば、俺は一体…… )

 

 麓孫はふと思った。数日前、司令部本部からある命令が下った。内容は以下の通りだ。


一、勅命により本部隊別班(六縁機のことを指す)及びそれに連なる集団は全ての作戦行動

  を解除された。

二、本部隊別班は八甲作戦命令の一部撤回により全任の部分的解除がされた。

三、本部隊別班所属の各部隊および関係者は直ちに戦闘および工作を停止し、それぞれ最寄りの上級指揮  官の指揮下に入ること。

四、なお本部隊別班所属の“甲第02号”“甲第05号”にはただちにエリアライン521

  区に下り、最後の工廠防衛を厳命する。ただし、その生命財産を保護し、速やかに義務を遂行、撤退  すること。


 全てが終息に向かっている。この命令を聞いた麓孫は唐突な喪失感に襲われた。

 

 麓孫は兵器だ。もしくは抜き身の刃だ。暴力だ。利益を呼び、傷跡を残すただそれだけの存

在なのだ。


 だがその生き方が今まさに否定されようとしている。自分に失格者の烙印が押されたような気がした。麓孫は今にも心が折れてしまいそうだった。どうすれば良い? もし戦いがなくなったら、戦争が終わったら、居場所などない。ここだけだ。『縁機』というこの場所が、戦場という場所だけが自分の存在理由を満たし、進むべき方向を指し示し、導いてくれる。

 

 麓孫の中で何か暗く、重いモノが沈殿していく。

 

 ただそこで気づく。自分は一体何のために生きている? 戦うためだ。ならなぜ戦う? 理由など必要なのか…… 

 

 “そこに闘争があるから”ではダメなのか?

 そしてようやく理解した。



            自分は長い時間の中で戦う意味すらも失っていたのだ。




最後まで読んでいただきありがとうございました。

また来て、束の間の暇つぶしにでも。。。|壁|c .)っ'`ィ

ではでは~~~~~~~~~。


空を見ながら、煙草吸いたい。 でも俺がするとプー太郎にしか見えないだろう。。(*T_T)人(T^T)人(T_T*)

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