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茫漠のジッキン=ゲン  作者: 大柄 仁
発展
29/50

26

ようこそ。本日二度目の更新です。

お越しくださり嬉しいです。このまま作品も楽しんでもらえたらうれしいです。

ではでは、あとがきでまた。


今日、「天龍院」という名字を生で見てしまった。本当にいるんだ……



 初目と、ムスコ部屋にいる探索班の男たち、そしてそれらを束ねる林寺にはある作戦があるらしかった。


「海底ケーブル敷設船?」

 麓孫が話を披露し終えた林寺に向かって疑問符を投げかけた。


「そうだ。スナジリア島の最西端に位置するここにそれがある」

 林寺は作戦室の真ん中に置かれたテーブルに広げられているスナジリア島の地図、その西に出っ張っている「ロキナ山」の部分を指さしてそう言った。

 

 ロキナ山はこの島の西側のイボのように飛び出た島の部分に存在する標高200mほどの小さな山だ。


「麓孫、お前もシルクじいさんや初目から聞いてるかもしれないが、ここに住むチナ人はスナジリア島を第二の故郷と思っている。当然俺もだ。お前も薄々気づいている事だと思うが、正直こっそりと出ようと思えば、「古肚」なんぞは関係ない。最悪、本土まで泳いで行けば良いとさえ思ってる。だが俺たちがそうしないのは、下手に動かせない病人や怪我人がいるからだ」


 その辺りの話は波多野から聞いた。彼らを安全に動かそうと思えば、結局のところ医療用の輸送船やヘリなどが必要になる。しかしそれは古肚によって阻止されてしまうのだ。よって、海底ケーブルを修復し、通信を回復させ、軍を要請するほかない。おそらくはそのための“海底ケーブル敷設船”なのだろう。


「だが、ここの住人はもっと違う理由を抱いてる」

「?」


「言ったろ。チナ人にとってここは『第二の故郷』なんだ。彼らは先の戦争で痛い目にあってる。そんな経緯を持った人間がやっとこさ手に入れた『安息の地』を易々と手放すと思うか?」

麓孫は周りの人間を見渡す。林寺とは違った、少々彫りの深い顔が居並んでいる。彼らは皆一様に強く覚悟の火が灯った目をしている。


「いや、テコでも動かんだろうな」

 麓孫は少し微笑んだ。男たちはどっと笑った“当たり前だ”“ここは俺たちの故郷だ、もう誰にも奪わせやしないさ”そんな屈強な声が飛び交う。


「わかったろ? こいつら…… いや俺たちが望むのは『全て』だ。病人や怪我人は誰一人見捨てず、この島も『古肚』や機械兵共から取り返す! ただそれのみ!」


おおおおおおぉッッ!! という声が男たちから上がる。意思は全員一致しているそうだ。


「だが、この敷設船にたどり着くまでに問題が存在する……」

「問題?」


「このロキナ山には機械兵たちを統率している『クレヴァー=シード』っていう機械兵がいやがるんだ。こいつを守るために多くの機械兵も配置されてる。俺たちだけじゃ突破も、脱出もできない。『俺たち』だけじゃな……」

「……なるほど」麓孫は得心がいった。


「ああ、お察しのとおりだ。お前にはこの機械兵たちを蹴散らしてほしい。つまり、麓孫……お前にはこの作戦の一員に加わって欲しいんだ」林寺を主題を言い放った。


「麓孫…… 私たちだけじゃ『ルアーク』を完全な状態には復旧できない。ケーブルを回復させるにはどうしてもこの船が必要なの! 拠点設備の寿命も残り少ない。私たちが生き残るには、あなたが、麓孫が必要なの!」初目が熱のこもった声で強く語りかけてくる。


「……」麓孫の沈黙が続く。


 そして、幾十秒か経った後に――。


「わかった。手伝おう」

「本当か!?」林寺が喜びの表情を浮かべる。


「ああ、俺にできる事ならな」

「ははッ! お前にできない事なんてあるのかよ!」

 林寺はわしゃわしゃと麓孫の頭を撫でた。


 その後も細かい話合いを続け、最後にこの作戦に参加する全ての者と固い握手を結び、麓孫は初目と共に「ムスコ部屋」を後にした。



 もうすっかり時刻は夜を指している。耳を澄ますと寝息やいびき声が聞こえてくる廊下を二人だけで歩いている。


「麓孫…… ありがとう」初目が話しかけてきた。


「……いや、別に構わないさ」

 思わず麓孫は戸惑ってしまった。こんなにまっすぐに感謝を述べられたのはいつぶりだろう。どう返せば良いかもわからず、麓孫は当り障りのない言葉で応答するのが精一杯だった。


「皆本当に喜んでた。本当のこと言うと、最近みんな落ち込んでいく一方だったんだ。修理も進まないし、探索に意味も見いだせなくなって。でも、あの日、麓孫が私たちの前に現れてくれた。出会いこそ、変な感じになっちゃったけど…… 今では、麓孫に出会えてよかったと思ってる…… だからそういう意味でも、ありがとう」


「いや、別に…… 気にするな。お前を護るためなのだから、当たり前だ……」


 すると、初目は麓孫よりも一歩前に出て、後ろに手を組みながら少し前かがみになった。黒のジャケットの下にある黄色のノースリーブが視界の端を移動して目の前に来る。黒のミニスカートが揺れ、革製のショートブーツがコトコトと音を立てた。




「麓孫は…… 私のために戦ってくれるの?」




 時間が止まった。そして、ゆっくりと動き出した。


「ああ…… そう、だな。……初目を見習って、みたんだ…… 変だろうか?」

「ううん…… 変じゃないよ、全然。“人は本来、他の誰かのために戦うものだ”ってシルクおじいちゃんも言ってたし。だから…… 変じゃないよ」


「……そうか。ありがとう」


 麓孫は最近驚かされてばかりだ。“誰かのために”戦うようになり、今度は“誰かに”感謝の言葉を素直に送れるようになった。何か、暖かいものがじわっと広がっていく気がした。


「ねえ…… 麓孫」

「……なんだ」



「ありがとう。おやすみ。また、明日ね」



 初目はそのまま廊下をまっすぐ進み、角を曲がる時に小さく手を振った。

 とっさに麓孫も小さく手を振り返した。するとそれを見た初目はクスクスと笑い、また小さく手を振って姿を消した。

 麓孫は呆然と立ちつくしたままだ。そして――。



「おやすみ。初目…… また、明日……」





最後までありがとうございました。

どうでしたでしょうか???  楽しんでいただけたのなら幸いです。感想などもぜひぜひお待ちしています。(ログイン必要ありません)

夜9時~11時にこれからもアップします。(たまに違う時間にも)その時にもぜひ!

ではでは~


僕の友達に「神覚寺」という名前の人がいます。かっくいい……



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