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茫漠のジッキン=ゲン  作者: 大柄 仁
発展
28/50

25



 翌日。

 麓孫は地下空洞から引き揚げた『鷹』の機体を初目たちの拠点まで運びこんでいた。ジッキン=ゲンによる自己修復も完全とは言えないものであり、どうするべきかほとほと困っていた時に、初目がある事を提案した。


「ドクに頼んでみたら?」

「ドクとは一体どんな人物なのだ? 心遣いは嬉しいが生半可な技量では任せる事はできないのでな」

 麓孫が質問で返した。


「大丈夫、だいぶ変人だけど、腕は確かだと思う。ここに来る前は駿河政府で技術者してたらしいけど、ここに飛ばされたんだって。理由は教えてくれないけど、まあ、会ったらなんとなく理由はわかると思うわ……」


「?」



「んんやああぁぁぁぁ 君が麓孫君かいぃ? モノホンかいい? 六縁機の『鷹』を司る者ぉ。まさか17年の歳月を経て、こんなところで出会えるとはぁ…… まさに運命の悪戯ぁぁ……」

「……うむ」


(こういう人なんだよ…… 我慢してあげて。悪い人じゃないから)初目はそういうが、これはどうも……。

「うむ、しかし、これは」やや行き過ぎている節がある、色んな意味で。


「んんやああぁぁぁぁ それでぇ、縁機の修理ぃをしてほしいぃんだったかなぁ?」

「ああ、そうだ。外装甲はもちろん、内部電圧を可変するための機構にも問題がある。他にも諸々の点で修理の必要があるのだが、できるか? 正直、技術の伴わない者に任せる訳にはいかないのだ。恐縮だが、ドクとやら、あんたにはこの依頼に足るモノを持っているのか?」


「んんんぅ 手厳しいねぇ。まあ、心配はわかるけどさぁ」

 そう言葉を添えたあとに、自分になら可能だと言ってドクは機体修理を引き受けた。


 その後、麓孫は初目に連れられ、林寺らが所属する探索班の集まる「ムスコ部屋」まで向かう事になった。

 ハッチを開けると、ムッとした空気が全身を覆った。いつか来た時もこのような淀んだ、男の臭気が充満していた事を思い出した麓孫は、しかし、周りの人間の反応の違いに驚かされた。


「おッ! 兄ちゃん! 待ってたぜ!」

「俺らが初目嬢を守ってくれたナイト様だ! みんな歓迎しろ!」

「嬢ちゃんを食堂でのいざこざから守ろうとしたんだってな? 男だな、あんた!」

「そんなナリでよくぞ胸張った! 来い来い、こっちで飲もうぜ!」


 麓孫は呆気に取られてしまった。確か、自分がここに来た時は、周りの目は冷ややかかつ、どこか探ろうとする疑いの光に満ちていた訳である。それもこれも最初の邂逅が悪かった訳で、一つの事柄でこうも態度が一変するのかと、麓孫はそう思わずにはいられなかった。


 他人との接し方など命令か受領の2パターンだけだと思っていた麓孫はどうやってこの空気を受け入れたら良いか分からなかった。


「手でも振ってあげな」初目が耳元でそう言ったので麓孫は放心したまま、手を振ってみる。ノリの良い返事があちこちから返ってきた。


「もう初目嬢とは仲直りしたのか? まあ、これから生まれてくる子を親無し子にする訳にはいかねえもんな」

「困ったことがあれば言えよ! 『そういう時』は好きに奥の個室使ってくれて構わねえからな!」


「だ、だ、誰がそんなことするかッ!!! 子供とかも全部勘違いだったんだッ!!! もう掘り返すんじゃねえええッッ!!」初目がそう叫んで、男たちはより一層の盛り上がりを見せた。


《二次接触では受け入れられた様子ですね、ナイト様》

《五月蠅い!》

 頭の中に直接聞こえる、自分を小馬鹿にする『鷹』の声に対し、麓孫はキッとした態度で否定した。


「よう麓孫。来てくれたか」


 林寺がムスコ部屋の最奥に位置する作戦室とも言える空間で出迎えてくれた。この反応にも驚きだ。なにせこの男こそがもっとも麓孫に疑念を抱いていたのだから。


「その、あの時はすまなかったな」

「いや…… 構わないとも。元々は自分に責任があるのだ。それに謝罪なら十分に受けた。溝はもうすでに埋められて久しいのだから気にしないでくれ」

「助かるよ。これからもよろしくな」

 

 林寺はそう微笑みかけ、手を差し出した。


 その手を握る。以前の自分ならここで相手の持つ情報を余すことなく引き出していただろう。いつかの少女と握手を交わした時と同じように。


 しかし、今回は、ただその手を迎え入れた。人の好意というものは、素直に受け入れればこうも、暖かく、温もりのある物だったのか。


「よろしく…… 林寺」


 麓孫も微笑み返してみた。

 こういう表情は不慣れなため、上手くできたのか分からないが、そう悪いモノでもないだろうと彼は思った。




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