遅刻しちゃう
目が覚めると辺り一面白くぼやけた世界だった。体を起こそうしたが、力が全く入らない。僕は何もすることがなく、ただその白くぼやけた世界を見ていた。
しばらくすると、どこからか聞きなれた声が聞こえてきた。その声は徐々に大きくなっていき、その声が耳元で聞こえるようになった時、僕は夢から覚めた。
「いわれひこっ!さっさと起きないと遅刻するよっ!」
母の声だった。朝だと気づいた僕は、ベッドのそばに置いてあった置時計を手に取り覗き込んだ。目がまだ完全に開いてなくて時計の針が見えなかった。僕は何回か目をこすり、もう一度置時計を見た。長針が2のところを指して、短針が8のところを指していた。短針が8ということは8時で、長針が2ということは、10分・・・・。
その瞬間、心臓の鼓動が一気に早くなった。同時に今からやらないといけないことを脳内で組み立てられた。一瞬で僕は半覚醒状態から、完全な覚醒状態になった。
慌ててベッドから飛び起きた。
白いシャツをハンガーから乱雑にとり、ボタンをそこそこに止めてブレザーに袖を通し、ズボンを履いてベルトも止めずに、鞄を持った。
「いってきまーすっ!」
靴下を履いてないが、そんな時間もない、素足に靴を履いて自転車に乗り、家を出た。
途中の信号と踏み切りでシャツのボタンを止めて、ベルトをいつもの位置で止めた。そして靴下は履いてこればよかったと少し後悔した。
ようやく学校が見えてきたとき、始業のチャイムが鳴り始めた。校門の前にくると、いつもの初老で万年短パンの体育教師が待ち構えていた。
「坂本ぉ!お前はまた遅刻かぁ!2年生になったというのに、全く変わってないじゃないか!」
そう、今日は2年生なった最初の授業日だ。クラス発表は前日の始業式で済んでいる。くそぉ、昨日は遅刻しなかったのにぃ・・・。
「すいません!寝坊しました!」
僕はいつも通りに謝った。
「寝坊寝坊って、お前は一体学習能力がないのか!まぁ今月はまだ1回目だ、あと2回遅刻したら反省文を書いてもらうぞ!」
まったく、あくまでも生徒に向かって「学習能力がない」なんて言い方をしていいのか?万年短パンじじいが!とは反抗することもできず。謝りながら頭を下げるだけしかなかった。
「すいません・・・、次からは気を付けます・・・。」
まだ今月は1回目とうことで、あまり怒られずに済んだ。そして、すでに授業が始まってる教室に一人、出遅れて入っていった。