復活の予兆
黒い屋敷を見上げていると、突然肩を叩かれたので、びくりと肩が跳ねた。
恐る恐る振り向くと、優しげな青年が立っていた。
黒髪に、青いメッシュを入れていて、随分と良い意味で目立ちそうな面立ちの青年。
「ロワ、ここは寒い。中に入りましょう、僕には寒さはきつくてね」
「誰だ?」
青年は不思議な物でも見つけたように瞬いてから、小さく笑った。
「一瞬で僕を忘れた? 琥珀ですよ」
琥珀はオレを子供扱いし、そっと肩を叩いて屋敷の中へ一緒に入った。
金切り声のような音で扉が閉まると、琥珀は雪を振り払い、オレにもついている雪をたたき落としてくれた。
「タオルを取ってきます。風邪を引くといけない」
「琥珀、此処はどこだ?」
オレはまだ目の前の青年が誰なのか混乱したまま、教えられた名前を呟く。
「……何を言ってるんですか、ロワ。ここは、ワイルドキャットでしょう」
――わいるど、きゃっと……?
オレが首を傾げると、琥珀は小さく笑って、頭をそっと撫でてくれた。
「ロワ、君の大事な時計は無事ですか? 凄い吹雪だったけれど。僕たちノルンには時計は大事ですよ」
「時計……?」
「いつも自慢している、宝石で出来た時計ですよ」
オレは訳が分からないまま、ポケットを探る。宝石で出来た綺麗な時計を見つけて、開くと世界がセピアになった。
――琥珀は動かない。優しい笑顔が固まっている。
石像のように押しても押しても動かない、何がどうなっているんだ?
「本当に復活できたんだ。復活祭の兎なのかな、貴方はもしかしたら」
振り返ると、少女がいた。
金色の髪の毛に、蒼いリボン。黒いワンピースに白いエプロンドレス。
少女はにっこりと微笑むと、手を差し出した、握手を求めているのか?
「みんなは私をアリスって呼ぶけれど、貴方には本当の名前を教えるわ。それが貴方を復元させるまで覚悟したあの人たちへの敬意として。初めまして、私はスクルド」
「スクルド……?」
「未来を司る女神なの。本当はもっともっと広い世界のね。今はワイルドキャットに泊まっているの。そしたら皆がアリスって呼んできて、私を違う存在にしようとしてきて……もうこの世界から抜け出せなくなったの。アリスって呼んでくる未来は判ったのに、どうしてかは興味なかったから。うっかりしてたわ。私ね、運命を司る女神なの――いいこと、誰にも内緒よ? 誰かに話したら、貴方の一番大事な物を永遠に奪うわ。貴方は私の仲間だったから、特別に教えるのよ」
スクルドは年頃の少女らしい微笑みを浮かべて、悪戯をするような仕草で、人差し指を口元へ当てる。
ウィンクを可愛らしくしたところで、オレは辺りをきょろきょろと見回す。




