食事のもたらす効果
「寂しくない」
「嘘だね」
「寂しくない」
オレは繰り返し口にする、スープスプーンをぎゅっと握り、ディースを睨み付けるような眼差しもできなくて。俯いたまま否定する。
目を瞑って、寂しくない、っと言い聞かせる。
ディースは呆れるだろうか、それでも認めたくなかった。認めたら、寂しさが余計に溢れそうな気がして。
寂しさを口にするのはとても勇気が要る、寂しいって言ったら背骨が折れるような。
言い当てられれば、余計に胸がぎゅうっとして、一気に辛くなるんだ。
やめて、もう言わないで。そんな単語、聞きたくない。
「私はリトルがいても寂しいよ。一人きりの君が寂しくないわけがない。でもね、それでいいんだよ。寂しくてもいいんだ。問題は、どうやって寂しさを伝えるかなんだよ。寂しいと素直に言う人は素直に受け入れられる。そうだね、君もなんだねって。でも君はずっと何も言わないで、察してほしそうにする。……誰かが君に注目して、君を思いやらない限り、有効的じゃない」
ディースの言葉は、どこか厳しい。
「でもね、暖かい食べ物を皆で一緒に食べていれば、寂しさは消えるんだ。察してくれって態度をしなくても、寂しいって言わなくても、済むようになる。一緒に暖かい食べ物を食べる、それだけで共有できるんだ。――食べるっていうのは、命だけじゃない。そういう効果もあるんだよ。君が素直に寂しいと言えて、食べ物を食べるのが好きだと言えるまで、うちにいなさい」
「なぜ――なぜディースはそこまでオレを心配してくれる?」
オレは一番に不思議に思った出来事を口にした。ディースは親身になって、心からオレを心配してくれている。
これから先、ディースのいない未来も考えて口にしている。
ディースのいない未来を考えるべきなのは、頼だと思う。頼はディースの孫なんだから。
それなのに、ディースはオレのほうを心配してくる。
オレはディースの青色の目をじっと見つめた、優しげな暖かみを持った視線が返ってくる。
日向の中にいるような、暖かみ。
「判らなくていいんだよ、知らなくていいんだよ」
そんな言葉は納得できない――。
けれど……ずっと。ずっと暖かい家というものに触れてみたかった。孤独を感じなく鳴るというのなら。
だから、ディースと頼のいる暖かい家にいていいというのなら、許されるのならいたかった。
オレは――望まれたかったんだ。
必要とされる〝誰か〟になりたかったんだ、笑い合える仲間が欲しかったんだ。
ずっとずっと殺していた気持ちを言い当てられて、オレは言葉にならない感動に震えていた。
ディースはただただ、オレを撫でてくれた。
この章はこれでお終いです。まだ続きます。




