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待ちわびていた人

 ディースは受け取ると、礼を告げてから、双子の女の子のほうを指さした。

 この家にもある絵画を抱えている女の子。



「この子はね私の妹なんだよ。とても可愛い子だった、王子様に憧れていてね。私はこの子の面倒を見るのが大変だったんだ。けれど良い想い出だ。名前がとても雄々しくてね、リカオンっていうんだ」


 今度は優しい笑顔の青年を指さす。


「こっちはね、私の親友。私と妹を気にかけてくれていてね。金色に染めた髪の毛だったんだよ。男の子なのにフリルやレースが好きでね、リカオンによく服を作っていたんだ。この子は、若葉」


 ディースは生き生きとしてオレに色々と教えてくれる。なぜこの二人を教えてくれるのか判らないけれど、ディースの話す二人の話はとても興味が湧いた。

 何だか絵本を見るような気持ちでわくわくする。



「この頼に似てる人は、もしかしてディースか?」


 似てるどころじゃない、瓜二つだ。頼が突然タイムスリップしたかのような、違和感のなさ。髪の毛の長さが若干違うだけだ。

 眼差しが若干無感情にも見えるところが頼とは少し違う気がする。頼は強い光を持った目で、暖かい感情が見えるから。

 写真のディースはほんの少しだけ怖い。今の優しい目つきが嘘みたいな面影。

 世の中に善意があるなんて信じない、そんな言葉を言いたげな独りぼっちの人みたいな目つき。

 聞いてる話から推測すると、リカオンや若葉がいて幸せだったと思っているのだろうに、なぜだろう。


「この二人は今は? 今は側にいないのか?」

「――死んだよ。救えなかった、私の過ちの所為で」


 ディースはにっこり微笑んだ、悲しさは一つもないと表情に物語らせ。

 それが逆に悲しさを誘った、死ぬほど後悔している感情を読み取ってしまうんだ。

 急にこの人はどれくらい一人でいたのだろう、と寂しく思った。

 ずっと、奥さんも死んで。息子さんも死んで。頼だけが残っていて。

 友達も妹も過去に失っていて。長い間の独りぼっち、オレとはワケが違う。

 オレは何も失ってない独りぼっちだけど、ディースは手に入れてから全てに近い数を失った独りぼっち。それでも尚生き続けるこの人はなんて強いのだろう。

 ――でも、何となく言葉にはどこか引っかかりがあった。本当の言葉でもあり、偽りの言葉でもあるような。


「ディースは長い時間独りだったんだな」



「――もう独りじゃないよ、リトルがいるし、君も遊びに来るといい。君なら大歓迎だよ……本当に……本当に待っていたんだ……」


 ディースはオレが手を握ると、わなわなと震え、静かに落涙した――オレは驚いてしまって手を引っ込めようとした。でもディースは強く手を引いて抱き寄せて、小さく呟いた。



「〝千歳ちとせ〟……ちーちゃん。この時を待っていた……君に、君に会いたかった」


 ディースは心から嬉しそうに笑いながらも微震していた。

 オレはそんな嬉しそうにされる理由に心当たりがないので、一つだけ否定する。



「……オレは千歳じゃない、千鶴だ」


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