暖かい家への誘い
オレが頼をじっと見つめていると、頼は早く食べ終えるよう急かした。
食べ終えて、少し話をしてから火の始末をする。
「俺の家にこいよ、時計台じゃ寒いだろ。祖父さんに会わせてやるよ」
頼の言葉にオレは瞬いて。泊まりに来いなんて言われるのは初めてで、驚いてしまって肩が跳ねた。
オレは自分の髪色を告げた。
「オレは白だ。皆はオレを嫌う。醜いんだ、世界で一番」
「友達を見目で判断するのか、テメェ。ひっさしぶりに聞いた……その言葉、俺世界で一番嫌いだわ」
友達? 頼はオレを友達と見てくれるのか?
それはなんだか夢のようなお伽噺で、オレは目の奥がじんわりと熱くなった。
「第一、アンタ、白いだけで醜くはねェよ。綺麗な顔してンぜ? 童顔だけど彫刻みたいな、男前。そんなツラして、醜いなんて言ってみろ。世の中の不細工がキレちまうぜ。髪の色がどうした、俺だって赤茶だぜ、島の奴ら黒髪だけど。この島じゃ異国の血が少しでも入ってると余所余所しくなっちまうみてェだな。気に食わねェ。テメェもたかがそんな色でがたがた言うな」
頼はあっけらかんとして告げた、その物言いがあまりにもさっぱりしていたので俺は疑問を抱かず、納得してしまった。
頼は確かに石は投げられてないし、島の人と話すけれど、島の人の仲間というかんじはしない。
異国の血が入ってるからと頼は納得しているのだろう、島の人々の態度に。
オレも――オレも、そんな風に強くなれたらいいなと思う。
オレはすぐくよくよしてしまうから、自信を手に入れたい。胸を張って、どうだ文句を言われても構わない、といった態度を取れるようになってみたい。
オレはすぐ俯いてしまう。
(でも、頼は皆が怖がる俺の髪色を、たかがそんな色って言ってくれた……)
頼の気遣いが嬉しくて、オレは俯いてはいけないと思って、頼を見つめて「有難う」と笑った。
頼はフンと笑い、オレに頼の家までの道を教えてくれた。
頼の家は山沿いにあって、たしかにこの道を往復するのでは晩飯にありつく時間が難しいなと、先ほど食べた干し肉を思い出した。
あのくんと鼻にくぐもる優しい薫り、それに濃厚な肉の味、程よい塩っ気。
火で炙れば、肉が柔らかくなって、歯ごたえもしっかりとあった。
今思い出しても、あれは極上だった。かといって食べる行為は好きになれないけれど。
あの干し肉を作った頼のお爺さんが気になった。頼のお爺さんから命をどう考えているか聞いてみたかった。
生きた肉を剥いでいるっていうのは、きっと命の尊さをじんと染みてる筈だから。
暗い山道を歩くのは、オレは厳しくて弱音を吐きそうになる。頼はオレの様子を見ながらも、どうってことなさそうに淡々と登っていた。
時々、草を摘んで「これいい薬になるんだ」といって、楽々と歩いていた。
手には懐中電灯があって、オレの足下を照らして「気をつけろ」と自分はあまり注意しない。
慣れた山道だと人はこうやって歩けるのだろうか。それとも頼だからだろうか。
思ったより高い山というわけでもないのは、頼の家についてから知った。




