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食べるという行い

 頼は笑った、「どっちでもない奴を箱って呼ぶんだ」と焚き火の火を調整しながら。


 オレは島に派閥があった事実に驚いていた、だって皆仲良く生きているように見えたから。たった一つのリンゴでも、皆が少しでも満足できるように切り分けるような分け合いが見えた気がしたから。



「島の爺さんどもはうるせぇよ、どっちの派閥でもさ。俺の一族は島に旅で辿り着いただけだから、箱で構わねェ。そのほうが誰も引き留めないだろうしな」


 頼は心底めんどくさそうな表情をして、焚き火の火をそこらへんにあった大きな枝で弄る。


「旅? この島生まれじゃないのか?」

「この島に着いたのは祖父さんの世代の時かな。俺と親父はこの島育ち。うちの一族はあるものを探してるんだ。祖父さんは占い師にこっちの方角に何かあるからって言われてきたらしい。俺の名前もさ、本当は祖父さんのもんなんだけど、捜し物をするときにゃこっちの名前のが便利なんだってよ。捜し物から見れば、判りやすいかもしれねぇって」


 オレは押しつけられた干し肉を小さく口を開いて、食べようとしたが、熱くてまだ食べられなかった。

 ふうふうと息をふきかけてもまだ熱い。


 頼の家系も、何だか「食事」という行為のように、命を継いでいるもののようだった。

 祖父の願いを叶えるために、次世代へ、それから次へとどんどん継いでいく。

 思いの強さが覗える、とても素敵だと思った。


 オレが持てるような重さの想いではないし、頼の口調から押しつけがましさも感じなかった。寧ろ、好んで祖父の願いを叶えたいと、頼の家族の優しさが見えてオレは微笑ましかった。


 頼の髪の色は、この島へ来る前の陸で馴染んだ色だったのだろうか。紅い髪色を気にしていない様子だった。

 それによくよく見れば、焚き火に照らされた頼の目は青い目をしていた。


 頼もこの島では異端なんだろうって気づいた、だからオレが声をかけるのだと思ったんだろう。だって、オレも島では異端だから。


 オレはまた口をあけて、干し肉を食べようとしてみた、熱い肉塊が口の中に入る。噛めば噛むほど、味が染みこんでいて、肉汁が零れそうになる。唇が脂でてかてかになってる気がした。

 干した肉でこれだけ美味しいのならば、干してない肉はどれほど調理が上手なんだろう。

 火で炙ったことにより歯ごたえがあって、咀嚼すればするほど旨味が溢れてくる。たっぷりまぶされた黒胡椒がつんとして、鼻から薫りが抜ける。仄かに香るのはにんにくの味だろうか。

 こういうものに使う塩は安い塩では駄目だと聞いた覚えがある。



「美味しい」


 話の続きを聞こうと思ったのに、ついつい食べ物の感想を呟いてしまった。

 頼はオレの頭を撫でて、満足そうに幼さの残る笑みを浮かべた。


「そりゃそうだ、俺が捕って祖父さんが作った干し肉だからな! これは確か、豚だったかな」

「食べる行為ってオレは尊すぎて苦手だったんだ、でもこんな風に食べるのは……なんだか不思議だ。好ましい、とても」



 ごくりと干し肉を咀嚼し終えたあと飲み込んで、呟く。

 頼は頬をかいて、苦笑した。青い瞳が少しだけ濁ったような色合いだった。


「お前は島の奴らと違うんだな、それが悲しい」


 頼の言葉が理解できなかった、だって島の人々だって命を尊く扱いながらも、漁や狩りをしているから。

 頼だって知らないワケじゃあるまいし、なぜそんな言葉を口にするのか判らなかった。

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