どっちつかずの頼
炙った干し肉を齧り付こうとしながら頼は、何気ないような口調で切り込んできた。
オレの存在、知っていたんだな、そういえば頼は……一ヶ月前から気づいていたなら。
頼は特に気にした様子もなく、熱かったのか干し肉にふーふーと息を吹き付けている。
通常の人ならば腹が減るだろう、良い薫製肉独特の香りがする。ローズマリーで作った干し肉なのかな。
「前にさ、お前を尾行したことあんだけどよ、時計台にいつもいるのな」
「……そこまで知っているのか。うん、いつも時計台の下で眠るよ」
「寒くねーか? 今の季節だと、風が強いだろ。夏ならともかく」
「……寒くても平気だから」
ただそこに漂う寂しさとかは、気づかないふりをしている。
暖かい場所はそれだけ寂しさが増えるのだと、オレは知っている。暖かい家を想像できないけれど、きっとそこはオレにとっては苦痛の場所なのだろうと思う。
一人であるのを自覚して悲しくなりそうな場所。俺だけが一人で過ごして、誰も俺を求めてないのだと。
頼は干し肉を食べながら、水筒の水を飲み、生を謳歌する。
「平気そうに見えないけどな。平気だったら、そんなツラしねェよ。そんなシケたツラ」
頼はオレのおでこにでこぴんをしてから、食べ終わった干し肉の枝を折って、焚き火にくべた。
もう一つ炙ってある干し肉を取って、頼はオレに押しつけた。
オレは遠慮しようとしたのだが、頼の不満そうな表情を見ると拒否できなかった。
命を継ぐ儀式は、オレにはあまり相応しくないような気がして、食べ物を食べるのは好きじゃない……。
もっと他に継ぐべき人がいるような気がして。
頼は、食えよって無言で促した。
「お前さ、すっげー物欲しそうなツラしてんだよ、不満そうなツラ。幸せじゃないってツラ。梨花みてぇな顔すんの。あ、梨花ってのは俺の……んー、幼なじみ」
「オレが?」
「だから俺に声をかけようとしたんじゃねーの? って俺は思ったワケ。この島だと俺はどっちつかずの位置だから」
頼の位置? よく分からなくて話を願う。頼は、静かに淡々と説明してくれた。
この島の人達には派閥があって、問派と答派があるのだと。どうしてそのような名前なのかは判らない。ただ、この島には習わしがあってその習わしに従うならば、問と答で別れるんだそうな。
愛し合った恋人達でさえも、問と答の派閥が違ったなら、駆け落ちか別れを選ぶ程の位置。




