とある島
島の名前は、汐淡島。
明るい場所だととても綺麗な色の海を持つ島で、魚と珊瑚礁の共同がうまくいってる数少ない島。
魚は、イカがたくさん捕れて、地魚が特産品らしい。それから塩も。
甘みも少しだけ含んだ、さらさらした綺麗な塩がとれるらしい。
漁師達は毎朝、いや、夜中から命を賭けて島の人々の為に、海で狩りをしていた。
男どもは大体が海へ働き、女子供は畑を作ろうとしていた。
食べ物に困る印象のない島だった。大工も他の島から呼べば来て、家をすぐに造ってくれるような島。
島の人は大きな病気にあまりかからない印象だった。大きな病気があるときは、皆が諦めてるから、残りの寿命を幸福なものにしようとしていた。
オレが今歩いてる場所を南に行くと、山があって、山の中に網元が暮らしていた。
網元は領主のような者で、皆が狩る量を決めて海との共存に励んでいる人だ。
網元の話は、島の人々とは関わってないオレは聞けなかった。
ただ、よく網元の名前を出して「あの家はすごい」という話をよく島の人々がしていたのを、盗み聞きしていた。
砂嵐が時々遠くで起こっては立ち消え、少し荒れた道を歩く。
オレは散歩が好きだった、暗い道での散歩が。狐や狸が時々顔を覗かせては、目をちかっと光らせて、どこかへ行ってしまう。花の色もあまり暗すぎると分からないけれど、匂いは判るから。
何より、日が沈む際の、薄く明かりが消えていくあの瞬間を歩きながら見るのは好きだった。
鮮麗な赤と、幽玄な青が混ざる、あの一瞬は何とも言えない気持ちにさせてくれる。
気分がいいから歌いたかったが、何もオレは歌を知らないから、適当に音をつけて適当な言葉を羅列した。
適当すぎる歌は、思いの外歌いやすくて、楽しい。
港まで暢気に歩くと、誰もいなくて、オレはほっとした。漁師と顔を合わせる可能性もあったが、この時間帯は大体家族水入らずってこの島の決まりみたいだった。
家族がいないのが引け目ではないけれど、家族がいないとこの島の一員にはなれない雰囲気だった。
でもオレは知っているんだ、ただ一人、この島で群れない男がいるって。
男は漁師ではなく、狩人で、猪や鹿を捕っては島の人と物々交換して暮らしていた。




