「だろうな」という言葉
ロワが呼ぶディースという名前、その名は、神話の名残。
「ノルン」の始まりだ。
「ノルンの神話」になるように、呪いを掛ける為にも名乗ったんだ。
呪いのようなこの屋敷に、少しでも抵抗できるように――ディースになった、オレは。
ロワをも、守ろうと――お得意のかっこつけだ。
ディースは人間一人に一体つく、対象物と同じ形の守護霊のようなものなんだ。
祝福してくれて、人間の一生の勝負を定める存在――。
ディースを名乗れば、誰かの守護霊になれる気がした。守護霊って何だか人を救えるみたいじゃん、人生を左右できるほど強い力だって。
人助けがしたかった。それは誰かの野望も関係なく、ただの親切として。
オレは魔法使いになりたかったんだ、王子様なんて大役じゃなくて。
人の為に祈り、人の為に幸せを願う、鮮やかな魔法使いになってみたかったんだ。
人を救うという行いをしてみたかった。人を救えたら、自分が救える気がして。
そんなのは偽物の正義感。本当に優しい奴なら、自分を救う為に魔法なんて使わない。
オレは、勘づいた。ロワは、このままだと消えてしまう。
オレを救うことで起きるタイムパラドックスによって、消えるかもしれない。
だってディースなんて存在しなかったことになるし、そしたらリカオンもロワと関わらなかったことになる。
ロワの行方はどうなる?
(ディースじゃなくなっていいのか?)
(ロワは救えないのか?)
(それじゃあ本当に、オレは醜い鳥のままだ――)
(だけど――助かるんだ)
弱音を言うなら、オレの人間的な部分が疼いてしまって、期待したんだ。
本当に、かっこいい主役ならば、決して信念を折らずに「お前を見殺しにするもんか!」とか怒鳴りつける場面なんだろうな。
「だろうな」って語尾につくオレは、もう他人事になっているのだと気づいた。
どんなに言い繕っても、どんなに否定しても、ロワの犠牲をやむを得ないものだと考えている――のだと。




