頼とロワの邂逅
もう、次へ移動しよう――また人が傷つけ合う姿を目にしよう。
死んだ心を持ってして、笑顔を浮かべる。
こんなことならリカオン達ともっと笑い合えばよかった、なんて思った時期もある。
そんな行為したって、なかった物になるんだから、意味ない。
決して何も望まずに、決して感情を乱すことなく。
僅かな変化にも喜ばず、何もかも心を殺せ――。
泣き叫ぶだけ、苦しくなるだけだ。泣けば、負けなんだ。
側には古時計――これに手を伸ばせば、また事件を繰り返す。あまりの拒絶感に吐き気がする。拒絶感は沸いてくるけれど、これがなければ始まらない。
これが無ければ、オレ自身すら守れない――。
生唾を飲んで喉が上下する――手を伸ばすと、胃がきりきり痛む、痛みに耐えて震えながら手に力を込める。
古時計に手を伸ばしきる前に。
白銀の少年が砂金を引き連れて現れる。俺の手をわしっと掴んだから、古時計には触れられなかった。
「やっと。やっと止められた」
「――……ロワ?」
聞き覚えのある特徴、リカオンがロワを説明する際によく言っていた「白銀の少年」という風貌。
白銀の少年は泣きそうな表情で、砂金を引き連れてオレの手を鷲掴み、動かそうとしない。
絶対に動かすものか、と言いたげな力強さだった。
初めて会うけれど……どうしてお前が俺の前に現れる、ロワ?
「そうだ、ディース、オレだよ。時間を、時間をやっと未来で倒せたよ。何度も、何度も頑張った……やっと……やっとお前の悲しみを止められた。もう、良いんだ。もう、時間と闘わなくていいんだ、ディース。もう、記憶を繰り越さないで良い」
「でもお前は……」
「物語はこれで終わる。もう、振り返らなくて良い」
それ以上何も言うな、って目をしていた。
もう何も考えるな、と。オレが想像しうる展開になるのだとしたら……ロワは……。
……オレは――疲れていた。
永遠の、時間を、もう見たくない――。
自分の心を見つめなければ、心に痛みなど絶対に通らない。
ロワがどれだけ頑張ったか、オレはきっと心から判っていなかった。
だって、判ったとしてもオレは本当は優しくないから、ロワの苦労を分かち合いたいと思えないんだ。
自分を抱えるだけで、精一杯。
本当に、オレは偽善者なんだって痛感しすぎて、嗚呼自分の為だけに胸が痛む。
矛盾する、皆が思い描くヒーロー像と。王子様って、本当は野蛮なんだ。
力ずくでお姫様を犯して嫁にして、金品を奪うろくでなしなんだ、きっと。
それなのに、王子様って称号だけは立派なんだ。そんなの盗賊と変わりないのに、なぁ?
――何も見なければ良い。透明の手で目を塞いで。何も何も、これで見えない。
ほら、にこりと笑おう、そうすればより安心するだろ?
にっこり――惨めな笑顔。それでもオレは笑うべきなんだ、だから、にこり。
遠くでぱらりぱらりとページが揺れている、もうすぐ一陣の風が吹けば、ページは捲れるだろう。
一番に、見たくないのは、同じページに戻る光景。再び事件を体験する行為が脳裏に過ぎる。
風が本を捲る風景をもう二度と見ないようにしようとした。
まだまだ終わりませんよ。ロワ視点になってからがまた長いです(笑)




