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魔法使いになりたかった王子様

 物語を進めなければならない。

 早く完結させて、いつか全員と分かり合える日を作らなければ。

 その為には時間を掌握する必要がある。

 この屋敷の未来を決めている奴を捕まえないといけない。

 オレには見えない「あいつら」の勝負に割り込んで、未来を決める少女の存在を「知らなければ」止められない。

 あの少女が誰なのか――。

 永遠が始まるその前に――ふっと横を見つめる。

 真っ暗闇の中でも、存在感のある古時計。古めかしい茶色の外面に、渋い金色の振り子。

 これの未来もまだ決まってない。今、たった今オレが選ぶんだろう。

 これに触れれば、ヨダカの運命を捨て、大きな古時計のお爺さんになる未来を手に取る。

 これを手に取れば、次の時空へ移動する。


 嗚呼、今がきっとディースになる瞬間なんだ。



 そうだ、この屋敷は「注文の多い料理店」なのだ。

 主役であっても、酷い目に遭う仕様になっている、主役という役柄がついてない端役なんて死ぬに決まっている。皆は、その運命に選ばれた。

 ――どうして、そんな大事な土台を自分は忘れていたのだろうかと、ヨダカであるオレはその場で頭を抱える。

 どす黒い血溜まりの床に、ずぶずぶと膝が沈んでいっても、気に掛けない。


 ヨダカに、料理店に、シンデレラ。幸せの青い鳥、人魚姫に、アリス、北欧神話。

 最後に、大きな古時計。

 物語の種類がばらばらだ――なぜ、いつから、全て統一されてくるようになった?

 ノルニルの話さえ出なければ、もっと違った結果だっただろうに。

 運命を賭けて存在さえ問いただすのが可能な「神話」を背負ってしまったからこその、現在なんだろう。

 いいや、過去なんだろう――幾ら願っても、何も知らないあの頃に戻るなんてできない。

 あの陽だまりに触れられない。

 ならばこれは、過去の「物語」なんだ。

 本で言うなれば、序章にすら載らない、土台の設定に組み込まれてしまっているもの。


(だから、誰も「神話」になってるなんて気づかない――「神話」だから、何でもありになっているんだって。我ながら上手い仕組みを思いついたもんだ、言葉や名前は偉大だ)


 魔法使いの真似事さ。


 コトダマのように、呪いをかけた。


 どう足掻いても魔法使いになれない、一般人の呪いさ。


 そうすれば、名前のない端役から、脇役になって生き残れるだろう?

 脇役なんだから、屋敷から消えたら困る存在になるだろう?


 徐々に皆に物語がついてきた、そうだ、それでいい。どんどん名前をつけていけばいい、物語を背負っていけば良い。

 ――だけどな、少しな、オレが必要にならなくなっていく時間が寂しくなる。

 勝手に願って、勝手に名付けて、勝手に寂しがって、なんつーか本当身勝手すぎ。

 オレ、メンタル弱すぎるだろ。


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