表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バッドエンドループが往復ビンタで襲ってくるけど、最後に笑って祝盃をあげてやる  作者: かぎのえみずる
第三章 メインディッシュはお肉にしますか、魚にしますか
45/138

一度さよなら

「だけど厄介だな、扉を開けられない……四人いないから」


 私は頼から離れて、数々の扉を見つめて唸る。

 シンがいても三人だったのに、シンが抜けたら余計に開けられない。

 溜息をつきかけた時、頼が頭をぽんぽんと撫でるように軽く叩いてくれた。


「大丈夫だ、気にするな。きっと開けられる」

「どうして? 四人揃わないと開けられないんだろう?」

「――魔法使いの狙いは王子様だ。王子様をお姫様のために手に入れるために、どんな手段でも使ってくるだろうさ――それに手に入れなければならないものもある」


 ……強者のままでいるためには、純水が必要。

 純水が何を意味しているのか、頼には判っているのだろうか。若葉にも判っているのだろうか。

 純水――綺麗すぎる水。ただの水を手に入れればいいのだろうか、それとも頼のように「犬」という存在になりうる者を探せということだろうか。

 頼についていく、階段近くの扉。ランプが隣に設置されていて、じりじりと私達を暖まるような照らし方をする。

 傍には調度品が扉と扉の間に一つは並んでいる。

 頼の目は、最初に出会ったときのような冬の瞳で、扉を指し示す。


「――リカオン、お前の大事なもんは何だ?」

「ん? そりゃ、みんなさ! 頼も若葉も、何者にも代え難い大事な人達だ!」

「……そうか、じゃあオレは覚悟しねェとな」


 頼は名残惜しそうに扉を開いた、扉を開けば中には水晶玉が置かれている。

 私達の屋敷にくるよりも前の、幼い頃の頼と私の映っている水晶玉。フィルムのようにからからと音が鳴っていて、水晶玉はひたすらに私達を映していた。

 部屋に文字が描かれる。


『大事な物を失ったら、人はどうなる?』


 私は頼のほうへ振り向いた、表情に不安な物が全て出ていたのか、頼は微苦笑した。

 表情が大丈夫だ、って言ってる。けれど大事な物を失うって――とても怖いじゃないか。


「この部屋は〝主人公〟の為の部屋だ」


 頼が教えてくれる声色が、酷く優しくて私は悲しみに身震いする。

 頼は主人公じゃないって自覚している、屋敷から出るつもりはないって言ってる。

 考えてみるって言ったのに、優しい不器用な嘘つき。


「〝主人公〟をまさか殺すわけもねぇだろう。大丈夫、失ってこい」

「……頼、怖いよ」

「……このままこの屋敷にいるのと、どっちが怖い?」


 頼は幼い子に言うことを聞かせるようによしよしと撫でてくれた。

 この優しい手を失えというのか、思い出した数年分の懐かしさ愛しさも全て全て!

 ――皆を、救う存在なんだ。主人公っていうのはきっと皆を救うから主人公なんだ。

 どんな苦難も乗り越えて、皆にハッピーエンドを届ける存在なんだ。

 それならいっそ――脇役のほうが楽なんだろうなって思えば、負けなのだろう。

 負けたくない。私は、私に勝ちたい。


「失うにはどうすればいい?」


 私は部屋へと問いかけた、水晶玉を両手で抱えて。

 部屋の文字がぐねぐねと泳ぐように揺れて、「割って」と書かれる文字に変わった。


 人を試す部屋か、試される出来事で何か変われば、それまでの女。

 これは私を試している、私が本当に王子様になれるかどうかを。頼や若葉やシンを救えるかどうか。

 救えるのなら、私は――幾らでも試されて狂ってやる。




 ガシャン――割った瞬間に、閃光が……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ